(短編版)婚約破棄の代償
アルス王国は海沿いにある小国で東に超大国であるヴァルス帝国に隣接している小国である。
ヴァルス帝国からアルス王国を守っているのはイルナ辺境伯だった。
イルナ辺境伯は15年前に攻めこんで来たヴァルス帝国を自領の騎士団だけで撤退に追い込んだ事でその武力は有名でヴァルス帝国からイルナ辺境伯が健在な内は攻めこんでも無駄だと言わしめ、それからイルナ辺境伯領はヴァルス帝国との交易で栄えていた。
そしてイルナ辺境伯とヴァルス帝国の皇帝であるアルス皇帝は仲の良い友人に成っていた。
イルナ辺境伯の娘であるアイシャは文武両道でありその美しさでも有名であった。
そのアイシャとアルス王国の王太子であるマルスの婚約がアイシャ三歳のときに王命で結ばれた。
これにはヴァルス皇帝が遅れを取ったと後悔していたとまで噂されていた。
アイシャとマルスの交友はアイシャが12歳になるまでは順調だったがマルス王太子にガルジャ侯爵の息の掛かった側近が付いた頃から怪しくなった。
側近筆頭のガルジャ侯爵の息子であるジョイスの話に唆されたマルス王太子がアイシャを毛嫌いしだしお茶会はアイシャを無視してお茶を飲むと直ぐに退席し、季節の挨拶や誕生日のプレゼントを送らなくなった。
そして15歳に成り学園に通う様になると国王の一人息子であるマルス王太子はアイシャを一切無視しガルジャ侯爵の娘であるナタリーと周りの目を一切無視して隠さず交際する様になった。
アイシャはそれを全く気にせず学園主席の成績で学園の花として過ごす。
それから3年間学園主席のアイシャと学園底辺の成績のマルス王太子は一切交流しなかった。
そして卒業式の後の卒業パーティーで事件は起きた。
パーティーが始まるとマルス王太子はナタリーと側近を連れ壇上に上がり叫び出す。
「私の愛を得られず私の愛した人に嫉妬して虐めを行う性根の腐った婚約者である辺境伯令嬢のアイシャに婚約破棄を告げる」
「虐めに付いては知りませんが婚約破棄は了承します」
そう言って素早く会場を立ち去るアイシャに意表を突かれ立ち去る事を赦してしまう。
その後事実と違う理解できない事を叫ぶ王太子に会場はざわめく。
王城では婚約破棄に反対する宰相や騎士団長に明確な発言が出来ず王太子の行動を認めてしまう王に愛想を尽かし職を辞しイルナ辺境伯領に接する領地に引き込む者が相次いだ。
王太子とナタリー侯爵令嬢の婚約を祝う中で目端の聞く商人は店を畳みイルナ辺境伯領に移り住む。
そして1年が過ぎ王太子の結婚により我が世の春を祝うナタリー侯爵が国の資金で王都やイルナ辺境伯領以外の街に酒と食料を送り結婚祝いで国中を祝いの渦に巻き込んでいると相次いで報告が入る。
「ヴァルス帝国がイルナ辺境伯領等を素通りして我が国に攻めこんで参りました」
優秀な人間が愛想を尽かし辞めている為進攻を押し止める者は居らず数日でアルス王国は国民を根切りにされ消滅した。
そして王族や貴族はスライムによる生きたまま消化される刑が執行された。
そして帝国では婚約したアイシャ嬢と皇太子の間で次の様な話があった。
「婚約を申し込むのが遅れ先に婚約された時は後悔に浸ったよ」
「私も後悔しましたが根切りはやり過ぎでは」
「移民する人間に不足が無いのでその方が後は安定するよ」
「アルス王国を取り込んだので私の話しどおり帝国は安定しますね」
「君の提案に有るようにこれで塩の自国生産が叶うよ」
そうして二人は幼い頃の約束通り結婚し帝国は数少ない問題を解決して更に発展する。
読み返して見ると短編にしようと重要な点まで切り取っているので分かりにくい名前の変更と共に中編に書き直します