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48 因縁

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 阿仁三タケル 60pt

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「あーもう、めんどうくせぇな。しかも、俺の名前”橘”なのに、どうして当然のように”阿仁三”になってるんだよ」

「陰陽師での通り名は阿仁三だからじゃないでしょうか」

 朱雀が穢れを切って、双剣をしまう。


 人ごみを避けて、雑居ビルの階段に腰を下ろした。

 スマホを見ると、渋谷で配信中に死んだ恵と奏斗の話でバズっていた。


 その他火災や車同士の衝突事故、電車の脱線、落下物、霊力のない陰陽師が知らず知らずのうちに引っ搔き回していた。


 悪鬼、邪神はのびのびと遊んでいる。


 配信者は一組減っても変わらず増え続けていた。

 どの配信も閲覧数はどんどん増えていき、トレンドの上位を陰陽師が占めていた。


「『陰陽師なったばかりの男たちが無双する(予定)』ってラノベみたいなタイトルもあるよ」

 ユウビが楽しそうに言う。


「地獄絵図だな。日が昇るころにはどうなってるのか」

「そうですね」

 朱雀が横に座って、巻物でポイントを確認していた。


「タケルって強いね」

「ここにいる陰陽師が弱いんだよ」

 ユウビが狐の面を抑える。


「そういや、どうしてタケルは陰陽師になったの?」

「血だよ。血。たまたまそうゆう家系だっただけだ」

 白虎が近づいてくる。


「こんなクソゲーに付き合ってるのも妹を助けるためなんだよ。別に金がかからないなら面倒なことに首を突っ込みたくない」

「妹?」

「そうだ。奴が目覚めるまでは無邪気で可愛い妹だったよ」

 目を細める。


「へぇ、なんか複雑そうだね」

「ユウビは蘇らせたい者がいて参加したのか?」

「んー、別に」


「だろうね。まぁ、みんなそんな感じで参加してるんだろうな」

 壁に寄りかかって、ビルの間から夜空を見上げる。


 どんな理由があろうと、このゲームで最後まで生き残っていた者が勝者だ。


 大渦津日神の言う通り、琴音を蘇らせる唯一の手段はこれしかない。


「・・・・ユウビはどうゆう生まれだ?」

「僕?」

 ユウビが面を少し上げる。


「僕は元々記憶が薄くて、自分でもよくわからないんだ。ぼうっとしてるのかな。あ、本とか好きだな、あまり外に行った記憶はなくてスマホをポチポチやったり。最近はゲームにはまってたんだ。な、劉羽」

