15 幽霊の痕跡調査
【幽霊の痕跡調査】
探偵は湖の岸辺に立ち、静かに情報ウィンドウを開く。
先ほどの石の投擲——あの瞬間、幽霊らしき影に"何か"が起こった。
ならば、システムログを確認すれば、異常な挙動が記録されている可能性がある。
(まずは、ログを確認してみるか。)
システムログには、通常プレイヤーが行った行動が細かく記録されている。
攻撃、移動、アイテムの使用……すべてがログに残る仕様のはずだった。
——しかし。
「……ログに何も残っていないな。」
「……は?」
エコーが驚いたように声を上げる。
「お前、つまり"石を投げた"っていう行動すら記録されてないのか!?」
探偵は静かに頷いた。
「そうらしいな。」
「そんなバカな……普通、"投擲アクション"はシステムログに残るもんだろ?」
「なのに、残っていない。」
探偵は腕を組みながら、冷静に分析を続ける。
(つまり、これは幽霊の影に関わる現象が"ログに記録されないように"処理されている可能性がある。)
「……これはこれで、興味深いな。」
「お前、何でそんなワクワクしてんだよ!? 普通に不気味だろ!?!?」
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【魔法の有用性に気づくRPG初心者】
探偵はふと視線を上げ、手をかざすような仕草をする。
「……魔法取っておけば良かったかな。」
その言葉を聞いた瞬間、エコーの反応が変わる。
「……はぁ!?」
エコーは探偵の前に回り込み、ジリジリと詰め寄るように浮遊する。
「お前、今まで魔法スキルを一切取ってなかったのか!?!?」
「そうだが?」
「おいおいおい、ふざけんなよ!? RPGにおいて"魔法"がどんだけ便利かわかってねぇのか!?」
エコーは勢いよく宙を回転しながら、力説を始める。
「魔法はな、遠距離攻撃ができるし、属性攻撃も可能だし、補助効果もある!!」
探偵の周りをパタパタと飛び回るエコー。
「しかも、攻撃だけじゃなくて、索敵・分析にも使えるんだよ!! 例えばな、"エーテルビジョン"って魔法を使えば、通常見えない霊的な存在も可視化できるんだぞ!!!」
探偵は、エコーの必死の説明を聞き流しながら、無表情で頷く。
「ふーん。」
「"ふーん" じゃねぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
エコーが全力でツッコむ。
「お前、今まで"魔法なんていらねぇ"って思ってただろ!? 絶対思ってただろ!?!」
探偵はしれっと答える。
「……まぁ、近接戦闘でどうにかなるかと思っていた。」
「どうにかなってたのが逆におかしいんだよ!!!」
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【投擲実験:石 vs. 木剣】
探偵はエコーのツッコミを聞き流しながら、湖の幽霊の座標へ再び"何かを投げる"ことを考える。
(さっきは"石"を投げたが、ログには何も記録されなかった。)
(だが、もし"攻撃判定"になるものを投げたら、結果が変わるかもしれない。)
探偵は腰に携えたまま、ほとんど使っていなかった初期装備の木剣を取り出す。
「……これなら、"攻撃"として記録される可能性があるな。」
「えっ!? お、おい、まさか……」
エコーが焦った声を上げる。
「まさか、"武器"を投げるのか!?!?」
「問題があるか?」
「大ありだよ!!! そもそも"武器を投げる"って発想がヤバい!!」
「なら、エコーが投げられるか?」
「だから俺を投げるなぁぁぁぁ!!!!」
探偵は微かに笑いながら、木剣を軽く構えた後、幽霊の座標に向かって投げ放った。
——だが。
何も起こらない。今回はノイズもなかった。
木剣は湖面に落ち、ただ静かに波紋を広げた。
探偵は軽く腕を組みながら考える。
「……変わらないか。」
エコーは、それを見て大きく息をつく。
「お前なぁ……もう少し"慎重に"試せよ……」
「慎重だろ?」
「どこがだよ!!!」
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【削除データを利用したアプローチ】
探偵は木剣が沈んでいく水面を見つめながら、ふと川の時に発見した削除データのことを思い出す。
(もし、あの時と同じように"削除されたデータ"を利用できるなら、幽霊の座標に干渉できるかもしれない……。)
探偵は視線をエコーへ向ける。
「エコー。」
「……なんだよ?」
「"削除データ"を利用して、この座標に干渉できないか?」
エコーは探偵をじっと見つめた後、ふっと笑った。
「……ま、もうここまで来たら、何でも試すしかねぇか。」
そう言いながら、エコーはシステムにアクセスする準備を始めた。
探偵は湖を見つめながら、これで何か"新しい反応"があるかどうかを待つのだった。




