表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰陽前夜(おんみょうぜんや) ~綾と失われた超文明~  作者: 輝夜
第四章 獣牙の咆哮、星影の覚醒 ~綾と晴明、七歳の試練~
119/129

第五話:黒子たちの死闘奮闘(と心の叫び)~姫様(影詠み様)のためならエンヤコラ!~


朱雀門での激戦の最中、民衆の避難誘導と雑魚怪異の掃討に奔走していた影向衆ようごうしゅうの面々。彼らは、主君である影詠み様(その正体が愛すべき綾姫様であることは、トップシークレット中のトップシークレット)の危機を察知し、一部の精鋭が朱雀門へと駆けつけたが、残りのメンバーは依然として都の各所で、それぞれの「死闘(?)」を繰り広げていた。


「おい、弥助! 北の長屋通り、まだ逃げ遅れた子供たちがいるらしいぞ! 急げ!」

小吉が、額の汗を拭いもせず、息を切らしながら弥助に叫ぶ。彼の右腕には、獣型の怪異に引っ掻かれた生々しい傷跡があったが、そんなものはお構いなしだ。

「分かってるって! こっちの『ぬらりひょん(のような何か)』を片付けたら、すぐに向かう!」

弥助は、綾姫様から下賜された「薄絹のナノテクインナー」のおかげで無傷だったが、目の前の、ぬるぬるとした粘液を撒き散らす不定形の怪異に、少々てこずっていた。

(くそっ! このヌルヌル、気持ち悪い上に、掴みどころがねえ! だが、影詠み様……いや、綾姫様が、もっとヤバい奴らと戦っておられるんだ! 俺たちがここでへこたれるわけにはいかねえ!)

弥助は、心の中でそう叫び、懐から取り出した「清めの塩(ただの粗塩だが、影詠み様が『効くかもしれない』と仰っていたので、きっと霊験あらたかなはず!)」を、怪異に向かって勢いよく投げつけた!

「くらえ! 影詠み様直伝(嘘)、破邪顕正・塩まきアタック!」

塩は、怪異の粘液にパチパチと音を立てて弾かれたが、なぜか怪異は一瞬動きを止め、そして「うげぇ」というような不快な音を発して、スルスルと路地の奥へと後退していった。

(……効いた!? マジか!? さすがは姫様のお言葉だぜ!)

弥助は、自分の適当な攻撃が(おそらく偶然)効果を発揮したことに、感動すら覚えていた。


一方、情報収集を得意とするお蝶は、「千里眼の眼鏡ハイテクゴーグル」を駆使し、屋根の上から怪異の動きと、逃げ遅れた人々の位置を正確に把握し、仲間に指示を飛ばしていた。

「……東の辻、老婆一人、足が不自由な模様! 誰か援護を! ……南の市場、子供が二人、蔵の中に隠れています! 火の手が近い、急いで!」

彼女の的確な指示は、多くの人命を救うことに繋がっていた。

(……この眼鏡、本当にすごいわ……。まるで、影詠み様が、いつも私たちを見守ってくださっているみたい……。ああ、影詠み様……いえ、綾姫様……! このお蝶、必ずや姫様のお役に立ってみせますわ!)

お蝶は、眼鏡越しに見える(かもしれない)綾姫様の尊いお姿を胸に、涙ぐみながら任務を続行する。


そして、韋駄天の疾風は、「韋駄天の足袋(パワード足袋)」の跳躍力を最大限に活かし、建物の間を飛び回り、孤立した人々を背負って安全な場所へと避難させていた。

「うおおおお! どけ、雑魚ども! 俺様は、綾姫様(影詠み様)の一番弟子(自称)、韋駄天の疾風だあぁぁっ!」

彼は、時折、意味不明な自己紹介を叫びながら、怪異の群れを文字通り「飛び越えて」いく。その姿は、もはや人間離れしており、一部の町衆からは「あれも影詠み様のお仲間か!? 鳥人間だ!」と、新たな誤解を生んでいた。

(……この足袋、最高だぜ! まるで、姫様の優しいお手が、俺の背中を押してくれているようだ……! この力、姫様のためだけに使うと誓うぜ!)

