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神剣のプロトコル ~底辺まで落ちた元S級最強剣士の俺が、錬金術師少女に『武器の臨床評価』とかやらされ、結果的に世界を救うまで~  作者: 深井立花 数白
第1章:ヘタレ剣士とアラモード

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第6話:Process1[天地滅殺]Flow6

 さて、ヒューレ錬金術工房とか言う鬼の巣窟に初出勤した俺。

 工房に入ると、棚の整理でもしていたらしく、脚立の上から鬼、じゃないエニアが元気に挨拶してくる。


「リガルさん、おはようございます!」

「ああ、おはよー」


 引きこもりの俺にとっては、朝に誰かと挨拶をするというのもなんか新鮮だ。

 そしてエニアは脚立から降りてきて、最後の一段をぴょん、と飛び降りた。


 弾んだ。

 朝から良いものを見た。


「……はッ! リ、リガルさん、今どこを見てました⁉」


 ばっ! とジャケットの前を閉じて胸を隠すエニア。


「い、いや~、どこも~、何も~」

「ぜ、絶対嘘です……むむむむむ……」


 眼を逸らしてしらばっくれる俺を、エニアは非難がましげな眼でにらむ。

 そりゃそうか。逆の立場なら、いい気はしないだろうしな。気を付けよう。


「いや、スマン。やっぱりどうしても、ね。それだけお前が魅力的だってことでなにとぞ……」

「うう……うれしくないです……私は、こんな恥ずかしい体型嫌なのに……」

「そうなのか? 世の女性は結構、羨むんじゃないかと思うが……」

「そんなのは、完全に男の人目線の考えです……」


 エニアは、はあ、とため息をつく。

 やはりスタイルがいい奴にはいい奴なりの悩みがあるものなのだろうか。


「まあ初犯ですし、今回は許します。次はおやつのプリンを没収しますからね」

「お、おう、気を付けるわ」


 危うく初日から俺の兵站は断たれかけた。油断のできない職場だ。


「では気を取り直して、準備ができたら出発しましょう。ついに初評価です!」

「そうだな……行くか」


 というわけで俺達は最初の評価、長剣の耐久力評価のために近くの林へ向かって歩きだした。


 これからやるのは、武器の折れる心配のない『安全な評価』だと自分に言い聞かせながら。


   ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 目的の林へ向かうには、市場を突っ切ってしまうのが早い。

 朝の時間帯は、野菜や焼きたてのパンが並んでおり、何ともにぎやかだ。


 そしてこういう場は、市民同士の情報交換の場でもある。そこを通りかかっている間も、買い物終わりと思われるおばちゃんたちの会話が聞こえてくる。


「『アークハウス』がまたデモだって。魔物のことを、保護すべき動物だとか言って。信じられないわ……奴ら、霊性F級なんじゃないの?」

「絶対そうよ。この間だって魔物を討伐してくれた冒険者の人たちに襲い掛かったって」

「この街には【神剣《じんけん》】がいるんじゃないの? 奴らをとっちめてくれないかしら」

「でも最近、彼の話全然聞かないわ……どうしたのかしらねえ?」


 と言うような話だった。『アークハウス』というのは、人類の天敵である魔物を、それ以外の動物と同一視する愛護団体のことだ。

 穏健派は魔物との共存を目指して研究などを行っている比較的無害な人たちだ。


 だが、過激派の連中はそうでもない。

 奴らの大部分は社会に適合できなかった人間だったり、単純に競争に敗れただけだったり、要するに社会からのはみ出し者の集団だ。


 魔物の愛護、と言うより人間社会に対する不満を多く持っている奴らだ。最近デモや暴動などで問題になっている。

 自分たちの憂さ晴らしをしているだけのように見られたり、霊性ランクF級と言われるのも無理はない。


 俺は魔物との共存など夢物語だと思っている。

 しかし俺の元パーティメンバーで、それを追求してアークハウスの穏健派に加入した奴が一人いる。あの心優しい彼女のことを思うと、どうにも苦々しい。


 そんなことを考えていると、不意にエニアが尋ねてきた。


「リガルさん。リガルさんは【神剣《じんけん》】さんって知ってますか? 最近はあまり活動されてないみたいなんですけど」


 よく知っている。

 【神剣《じんけん》】シリウス・カリバー。常に仮面をつけた大剣使い。


 若くして魔物討伐や犯罪者の確保に多大な活躍を残し、S級冒険者が所属するギルド選抜特殊部隊【SABER(セイバー)】に当時最年少で抜擢され、次席・S.Ⅱ(セイバー・ツー)として世界中に名を知られる英雄。

 むしろ知らない方がおかしい。


 しかし、俺はその話題が嫌いだ。


「知ってるが、それがどうかしたか?」


 なるべく、素っ気なくならないように返事をする俺。


「いえ、実は【神剣《じんけん》】さんがシデロの街周辺を中心に活動しているって噂を聞いて、評価を依頼しようと思って探してたんですよ。同じ冒険者のリガルさんなら何かご存じかな~と思いまして」

「は~ん……悪かったね。見つかったのが俺で」


 俺は少し意地悪して、そんな風に言ってみる。エニアはわたわたと慌てた。


「ち、違います! 別にリガルさんが不満ってわけではなくてですね、単純に【神剣《じんけん》】さんのことが気になって……」

「お前、【神剣《じんけん》】のファンか何かか? どこがいいの? あいつの」


 そう聞くとエニアは、きらーん! と目を輝かせた。やはりファンか?


「やっぱり”世界最強の剣士”っていうところです! 仮面をつけているのもミステリアスですし、あと名前がいいです! S.Ⅱ(セイバー・ツー)、【神剣《じんけん》】シリウス・カリバー……かっこいいです!」

「……かっこいいか?」

「かっこいいです~!」


 エニアの趣味は思春期の少年のそれだった。

エニアの趣味は思春期の私のそれでした。

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