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50 『侏儒の遊び』 ~渋谷編④

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 阿仁三タケル75pt

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「タケル様、ポイントが上がってますよ」

「マジか」

 朱雀が双剣を着物の中に隠して降りてくる。


「はぁ・・・式神しか出てこないパターンが多すぎるだろ。陰陽師が出てこないままフェードアウトするパターンばかりだ。白虎、朱雀、青龍、適宜休んでくれよ」


「私は比較的休めてます。白虎は頑張りすぎじゃない?」

「ふむ、自分では自覚がないんだが」

 式神か悪鬼かわからないが、目の前に現れる悪鬼を倒していくうちにポイントが増えていた。 


 数珠を鳴らして剣に変える。

 

 ― 呪詛剣 浄衆阿修羅 ― 


 ザンッ

 

 素早く悪鬼を斬って、蹴散らしていった。

 陰陽師がいなくても、渋谷は悪鬼邪神が多い。


「僕も戦えたらな。劉羽、なんか戦う方法ない?」

「ユウビは劉羽がいるから戦う必要ないだろ?」

「そうだけど・・・」

 悪鬼が霧のように消えていく。


「それをいうなら、タケル様だって戦う必要はありませんけどね」

 朱雀が少し不服そうに言う。


「私たちがいるのですから」

「俺の場合体が勝手に動くんだよ。別に四神を信頼していないわけじゃないって」

「じゃあ、いいのですけど」

 剣を数珠に戻す。

 

「それにしてもタケルは敵なしだね」

「そりゃそうだ。戦い慣れしてるからな」


「タケル!」


「ん?」

 振り返ると、クラスメイトの男女数名が立っていた。


 サッカー部の主将をしているコウキが近づいてくる。

「タケル・・・奏斗と恵の配信見て駆けつけてきたんだけど、あれってどうなったの?」

「私、なんか陰陽師のゲームをやるって話は聞いてたんだけど」

「高校生が集団でうろついていいのかよ」

 ため息交じりに言う。


 肩を払って、自分の体を軽く浄化した。


「たまたま塾帰りにカラオケに行ったら帰れなくなって・・・配信見てたんだ。電車も止まってるし、つか、それおり奏斗と恵が・・・」

「死んだよ」

「・・・!?」

 全員を見ながら言う。


「は? 死んだって・・・マジかよ」

「配信見てたなら知ってるだろ?」


「・・・・・・」

 絶句して、呼吸が少しの間止まっていた。


「お前らも死にたくなかったらここを去ってくれ。帰りは、鬼とは目を合わせるなよ。まぁ、見えないか・・・逃げるしかないな」

「待てって。死んだって・・・どうしてそんなに冷静でいられるの?」


「そうだよ!だって、配信中にクラスメイトが亡くなったんだよ」

 女の子がぼろぼろと泣きながら言う。 


 悪鬼が横を歩いていても気づかない。

 朱雀が呆れたような表情で、クラスメイトを見つめていた。


「タケル様、話すだけ無駄です。陰陽師が何かもわからないくせに」

「っ・・・」


「半端に陰陽師になったのも悪い。お前らも、その霊力でこの辺を回るな。もう、そろそろ丑三つ時、悪鬼邪神の力も強くなってくる」

「ねぇ、助ける方法はないの?」

「ないことはないが・・・その前にお前らのほうが死ぬだろうな」


「え・・・?」

「俺は妹を助けるために戦ってる。『侏儒の遊び』は俺にとってただのゲームじゃない」

 白虎が襲い掛かってこようとした悪鬼に噛みついていた。


 クラスメイトは誰一人として今どうゆう状況なのか認識していないようだ。


 ガタガタガタ

 ドーン


「きゃー!!!!!」

 突然、看板が落ちてきて、砕け散る。

 軽く結界を張って、軌道をそらした。


「タケル・・・今のって?」

 悪鬼がこちらを見て、にやにや笑っている。


「何度も言ってるだろ! 死にたくなかったら早く渋谷から離れろ!」

 強い口調で言う。


「きゃ・・・」

「うわ・・・わああぁぁぁ!!!」

 クラスメイトたちが蜘蛛の子散らすように逃げていった。

 