疾風の忠誠心は、もはや暴走特急と化していた。


しかし、全ての黒子が、常にカッコよく活躍できていたわけではない。

小柄な豆蔵は、下賜された「仕込み簪(麻酔針付き)」を、いざという時のためにと懐に忍ばせていたが、逃げ惑う人々とぶつかった際に、うっかりその簪を自分の尻に刺してしまい、戦闘の真っ最中に「……あれ? なんだか、とっても眠いような……。お花畑が……見え……る……zzz」と、幸せそうな顔で白昼夢の世界へと旅立ってしまった。

(……豆蔵の奴、またやったのか……。まあ、ある意味、一番安全な場所に避難できたと言えなくもないが……)

近くで戦っていた仲間は、深いため息をついた。


声の大きい雷太は、以前「言霊の護符(高周波発生装置)」で仲間を戦闘不能にしてしまった反省から、今回は「物理攻撃」に徹していた。

「影詠み様(綾姫様)より賜りし、この『破邪の棍棒(ただの頑丈な木の棒だが、橘様が『姫様がお選びになったものだ』と言っていたので、きっと霊力が宿っているはず!)』で、悪霊退散じゃあぁぁ!」

彼は、その棍棒を振り回し、力の弱い雑魚怪異を次々と薙ぎ払っていく。その姿は勇ましかったが、時折、勢い余って仲間の頭をかすめたり、避難所の壁を破壊したりと、少々お騒がせな活躍ぶりだった。

(……雷太の奴、もう少し周りを見てくれ……。姫様に叱られるぞ……)

橘は、遠くからその様子を報告で聞き、頭痛を覚えていた。


そして、これらの影向衆の死闘奮闘(と珍騒動)の様子は、フィラを通じて、一部始終、綾の元へと届けられていた。

《マスター……影向衆の皆様、獅子奮迅のご活躍です。特に、弥助様の「塩まきアタック」は、意外な効果を発揮し、現在、シェルターのデータベースに「対不定形怪異用・物理的嫌悪刺激戦術」として記録されました》

「……そ、そう。弥助、やったわね……(棒読み)」

綾は、自分の適当なアドバイスが、まさかそんな形で評価されるとは夢にも思わず、もはや乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

(……でも、みんな、本当に頑張ってくれているわ。私が、しっかりしないと……!)

綾は、仲間たちの健気な(そして時々コミカルな)奮闘に勇気づけられ、改めて気を引き締めるのだった。


影向衆のメンバーたちは、それぞれの持ち場で、それぞれの方法で、必死に戦い続けていた。

その胸には、敬愛する影詠み様(綾姫様)への絶対的な忠誠心と、そして「姫様のためなら、どんな困難も乗り越えてみせる!」という、熱い(そしてちょっぴりズレた)想いが燃え盛っている。

彼らの活躍は、決して華々しいものではないかもしれない。しかし、その一つ一つの小さな行動が、確実に都の被害を食い止め、そして綾の戦いを支える、かけがえのない力となっているのだ。

ただし、その過程で、いくつかの珍プレー好プレーが生まれてしまうのは、もはや彼らの「お約束」なのかもしれないが……。



影の衆の、愛と涙と時々爆笑の戦いは続く!

彼らの忠誠心が、やがて大きな奇跡を呼ぶ……かもしれないし、呼ばないかもしれない!

だが、それでこそ影向衆! がんばれ、黒子たち! 負けるな、黒子たち!

(そして、どうかこれ以上、姫様の胃を痛めつけないで……!)


「お読みいただきありがとうございます。〜かぐや〜の感想や裏話、時には登場人物たちの本音が聞ける『活動報告』を、各話の終わりに高確率で掲載しております。ぜひ、チェックしてみてください!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