覆水不変を身に刻め
さて、この番組の注意点をいくつか。
一つ、皆様の声は番組に登場する少女に届きません
二つ、コンプライアンスの有無は一切考慮しません
三つ、視聴は自己責任です
四つ、一度見てしまえば後戻りはできません
五つ、皆様をお貸しいただくことがあります
六つ、これはリアルゲームです
以上を承諾された方のみ、先をご覧ください
この番組は、ご覧のメンバーの提供でお送りします。
突如として画面に現れたそれは、ネットの情報を見る限りだといきなり全国放送されているらしい
一般的な茶の間ではない時間帯、夜中の二時頃だっただろうか。
突然映し出されたテロップを読み上げる機械的な音声、最後には
日常を保ちたい方は番組をお切りください
なんて意味深なことを残し、数分経過すればまた画面が表示されると付け加えられた
どうやら、この画面へと切り替わった時にテレビを視聴していなかった方でも、最初のテロップが映し出されているんだとか
前例もないこの状況に、SNSは期待と困惑で溢れていた
意味深な言葉を聞き、すぐさまテレビを切った人が多く見受けられたが、好奇心に満ち溢れ日常に飽きた人達は期待を胸に秘めて引き続き真っ暗な画面を眺めているそうだ
ーー無論、私もその1人である。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ーー
紫音 甘苺 紅遥 小泉 三葉 糖文
しおん あまいちご べにはるか ちいず みつば とうぶん
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ーー
「……あれ、さっきまで家のソファーに」
目が覚める、と言った表現は少し間違っているかもしれない。気付けば見知らぬ神社の中で、真横には小さな懐中電灯が置かれていた
「テレビの注意事項に皆様のお力をお貸しいただくって書いてあったから…それかな」
これから何が起きるのかもわからないまま断片的な部分だけ思い出し、と言っても 番組のテロップには六つの注意点しか並べられていなかったわけであって、流石に全ての注意事項は頭に入れていた
でも、なにをすればいいのか分からない。そもそもいきなりこんな見知らぬ場所に連れてくるなんて、常人にはできないはず
よくファンタジーものの映画をたまに見る私はふと思ってしまった
「デスゲームとかなのかな。」
ふむふむ、と勝手に状況を理解した気持ちになり、これからどうしようか…なんて呑気に考えていたが、そんなことを考える時間すらこの番組は与えてくれないらしい。
なんせ、見知らぬ背丈の低い少女がこちらに向かって走ってきたからだ
早速誰かが襲われたのか、とか流暢に考察する時間なんてプレイヤーにはきっとないはず。なので彼女が向かう方向に走ろうと意を決して足を動かす
「やめ、やめて!逃げないで!私は味方!」
震えながら叫ぶ声が耳に入り、気になったので後ろを見てみる。
見ればそこには彼女しかおらず、どうやら襲われたわけではないようだった。しかしなぜこちらに向かって走ってきたのか、それだけが疑問だった
「あ、あの…さっきはすみません、人がいる!って思って咄嗟に走っちゃいました…」
「別に大丈夫、君もさっきの番組…見てたの?」
幼なげのある彼女は、女の子にしては背が高い部類に入る私を見上げつつペラペラと説明する
「はい…君もってことはお姉さんも見てたんですよね?あと、なんでそんなに冷静なんですか…なにされるかわからないのに」
その問いに私はうんうん、と頷く。震える彼女の手を握りながら こういうのよく見かけるし なんて手短に話を済ませる。
やはり幼いのか、困惑を隠さず彼女は言葉を続けた
「一緒ですね…って、ええ…?!だってこんな、本当に訳のわからない状況に置かれるって…いくらなんでもファンタジーすぎますし、そんな一言で片付けられるものなんですか…」
確かにファンタジーと言われればそうだろう。しかし冒頭にあった 日常に飽きた人 という項目に当てはまる人達はそのファンタジーに心躍るのだ
例えそれが、自分の身を危険に晒す行為であっても。
聞く話だと、彼女や私のように番組を視聴している人がこのゲーム?に参加しているそう。
ともなれば、あの項目に該当する人の大半は視聴していることになる。さすればそれはまずいかもしれない…と多少の焦りを感じた
なんせ、前科持ちの快楽殺人者や情緒が常人の沙汰ではない方々も参加している可能性がある
彼女と私の共通点は話している限りだと 女性である点、後はスイーツが好きな事。
そんなしょうもないこと以外に共通点は見受けられず、先程のような一般人とは呼べない少女達が参加している可能性が浮上してきた
大前提、参加者が私達以外にいるのかどうかすら怪しいので、とりあえずは動いてみることにしよう
彼女に私の考えを話せば、これ以上の混乱は免れない。
それを踏まえた上で、ここを探索しようと提案してみる。動かないことにはなにも始まらないのは事実だし
彼女はゆっくりと瞼を閉じながら頷く。それを承諾と捉えてから、彼女と共に懐中電灯を持ちながら広い神社内を探索し始めた




