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ブリザードされた花の5年

作者: きなこともちお
掲載日:2023/12/26

春の風が吹くそんな街角

私が働いている花屋ではある年になると必ず訪れるお客様がいる

「いらっしゃいませ。今回はどのようなものにされますか?」

そう言って色とりどりの花の写真を見せる

そうだな、と言って考え出すこの方は亮さんといってうちの常連さんである

「今年は海老が美味しかったから、赤の花でお願いしたいかな。」

かしこまりました、と予約表と注文票の入力にタブレットを操作する

目の前で真っ赤な薔薇を見ている亮さんの、リボンまで赤くないほうがいいのかな、という心の声が聞こえる

「少しお勧めのデザインがあるのですが、御覧になられますか?」

一回しか会ったことがなく、今までも常連さんであると教えてくれたのはここのオーナーさんだった

かなり昔からの知り合いのようで、たまにご飯に行っていると話しているのを聞いたことがある

オーナーさんからは、

「亮くんはいい子だよ。本当に。」

と聞くのが定番となっていた

私は少し気になっていた

そんな方がどんな人への花を用意しているのだろうと

「こちらのデザインになります。最近始めたんです。」

タブレットで写真を映しながら見せる

それを見た亮さんは、何かに閃いた顔を見せ、一直線に指差す

「これでお願いします。」

その先にあるのは、去年私がいいデザインだとオーナーさんに無理言って追加してもらったものだった

「ありがとうございます!」

少し声が大きくなってしまい、亮さんと顔を合わせ小さく笑う

カウンターに行き、受取日などの詳細を決め決済をする

あとはレシートとフラワーイベントのチラシを渡すだけとなったとき、思い切って聞いてみた

「あの、この花どんな人へのプレゼントなんですか?」

反応があまりなく、私ははっとした

「すみません。いきなり失礼でしたよね。」

こちらレシートになります、と前に差し出すと

「オーナーから聞いて、知っていると思っていました。」

と言い、お話をしてくれた

亮さんがこの花屋に来るのは5年に1度

それは亡くなった彼女との約束なのだという

その彼女は当時の医療では助かることができなかった

まだ若かった亮さんを思った彼女は、5年に1度亮さんの誕生日を自分に欲しいと言った

自分を思い出す日にしてほしいと

「これなら、次の5年後まで彼女が美しいものを見て待っててくれるような、そんな気がしてるからなんです。」

そう言った亮さんは、荷物をまとめ去っていく

想いを聞いてしまうと、より一層気合が入る感覚がした

「またお越しくださいませ。」


初めての投稿で拙いですが、お楽しみいただきたいです。

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