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8 分岐、選択

【翌朝:町をスルーして次の街へ】



---


 ——朝陽が昇り、カルディアの町に活気が戻る頃。


 町の広場では、NPCの商人たちが店を開き始め、市場の通りには新鮮な食材や武具を売る屋台が並ぶ。

 プレイヤーたちは朝一番のクエストを受けたり、昨夜の戦利品を売ったりと、それぞれの冒険の準備に追われていた。


 だが——


 探偵はそんなものには目もくれず、朝早くから町を出て次の目的地へと向かっていた。


 寄り道はせず、余計なクエストも受けず、NPCとの会話すらほとんどしない。

 まるで、最短ルートを突き進むようなプレイスタイル。


 そんな探偵の後を、エコーが半ば呆れながら追いかける。



---


【エコーのツッコミ】


「なぁ……お前さ……」


「ん?」


「……何でこのゲーム、RTAみたいなプレイしてんの?」


 探偵は何でもないことのように答える。


「最短ルートで目的地に行くのは当然だろ?」


「違ぇよ!!! 普通は**"寄り道"**ってのを楽しむもんなんだよ!!!」


 エコーが大げさに宙を回りながら叫ぶが、探偵は軽く肩をすくめるだけだった。


 そんな会話を交わしながらも、道中に出てくるモンスターは片手間に倒していく。

 スキルツリーは相変わらずスピード特化の一撃必殺スタイル。



---


【スキル獲得】


《シャドウステップ》(スキルLv.2)


戦闘中、一瞬で敵の死角に回り込む移動スキル。回避行動としても使える。



《ヴェールストライク》(スキルLv.3)


一定時間、気配を消しながら急所を狙う。次の攻撃が確定クリティカルになる。



《ファントムエッジ》(スキルLv.1)


