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最強おっさんとポンコツクソザコ暗殺者ちゃん  作者: ガブ


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第二話 「暗殺者ちゃん、町を駆ける」

 薄気味悪い部屋。昔おじいちゃんが住んでいたらしいけど、私はここが嫌いだった。

 ちょっとの失敗ならお尻を叩かれて終わりだけど、今回みたいな大失敗をするといつもここに閉じ込められる。




「アンデリカ、これは何かしら」


 結局皆勤賞を逃して泣きべそをかきながら帰ったら、ママが抹殺リストを手にして玄関で鬼になってた。

 昨日の夜全部回収したつもりだったけど、一枚だけ道に落としてきてしまったらしい。


 紙に書かれていたのはあのおっさんの詳細だった。

 普通ならランクと一言メモで終わりだが、おっさんは違った。紙まるまる一枚びっしりとおっさんがSSSランクであるという証明で埋め尽くされていた。

 

 どうやらおっさんは私たち一族が昔から狙っている相手らしい。ママもおばあちゃんもそのおばあちゃんも、あのおっさんと戦ったそうだ。いったいあのおっさんいくつなんだ。

 

 そして皆おっさんを殺せなかった。



「なんだ、偉そうなこというくせに大したことないじゃん」


 私はゲンコツを食らった。児童相談所に訴えてやろうか。



 ママの話によると、おっさんは昔からおっさんで、ずっとあそこに住んでるらしい。たまに町に降りてきて生活物資を買い込んでこもる。その繰り返しだそうだ。何十年も前から。 



「とにかく、あの男だけはやめておきなさい」


 そう言ってママは私のお尻を叩いた。


「そういえばあんた、自慢の七つ道具はどうしたの?」


 このおばさん、人のお尻を太鼓のように叩きながら痛いところを突いてくる。

 嘘をつくのは簡単だけれど、それを見破るのも簡単だろう。だから正直に話した。正直者は救われるっておじいちゃんが言ってたし。


 そして私は閉じ込められた。

 クソジジイ。




 でも私はおっさんの所に行かなくちゃならない。だって私の大切なもの、全部おっさんに取られたままだもん。


 私は夜になるのを待った。

 この部屋には私が作った秘密の抜け道がある。だてに何度も閉じ込められてない。


 

 気がつくと朝だった。

 ママは抜け道の存在に気がついていたようで、とっくに塞がれていた。



 ママが朝ごはんを持ってくる。私は大げさに反省をしたフリをして部屋から出してもらった。私の演技力も捨てたものではない。


 道具は諦めろと言われた。

 嫌だと言えばまた閉じ込められそうだったので、何も言わなかった。


 今日は学校が休みだ。

 正直皆勤賞が取れなくなったからもう行かなくてもいいんだけど、寝床が毎晩あの部屋になりそうだから行くだけ行く。

 とにかく、時間はたっぷりある。はずだった。



「あんたは今日一日店番」


 鬼はそう言って私を一人家に残した。


 私の家は表向き花屋をやっている。

 自分たちで殺しておいて花を売りつけるんだから悪魔のような商売だ。だから私は花が嫌いだ。


 殺しが嫌いなわけじゃない。

 そもそも殺しを好き嫌いで考えたことがない。それが私にとっての普通だから。

 でもこのまま誰も殺せないまま時が過ぎたらきっと私は殺しが嫌いになる。殺しが嫌いになればますます殺せなくなる。


 そうなればきっと、私はここに居られなくなる。



「それは嫌だ」



 部屋に駆け込み、机をあさる。

 昔誕生日にもらったナイフをしまっていたはず。まだ一度も使ってないから綺麗なはずだ。


(ああもう、ちゃんと片付けておけば良かった)


 ナイフを発見するまでに部屋の中はぐちゃぐちゃになったが、お兄ちゃんは私に甘いから大丈夫だろう。


 りん時休業


 シャッターを閉め、張り紙をする。

 結局「臨」の字は思い出せなかった。



「待ってておっさん。今殺しに行くから」


 

 ナイフを片手に町を駆ける。

 職務質問は必然だった。




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