「ったく、何がしたいんだよ」

「丑三つ時かぁ・・・眠いなぁ」

 ユウビがあくびをして目をこすっていた。


 ズン・・・・


 背筋が冷たくなる。


「あはははは、陰陽師って面白いよ。渋谷って悪鬼ばかり。悪鬼はすごいけどね、私はSSレアで引き当てた魔女を使役してるから大丈夫」

 前から高校生くらいの眼鏡をかけた少女が歩いてきた。

 自撮り用のカメラで自分を映して、配信していた。


「もうすっごいレアを引き当てちゃった。私最強かも。いえぃ」

 カメラに向かってアピールしている。


「なんだ? あの空気を放つ・・・邪神か?」

 長い髪の美しい女性が、少女の横についていた。

 SSレア? いや、あれは・・・。


「神ですね。失墜した神の分霊といったところでしょう」

「何の神だ?」

「そこまでは読めませんね。ただ、丑三つ時にしか姿を現すことのできない神というのは確かでしょう」

 青龍が警戒しながら横に並ぶ。

 翡翠のような瞳を持ち、唇は赤く染まっていた。


「ねぇねぇ、私、あいつと戦いたいな」

 式神の女性が笑いながらこちらを指す。


「姫ちゃんが自己主張するなんて珍しい」

「ふふふ、だって、あのこの血美味しそうなんだもの。若い式神もいる」


「!!」

 朱雀を見てほほ笑んでいた。


「んと、阿仁三タケル・・・へぇ! もう75ptも持ってるんだ。彼を倒せば一気にポイントが入る。あ、地味にその横の子も30pt持ってるから、合わせて100pt超えちゃうね」

 少女が眼鏡をくいっと上げていた。


「いつの間に30ptになってたんだ?」

「劉羽がいろいろ倒してくれたら、そんな数値になってたよ」

「完全オートモードだな」

 このゲームで一番楽してポイント稼いでいるのはユウビな気がする。


「・・・・・・・」

 劉羽がこちらを見て、式神の女性に視線をやる。


 堕ちた姫神だ。

 リヒメに聞いたら何かわかるんだろうが・・・。


「油断するなって言いたいのか。わかってるよ。こいつは・・・」


 シュンッ


 いきなり女が爪を長くして引っかいてきた。 

 結界を張るのが遅れてしまった。


 咄嗟に白虎が庇う。

「っ・・・・・」

「白虎!!」

「も・・・問題ありません。気を付けてください。・・・」


 ― 浄化の炎 ― 

 

 白虎の穢れを浄化していく。

 でも、穢れが重い。泥のように重く、なかなか抜けていかなかった。


「すごいすごい、今すごいことが起きてるの! 姫ちゃんが押してる。姫ちゃんはすごくきれいな邪神だよ。AIイラストとかでできないかな」

「ふふ、確かにイラストは嬉しいな。今はそうゆうもののほうが広まりやすいって聞いてる」

「みんなも見てみたいって言ってるし、姫ちゃんが戦ってる間書いてみるよ」


 美玖ががれきの上に座る。

 カメラを置いて回したまま、アイパッドでイラストを描こうとしていた。



 あとの二体の式神は得体のしれない黒い布を被ったような式神だ。

 あの女の眷属に近いか。


「怖い顔しないで。ちょっと、生き血が欲しいだけ。若くておいしい生き血が」

「・・・お前、名は何という?」


「名を明かしたらつまらないでしょ? 女は神であっても、謎が多いほうがいい伝説を残してくれる。あーあ、今ので勝てたのに。さすがに一筋縄ではいかないか。そのほうがいい。若くて良い血を飲みたいから」

 女が長い爪を見つめながら、楽しそうにしていた。 

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