攻撃後に残像を作り出し、相手を錯乱させる。一撃ごとに敵の反応を遅らせる効果。




---


 探偵はモンスターの動きに合わせ、一瞬で背後に回り込んで急所を一閃。

 通常のプレイヤーなら苦戦する相手も、スキルとプレイヤースキルを駆使して、最小限の動きで仕留めていく。



---


【防御力の問題】


「……お前さぁ、モンスターのレベル、結構高いのわかってる?」


 エコーが警戒したように言う。


「まあな。」


「まぁな、じゃねぇよ!!!」


 エコーが頭を抱えながら叫ぶ。


「お前、スピード特化で攻撃は通るけど、防御力ゴミだろ!?」


 探偵は軽く笑う。


「当たらなければ問題ない。」


「お前、それフラグだからな!?!?」


 そんな会話をしていると——


 モンスターの攻撃が、ギリギリの距離をかすめた。


 探偵は瞬時に**《シャドウステップ》**で回避するが、あと一瞬遅れていたら即死だった。


 エコーが、やれやれとため息をつく。


「お前……そろそろ"デスペナ"をくらうレベル帯になるぞ?」


「……デスペナ?」


 探偵は首を傾げる。

 これは本当に知らない。


「何だ、それ?」



---


【エコーのツッコミ炸裂】


——エコー、固まる。


「……は?」


 探偵は軽く笑って、エコーを横目で見る。


「ん? なんだ、説明できないのか?」


「いやいやいやいや、"デスペナ"も知らねぇのかよ!!???」


 エコーが全力でツッコんだ。


「"デスペナルティ"の略!! ネトゲじゃ死んだ時に経験値ロストとかアイテムドロップとかすることだろ!?!?!?」


「……ふーん。」


「"ふーん"じゃねぇよ!!!!」


 エコーは探偵の顔をジト目で睨みながら叫ぶ。


「お前、マジでネトゲ初心者かよ!!」



---


【探偵の楽しみ方】


 探偵は、エコーがヒートアップする様子を見ながら、くすっと笑う。


「おいおい、そんなに怒るなよ。楽しいだろ?」


「お前が楽しいんじゃなくて、"俺をからかうのが"楽しいんだろ!!!!」


 エコーが思わず叫ぶ。


「お前、ゲームで遊んでるんじゃなくて、俺で遊んでるんじゃねぇのか!!???」


 探偵は軽く肩をすくめる。


「さあ、どうだろうな?」


「……この野郎!!!」


 エコーが頭を抱えて宙でぐるぐる回っていた。


【分かれ道:適正ルート or 高レベルエリア】



---


 道が二手に分かれていた。


 一方は、広々とした草原が広がる平坦な道。

 もう一方は、霧がかった山岳地帯へと続く険しい道。


 エコーは探偵の隣に浮かびながら、指(?)を向けて説明を始めた。


「さてさて、ここが分かれ道だ。」



---


【ルートA:適正レベル帯エリア】


「左の道は、適正レベルのエリア!」


 エコーが左側の道を指す。


「この先には、中レベル帯のモンスターが出るけど、まぁ**"普通のプレイヤー"**ならこのルートを選ぶのがセオリーだな!」

「NPCの町もあるし、レベル上げにも最適! しかも、"ゲームのメインストーリー"もこの道を進めば順調に進む!」


 適正レベル帯エリアは、Lv.15〜20のモンスターが出現するエリア。

 探偵はまだLv.10前後なので、多少の戦闘経験を積めば、安定した攻略が可能なはずだった。

 補給地点やショップもあり、町で装備を整えながら進めるのが"一般的なプレイ"。



---


【ルートB:高レベルエリア】


「で、右の道は……」


 エコーが一瞬、言葉に詰まる。


「……えーっと、まぁ"こっちを選ぶプレイヤーは滅多にいねぇ"って言えば伝わるか?」


 右の道は、険しい山道へと続いていた。

 霧がかかり、遠くには不吉な雲が垂れ込めている。

 時折、低く唸るような風の音が響く。


 高レベル帯エリアは、Lv.30〜40のモンスターが出現する"即死リスク"の高いエリアだった。

 補給地点なし、町もなし、サバイバル要素強めの**"プレイヤー殺し"のエリア**。


「……つーか、お前がこの道を選んだら、ガチで死ぬぞ?」


 エコーは真剣な顔で探偵を見上げる。


「ぶっちゃけ、まだ"デスペナ"も知らねぇお前が"この道"を行くのは、普通に無謀だと思うんだが……」



---


【探偵の選択】


 探偵は、目の前の二つの道を見比べると、一旦立ち止まった。


「……まずは、装備の確認だな。」


 そう呟きながら、インベントリを開き、現在の装備品と所持品をざっと確認する。



---


【現在の装備】


《ウルフファング・ナイフ》(★3)


ATK +6


クリティカル率 +15%


追加効果:獣種へのダメージ +10%



《木の剣》(初期装備 / ほぼ使っていない)


《ハイスピード・ブーツ》(★2)


移動速度 +10%


ダッシュ時のスタミナ消費軽減



防具:初期装備(ほぼ無防備)




---


【現在の所持品】


ポーション × 2(少なすぎる)


ランク低めのモンスター素材(加工用)


クエスト未受注のため、イベントアイテムなし




---


 探偵はインベントリを確認しながら、淡々と分析する。


(防御面が完全に紙だな。)


(回避と急所攻撃で戦えてはいるが、万が一被弾したら即死級。)


(所持品も貧弱だし、この状態で高レベル帯へ行くのは愚策だ。)


 インベントリを閉じると、探偵は適正レベルエリアへ向かって歩き出した。



---


【エコーの驚愕】


「……お、おい?」


「ん?」


「お前……"そっち"行くのか?」


「そうだが?」


 エコーは一瞬、言葉を詰まらせた後、全身を使って大げさに安堵のポーズを取った。


「お前が"正気"でよかったぁぁぁ!!!」


「俺、今ガチで高レベル帯に行く気なのかと思って心臓止まるかと思ったわ!!!」


 探偵はエコーの反応を冷静に眺めながら、一言。


「お前、俺をなんだと思っているんだ。」


「"何考えてるかわからねぇ無茶するヤツ"だよ!!」


 探偵はそれを軽く流しながら、道を進む。


「今の所持品じゃサバイバルは無理だろ。クリティカル率も上げておきたい。」


「……は?」


 エコーは宙でピタリと静止する。


「……おい、待て。」


「ん?」


「"クリティカル率も上げておきたい"って、お前……」


 エコーはしばらく考えた後、驚愕の表情で探偵を見つめた。


「……まさか、お前"高レベル帯"に行くために、**"街で準備しようとしてる"**のか!?」


 探偵は薄く笑った。


「察しがいいな。」


「察したくなかったよぉぉぉ!!!?」


 エコーは全身で頭を抱える。


「ちょ、ちょ、待て待て待て!! 普通は"適正エリアでレベル上げるために街へ行く"んだぞ!? お前の発想、逆なんだが!!」


 探偵は軽く肩をすくめながら答える。


「適正エリアは、"強化のための踏み台"だ。」


「お前、やっぱり暗殺者プレイじゃねぇかぁぁぁ!!!」


 エコーの全力のツッコミが響く中、探偵は淡々と次の街を目指して歩き続けるのだった。


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