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12 高レベルエリア

【高レベルエリア突入】


ヴァルカの街を出て東へと進むにつれ、景色は徐々に変化していった。

最初は草原が広がっていたが、次第に緑は消え、地面は岩肌をむき出しにした荒涼とした道へと変わっていく。


風が冷たく肌を刺し、周囲の空気はわずかに重くなっていた。

遠くには鋭く切り立った山脈がそびえ、岩の合間を風が抜けるたびに、低く唸るような音が響く。


そして何よりも——


このエリアの"異様な静けさ"が、普通のフィールドとは一線を画していた。


生き物の気配が極端に薄い。

時折、遠くで何かの鳴き声が響くが、それすらも妙に不気味で、どこか現実離れしている。


探偵は無言で歩を進める。

その隣で、エコーが不機嫌そうに浮かびながら口を開いた。


「……おい。」


「ん?」


「ついに来たな、高レベル帯エリア。」


探偵は足を止めることなく、そのまま道を進む。


「そうだな。」


エコーは眉をひそめ、深々とため息をついた。


「なぁ、お前さぁ……」


「ん?」


「どこまで真面目にプレイする気ねぇんだよ!!!」


探偵は軽く肩をすくめる。


「真面目にプレイしているつもりだが?」


「どこがだよ!? まず普通のプレイヤーはな!? 適正レベルでクエスト進めるんだよ!! それをすっ飛ばして、高レベル帯に単騎突撃とか、何考えてんだ!?」


探偵は淡々と答える。


「試してみたいだけさ。」


「試してみたいだけ、で高レベル帯突っ込むヤツなんて聞いたことねぇよ!!」


エコーは空中でぐるぐると回転しながら、頭を抱えた。


「お前、ここがどんな場所か分かってんのか!? ここはレベル30〜40帯のモンスターが出る、"普通のプレイヤーなら一人で来ない"エリアなんだぞ!?」


「そうなのか?」


「そうなのか? じゃねぇよ!!!」


エコーは思い切り宙でのけぞる。


「つーか、お前、ホントに"ゲームの遊び方"知らねぇのな!? 何かに取り憑かれてんのかよ!!?」


探偵はエコーの問いには答えず、そのまま岩場の道を歩き続ける。


(さて、どこまで進めるか……)



