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陰陽前夜(おんみょうぜんや) ~綾と失われた超文明~  作者: 輝夜
第一章:星影の姫、密やかなる胎動

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第二十話:小さき影の覚悟、万能の基礎、そして新たな扉へ


綾が五歳の誕生日を間近に控えた初冬の頃。

都を騒がせていた官庫の連続盗難事件は、依然として解決の兆しを見せず、父・為時の心労は募るばかりだった。綾は、そんな父の姿を見るたびに、胸の内で密かに計画を練り続けていた。


秘密の書庫、そして亜空間シェルターでの「変装」技術の研究は、目覚ましい進歩を遂げていた。

綾は、フィラの協力を得て、特殊な素材と光学理論を組み合わせた「認識阻害の外套クローク」とでも呼ぶべきものを試作していた。それは、完全な透明化ではないが、周囲の景色に溶け込み、人の視覚に「見えにくい」あるいは「気にとめにくい」という効果をもたらすものだった。さらに、足音を吸収する特殊な素材で作った履物も完成させていた。

これらに加え、以前試作した顔立ちを変える薄膜や髪色を変える染料、声色を変える技術を組み合わせれば、もはや「藤原綾」の痕跡はどこにも残らない、全く別の存在として行動できるはずだった。


(これなら……これなら、お父様を助けられるかもしれない)

綾は、完成したばかりの「少年の姿」に変装するための道具一式を前に、深く息を吸い込んだ。それは、まるで舞台に上がる前の役者のような緊張感と、ほんの少しの興奮を伴っていた。


ある新月の夜。

綾は、侍女たちが寝静まったのを見計らって、そっと自分の寝所を抜け出した。手には、小さな葛籠つづらを抱えている。向かう先は、秘密の書庫。

そこで、綾は手早く変装を施した。

鳶色の髪、少しつり上がった眉、影のある緑の瞳。そして、認識阻害の外套を羽織り、音を消す履物を履く。鏡に映ったのは、どこにでもいそうな、しかしどこかミステリアスな雰囲気を持つ、十歳前後の少年だった。声も、練習通り、少しハスキーな少年の声に整える。


(よし……これなら大丈夫)

綾は、自分に言い聞かせるように頷いた。

これが、綾が初めて、自分の意志で、誰かのために、その類稀なる力を使おうとする瞬間だった。


彼女の目的は、盗難事件の現場の一つである、蔵部の官庫周辺の調査だった。もちろん、危険な場所へ踏み込むつもりはない。ただ、何か手がかりがないか、自分の目で確かめてみたかったのだ。

屋敷を抜け出し、夜の都を駆ける。認識阻害の外套と音を消す履物は効果絶大で、時折すれ違う夜警の役人たちも、綾の存在に全く気づかない。まるで、夜の闇に溶け込んだ影そのものだった。


官庫の周辺は、厳重な警備が敷かれているはずだったが、綾の目には、いくつかの「隙」が見えた。警備の配置、巡回のルート、そして何よりも、建物そのものの構造的な弱点。それらは、シェルターで学んだ戦術シミュレーションや建築工学の知識があれば、容易に見抜けるものだった。

(これなら、確かに痕跡を残さずに侵入できるかもしれない……でも、一体どうやって物を運び出すの?)


綾は、しばらく周囲の気配を探った。

すると、微かな、しかし奇妙な「気の歪み」を感じ取った。それは、以前、安倍晴明が藤原の屋敷に向けていたものとはまた違う、もっと人工的で、どこか不吉な気配だった。

(この感覚……フィラが言っていた、限定的な空間転移の痕跡……? まさか、本当に……?)


その時、綾の足元で、何かがカサリと音を立てた。

見ると、それは一枚の charred(焦げた)木片だった。しかし、ただの焦げ方ではない。まるで、内側から高熱で焼かれたかのような、奇妙な状態だった。そして、その木片からは、先ほど感じたのと同じ、不吉な「気」が微かに発せられている。

綾は、それをそっと拾い上げ、懐にしまった。

(これは……重要な手がかりになるかもしれない)


長居は無用と判断し、綾は再び闇に紛れて屋敷へと戻った。

自室に戻り、変装を解くと、そこにはいつもの物静かな姫君・綾の姿があった。しかし、その瞳の奥には、先ほどまでの少年のような、強い意志と決意の光が宿っていた。


この夜の出来事は、綾にとって大きな自信となった。

自分の力が、誰にも知られずに、何かの役に立てるかもしれないという確信。そして、「変装」という新たなスキルを手に入れたことで、彼女の活動範囲は格段に広がった。

太古の超文明の記憶、亜空間シェルターという秘密の拠点、フィラという頼れる相棒、そして、自在に操れるようになった「気」の力と変装技術。

綾の「万能の基礎」は、今、確かに固まったと言えるだろう。


五歳の誕生日を目前にして、綾は新たな世界の扉を開こうとしていた。

それは、魑魅魍魎が跋扈する動乱の時代へと続く扉であり、同時に、彼女が「誰かは分からない凄い人」として、数々の事件を解決し、人々を救うことになる、波乱に満ちた冒険への扉でもあった。


第一章、これにて幕。

幼き姫の、静かなる胎動の物語は終わりを告げ、次なる章では、いよいよ彼女の「暗躍」が始まる――。



はいどーもー!作者の〜かぐや〜でーす!

いやー、ついに第一章、終わっちゃいましたね! 長かった? 短かった? ……って、まだ綾ちゃん、本格的に無双してないじゃーん! 準備運動、長すぎじゃね!? ってツッコミは甘んじて受けます! ええ、受けますとも!


だって見てくださいよ、この基礎工事の完璧さ!(自画自賛)

秘密基地? あるよ! 可愛いマスコットAI? いるよ! 変装スキル? ほぼマスターしたよ! もうね、これで活躍しない方がおかしいレベル。自分でハードル上げちゃってる感ハンパないけど、知らん!


さあ、これでようやく綾ちゃん(もうすぐ5歳、まだ幼女!ここ重要!)の「誰にもバレずにこっそりお助けしちゃうぞ大作戦」が本格始動ですよ!

官庫の盗難事件? あんなの序の口、序の口! きっと綾ちゃんが、夜な夜な少年探偵ごっこして、パパッと解決……するはず! たぶん! きっと!(おい)


「え、でも相手は空間転移とか使ってくるんでしょ? 大丈夫そ?」って?

……大丈夫じゃない、問題だ! だから面白いんじゃなーい!

綾ちゃんのオーバーテクノロジーと、魑魅魍魎(まだ出てきてないけど)が跋扈する平安風ワールドのギャップ! これぞ醍醐味ってもんですよ、奥さん!(誰だよ)


というわけで!

この先、綾ちゃんがどんな風に「普通の幼女」と「謎のスーパーお助けマン(仮)」を両立させていくのか!?

そして、いつになったら安倍晴明くんとちゃんと出会って「え、お前も天才だったんかーい!」ってなるのか!? (ならないかもしれない)

気になる続きは、第二章で!


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

ぜひぜひ、これからも綾ちゃんの秘密の成長(と暗躍)を、ニヤニヤしながら見守ってやってください!

それでは、またすぐお会いしましょー! バイならー! そして、続きも読んでくれなきゃ、フィラが拗ねちゃうぞっ☆ きゅるるん!

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