「・・・・・・・・・」

「陰陽師に会ったのもたぶん初めてだ。劉羽が式神になってくれるなんて思わなかったよ」

 軽い口調で言う。

 右手にはスマホを持って、配信の様子を気にしているようだった。


「劉羽とはどこで会ったんだ?」

「生まれた時から一緒にいた・・・と思う。いつも、僕を守ってくれる。な」

「・・・・そうか」


 劉羽が何か言っているようだが、俺には何も聞こえなかった。

 ここまで素性のわからない式神も珍しいんだけどな。



 ゴオォオオオオオオ


「ごほっ・・・煙が濃いな」

「移動しますか?」

「せっかく、休憩できる場所についたのに」

 近くの火災の煙の臭いが鼻をつく。




「こちらにおりましたか」


「!?」

「ユウビ、お前は下がってろ。絶対に顔を見せるな。白虎、青龍、よろしくな」


「え・・・・」 

 狐の尻尾がふわりと見えた。

 滝夜叉姫がビルを駆けるように降りてくる。 


「平将門公。やはりこの場所にいらしたのですね」

「っ・・・・・」

 ユウビが驚いていた。劉羽が武器を構える。

 白虎と青龍がユウビの前に行った。


「随分体が軽そうだな。琴音をどうした? 殺したのか!?」

 怒りを抑えながら、弓矢を出して握り締める。


「私は将門公に封印されていますからそんなことできない。体から彼女の魂を引き抜かれただけのこと。おかげで私は自由になれた」

「誰にやられた?」


「それは、将門公もご存じでしょう?」

「・・・・・・・・・・」

 滝夜叉姫が微笑む。砂埃が舞っていた。


「お前を殺しても、琴音は戻らないが」


 キンッ


 弓矢を引いて、滝夜叉姫に向ける。

 狐の尻尾が2つふさふさと、赤い霊力を放ちながら揺れている。


「私を殺せば、琴音の戻る肉体が無くなる」

「・・・・・・・・」

「将門公には絶対に殺せないでしょう」


 シャン


 ― 呪詛剣 浄衆阿修羅 ― 


 矢を消して、数珠を剣に変えた。

 まっすぐに滝夜叉姫に突きつける。


「じゃあ、お前の魂だけ殺せば問題ないだろう。この剣は肉体に傷をつけず、魂を刈るよう調節できる。黄泉がえりなら、肉体も蘇るはずだが、念のためだ。琴音は必ず元に戻す」

「それに、将門公は優しい」

「どう脳内変換すればそうなるんだよ」


「優しいから私を殺せないのだ」

 滝夜叉姫が長い髪を後ろにやる。


「その黄金の矢を放てば、私は即死していただろう。私に元々肉はない。妖術は使えなくなり、ただの紙となる。将門公は優しすぎるのだ。なぜ、怨霊などと呼ばれなければいけないのか」

「そもそも、俺はタケルだ。過去など知らんって言ったはずだ」


 バチンッ


 剣を勢いよく振り下ろすと、狐の尾が剣を弾いた。

 滝夜叉姫の目が赤く光る。


「一族を殺され、恨んで何が悪いのだ。将門公は民のためを思い戦いに赴いた。今の時代になぜ・・・・」

「話が通じないやつだな。同じことしか言えないのかよ」


「わが恨みは根深いぞ」

「んなことわかってる」


 シュン・・・・


「は!?」

 月明かりを遮るようにして、津守景虎が降りてくる。

 妖刀がオレンジに光っていた。


「なんでこうも、次から次へと現れるんだよ」

 剣を構える。


「景虎」

「タケル! やっと見つけた!!」


 カン カン カン カン


 景虎が笑いながら剣を振り回していた。

 数珠を数えるように、攻撃をかわしていく。


「お前もしつこい奴だな。『侏儒の遊び』には参加してると思ったが・・・」

「当然だ。阿仁三タケル、お前をここで封じてやる! 怨霊を封じることこそが、滝夜叉姫の解放に繋がる!」

 景虎が嬉々として妖刀を振り回してくる。

 こいつの一撃は重い。また、霊力を高めたか。


「俺の妹は琴音だ。滝夜叉姫に執着するなら二人で話してくれ」

「お前がいるから滝夜叉姫は呪縛から逃れられない」


「だから・・・・」

「不動の力を以てお前を倒す!」

 景虎が飛び上がって斬りかかってくる。


「って、おい!」


 パアンッ


 剣が火花を散らす。

 霊力が泥のように重かった。こいつとはやりにくい。


「こんなチャンス二度とない。神々は眠った。九頭龍の姫もいない。今こそ決着を・・・」


   パシンッ


「まさか・・・・」

「将門公に近づくな。私が殺すぞ」


「!?」

 滝夜叉姫が2本の尻尾で景虎の攻撃を止める。

 景虎の顔色が変わっていった。


「た・・・滝夜叉姫・・・どうしてここに?」

「ふん、今更気づいたか」

 滝夜叉姫が瞼を重くする。


「私の前でよく将門公を侮辱したな。今の言葉、決して忘れぬ、許さぬぞ。津守景虎・・・・」

 尻尾をピンと立てていた。


「あ・・・・・・いや・・・・」

 景虎が地面を蹴って、下がっていく。足元がふらついていた。


 タン


『どうされましたか、かげと・・・』

 景虎の式神ラマンが景虎の横に並ぶ。


「・・・・・・・」

 ラマンが滝夜叉姫と景虎を見て、ため息をついていた。

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