---


【エコーの苛立ち?】


エコーは、探偵の隣を漂いながら、不機嫌そうに口を開いた。


「なぁ、お前……俺をイラつかせたいのか?」


探偵はふっと小さく笑う。


「別に。」


「……じゃあ、なんでそんな"楽しそう"なんだよ。」


探偵は一瞬、足を止めると、空を見上げる。


雲の切れ間から覗く夜空は澄んでおり、遠くの山脈の向こう側では、淡く青白い月が浮かんでいた。


「楽しいからだろう。」


エコーがじっと探偵の横顔を見つめる。


「……お前さ。」


「ん?」


「ゲームで遊んでるんじゃなくて、俺で遊んでるだろ。」


探偵は歩く速度を緩めず、少しだけ口元を緩めた。


「さあ、どうだろうな?」


「やっぱり遊んでるじゃねぇかぁぁぁ!!!」


エコーの叫びが岩場に響く中、探偵はただ静かにその先を目指して進むのだった。


【霧の裂谷:探偵の探り】


霧が深く立ち込める岩場の道を進みながら、探偵はぼんやりと辺りを見回した。


「……思っていたよりも、霧が濃いな。」


「そりゃそうだろ。"霧の裂谷"って名前なんだからよ。」


エコーが軽く肩(?)を竦めながら答える。


「ここはフィールドの中でも視界が悪い場所で、昼間でもこの通りだ。まともに前も見えねぇ。」


「なるほどな。」


探偵は霧の向こうを見ようとするが、数メートル先すら不鮮明だった。


「じゃあ、この霧の中にモンスターが潜んでいるのか?」


「当然。」


エコーは少し浮遊しながら、指(?)を向ける。


「このエリアには"ヴェイルバイパー"っていう蛇型のモンスターがいる。霧に溶け込むように動いて、不意打ちしてくるから気を抜くと——」


「なるほどな。」


探偵は足を止め、ゆっくりと辺りを見回した後——


「じゃあ、俺は"気を抜く"ことにしよう。」


と、何の前触れもなく宣言した。


「お前、バカなのか!?」


エコーが即座に叫ぶ。


「だから"危ない"って言ってんだろ!!」


探偵は微かに笑いながら歩き出す。


「……ったく、お前、ホント俺で遊んでるよな?」


「何を言ってるんだ?」


探偵はしれっとした顔でエコーを見る。


「俺は"ゲーム"を遊んでるだけだぞ?」


「……ぜってぇ嘘だろ。」


エコーのジト目を受けながらも、探偵は淡々と次の質問を投げかけた。


「この霧の裂谷の奥には何がある?」


「ん? そりゃ、次のエリアに繋がる洞窟があるぜ。」


「へぇ。」


「そこを抜けると、拠点街に行ける。でも、"普通のプレイヤー"はこんな低レベルでここに来たりしねぇ。」


「ふむ。」


探偵は霧の中を見つめながら、何かを考えるように呟く。


「このエリアで、バグ報告とかは?」


「……バグ?」


エコーが一瞬、間を置いた。


「さぁな? そんなもん、俺に聞かれても分かんねぇよ。」


「……。」


探偵は、その返答に違和感を覚えた。


(……"分からない"って答えるのは、珍しいな。)


いつもならエコーは"ゲーム知識を解説する"ことに自信を持っている。 なのに、今回は"適当に流そうとしている"ように見えた。


「……まぁ、いいか。」


探偵は深追いせず、一歩前へ進む。

後ろで、エコーがじっと探偵を見つめた後、何事もなかったようにまた軽口を叩き始める。


「お前さ、こんなに話しかけてくるの、珍しいよな?」


「そうか?」


「"そうか?" じゃねぇよ。絶対何か企んでるだろ。」


「さあ、どうだろうな?」


「おいおい、またそれかよ……」


エコーが呆れて肩(?)を竦めるのを横目に、探偵は霧の向こうへと歩を進めた。



---


【霧の裂谷・洞窟前】


やがて、霧が薄くなり、視界が開ける。


目の前に現れたのは、巨大な洞窟の入口だった。

岩肌は荒々しく削られ、自然の侵食によって形作られたその入り口は、まるで巨大な生き物の口のように不気味な雰囲気を漂わせている。


内部は真っ暗で、洞窟の奥からはかすかな水の滴る音が響いていた。

時折、冷たい風が洞窟の奥から流れ出し、霧と混じりながら探偵の頬を撫でる。


探偵はしばらく洞窟の前に立ち、無言で様子を観察する。


「へぇ……なかなか雰囲気のある場所じゃないか。」


「だろ?」


エコーが、宙を漂いながら洞窟の説明を始める。


「ここが"霧の裂谷"の最奥——**《奈落の洞》**だ。」


「"中層エリア"と"上層エリア"を繋ぐフィールドの一つで、ここを抜けると次の拠点街にたどり着く。」


「ただし——」


エコーは強調するように探偵を見た。


「"普通のプレイヤー"は、こんな低レベルでここに来たりしねぇ!」


「そうなのか?」


「そうなのか? じゃねぇよ!!」


エコーが即座にツッコむ。


「洞窟の中は複雑な構造になってるし、"瘴気"が漂ってる場所もある。補給なしで進むのはリスキーだぜ?」


「へぇ。」


「ついでに言えば——」


「幽霊とか出そうだよな。」


探偵のぼそっとした呟きが、エコーの解説を遮った。


——その瞬間、エコーの動きがピタリと止まる。


「……。」


一瞬だけ、沈黙。


「……おい。」


「ん?」


「今、なんて言った?」


探偵はエコーの反応を確認するように横目で見る。


「幽霊とか出そうだよなって言ったんだが?」


「……」


エコーはしばらく探偵の顔を見つめた後、ゆっくりと息を吐くように——


「お前、わざと言ってんだろ!?!?!?」


と、全力でツッコんできた。


「は?」


「この雰囲気で"幽霊"とか言うんじゃねぇぇぇ!! フラグ立つだろ!! 何考えてんだ!!」


「考えてることなんてないが?」


「うそつけぇぇぇ!! 絶対楽しんでる顔してんじゃねぇか!!!」


エコーは宙でぐるぐる回りながら、明らかに動揺していた。


探偵はしれっと洞窟の入口へ歩を進める。


「……ま、何かが出るなら、それを確かめるのが探偵の仕事だからな。」


「いやいやいや、なんでそんなノリで"幽霊退治"に行く流れになってんの!?」


「違うのか?」


「違うよ!!! そもそも幽霊なんていねぇんだから!!」


探偵は洞窟の入り口の冷気を感じながら、エコーの反応を楽しむように笑う。


「……じゃあ、確かめるしかないな。」


「お前、ホントに俺で遊んでるよな!?!?!?」


エコーの叫びを背に、探偵は暗闇の洞窟へと足を踏み入れた。



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