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42 『侏儒の遊び』 ~はじまり②

 11月22日、部屋で『侏儒の遊び』の最終調整に入っていた。

 頬杖をついて、巻物を見つめる。

 文字が浮かび上がっていた。


―――――――――――――――――――

 阿仁三タケル 5pt

―――――――――――――――――――


「初期ポイントは5ポイントか。冷静になってみると、陰陽師に合わない要素だよな。俺の頭が固いのか?」

「そんなことないです。タケル様のお考えは最もです」

 言いながら、朱雀が正座して結界を張っていた。


「ほぉ、何やってるんだ?」

「家に感知型の結界を・・・って、どうして貴女が出てきてるのですか?」

「活動継続中だからな。式神とはいえ、消えるわけにはいかないだろう」

 しいなが腕を組んでふんぞり返っていた。


「タケル様、いいのですか?」

「こいつらを出しておいて使う霊力なんて微々たるものだしな。面倒だが、消えるほうが何かと厄介なんだよ」

 しいなとりことももは、日本武尊さんプロデュースの元、一気に人気を集めていた。

 俺も日本武尊さんから仕事をもらって、アルバイトをしている。

 お金のためにも、3人を出さないわけにはいかなかった。


「まぁ、戦闘に行くのは白虎、朱雀、青龍だ。その他の式神を出すなというルールはなかった。問題ないだろ」

「はぁ・・・数多くの式神から、タケル様に選ばれて嬉しいです」

 朱雀が頬に手を当ててにやにやしていた。


「我ら四神はタケル様との付き合いも長いですからね」

「玄武が文句言いそうだ。奴は癖が強い」

「ゲームとかルールとか、あまり考えなさそうですね」

 朱雀が結界を張り終えて、白虎に寄りかかっていた。


「玄武もそのうち出す。初期の3体で最後まで勝ち抜くわけじゃないからな。臨機応変にいくさ」

 巻物を置いて、数珠の玉一つ一つを布で磨く。


「ジョーカーって誰なんだろうな。ルールを増やせるだなんて、古くからの陰陽師の家系とかなのかもな。陰陽師を知り尽くしていないと、ルールを追加してもわからないだろうが」

「いや、そんなことはないな。今の世の中はゲームがある。この『侏儒の遊び』を存分に遊ぶやつもいるだろう」


 大渦津日神は、ジョーカーに選んだ人間に自信があるようだ。

 確信はない。穢れの血を持つ者の感だ。


 『侏儒の遊び』にとって、厄介な存在であることは間違いないな。



 とんとん


「タケルー」

 リヒメがノックして部屋に入ってくる。


「いよいよだね。何もいい夫婦の日の次の日じゃなくてもいいのにね」

 口をとがらせながら言う。


「準備はできてる?」

「大丈夫だよ。リヒメ、俺の家はバレてるから、いつここに誰が来るかわからない。本当に気を付けてくれよ」

「心配しないで。私は龍神なんだから。襲われたら返り討ちにするよ」

「確かにリヒメ様はいきなり強くなりましたもんね」

「ありがと」

 白虎が言うと、リヒメが嬉しそうに白虎を撫でた。


 リヒメは婚姻の儀を過ごしてから、強くなっていた。

 俺の霊力に呼応しているのかもな。



「もうすぐ0時だな」

 しいなが時計を見て呟く。

 少し緊張しているのが伝わってきた。


 ピン・・・


「結界は張り終わっています。ご安心ください」

 朱雀と白虎と青龍が戦闘態勢に入っていた。


「でも、真夜中の0時から来る奴なんているのか?」

「俺は有名だからな」

 

 ― 呪詛剣 浄衆阿修羅 ―


 数珠の一粒を剣に変える。

「とりあえず、来る奴もいるだろう。リヒメは絶対に手を出すなよ。ただ、もし単独でいるときに襲われたら、俺を呼べ」

「はーい。タケルを信じるから」 

 リヒメが髪を結びなおす。


「でも、私も強いから安心して。最近は、自分で邪神狩りもできるようになったし」

「そうだな」

「カウントダウンするぞ。10、9、8、・・・」 

 しいなが唱えていく。


「0」


 グアアァァァァァァアア


 ズン・・・・


 邪神か悪鬼の遠吠えのような声が聞こえた。

 窓の外を見ると、俺の家の周りを陰陽師が囲んでいた。

「わー、すごい」

「馬鹿だよな。ある程度、ポイントを稼いだほうが来たほうがいいだろうが」

 5人と、15体の式神か。

 5人全員、仮面のようなものを被っていて、顔は見えなかった。


 どこかの家系の陰陽師かもな。


 パリンッ


 中国の武将のような式神が、長い剣を振り下ろして結界を破っていた。

 見慣れない武将だ。


 奴だけは別みたいだな。まずは、弱いのから行くか。


「降りるぞ」

「はい」

 部屋の窓から飛び降りて、青龍の背に乗る。


 ザザザザザザーッ


 朱雀が赤い双剣を出して、くるくる回りながら式神を切り裂いていた。


「な!!! いきなり四神が出てきたか!?」


 ガッ


 白虎が若い鬼の姿をした式神に爪を振り下ろす。

 青龍から離れると、鋭い爪を式神に向ける。

 大きく息を吸い込み、口から氷を出していた。


「クソッ・・・四神がいるからって」

「違うだろ」

 仮面で顔を隠した青年が、一歩ずつ下がっていった。


「陰陽師は自分自身も強いものなんだよ。使役する式神よりもはるかにな!」


 カン カン カン カンッ


 剣で4人まとめて追い込んでいく。

 戦闘に慣れてないな。動きが鈍く、スローモーションに見えた。


 弱すぎる。

 大渦津神の選んだ陰陽師は、全員が素質を持っているわけじゃなさそうだ。


 シュンッ


「きゃっ」

「!?」

 剣、槍、チェーン、双剣、全ての武器が無くなる。

 霊力切れだ。


「うわっ」

 二人を踏みつぶし、右側の人間の首を掴む。

 左手で剣を突き付けた。


「降参しろ。これで終わりだ」

「こ、こ、こ、降参します」

 仮面をつけたまま、地面に頭をつけていた。


「俺も」

「わ、私も」

「・・・・お・・・・俺もここまで・・・で」

「じゃあいい。お前らは、もうこのゲームに関わるな。死にたくなければな」

 呪詛剣をしまって、数珠の形に戻す。


「っと、早く帰って寝てろ。もう0時だ」

 息をついて降りて、四人から離れる。

 その場に座り込んで、震える指でスマホで誰かと会話していた。


 ネットでグループを作っているのか。

 この5人が連携とれているわけじゃなかったから、そこまで親密な関係ではないのだろう。


 1か月あったが、そこまで調べなかったな。

 日本武尊さんの会社のアルバイトで忙しかった。

 しいなにでも頼めばよかったか。


 巻物を広げると、ポイントが追加されていた。


――――――――――――――――――

 阿仁三タケル +20pt 25pt

――――――――――――――――――


 まだまだだな。負けるわけにはいかない。

 

 グルルルルルルルル


「タケル様」

 白虎が唸りながら、こちらに駆け寄ってくる。


「あいつだけは、何か違います。あの少年の他の式神には強さを感じませんでした」

「そうですね。他の2体は難なく倒したのですが、あの武将強いです。気を付けてください」

 朱雀が双剣を握り締めながら言う。


「そうみたいだな」

 狐の仮面をつけた少年が、中国の武将と月を眺めていた。 

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