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18 怪しいグループ

「タケルくん! 動画見たよ! トレンド入り、人気急上昇ランキング入り、バズっててすごいね」

「すっかり有名人じゃん。天下一の白鳥とどこで知り合ったの?」

 クラスメイトが、目を輝かせて聞いてきた。


「通りすがりというか・・・・俺はあんまり出てないし。朱雀が目立っただけで・・・」

 引き気味に言う。


「結構出てたじゃん。ガチでいわくつきのホテルタイタン2に入るなんて、勇気あるよな」

「しかも鬼ごっこなんて、面白すぎて笑っちゃった。何か憑いてたりしてね」

「ねぇ、そういえばタケルってグループ入ってなかったな。入って入って」


「あー、ごめん。俺、金なくてスマホ古いからあまりアプリ入らなくて」

 中古の中古みたいなスマホを見せる。

 真ん中にいた男子生徒が、察したような表情をした。


「・・・なるほど」

「そういや、家、いろいろと大変だって言ってたもんな」

「でも、天下一の白鳥と仕事できるなんてすごいよ。有名人になったし、また動画出演依頼くるかもよ」


「有名人って・・・・」

 学校に行くと、俺の周りに人が集まってきていた。


 日曜日にアップされた天下一の白鳥の動画がバズったからだ。


 苦手なんだよな。こうゆう状況。

 金のためだから仕方ないが・・・。


「ねぇねぇ、朱雀さんとやっぱり知り合いなの?」

「彼女って何者なの?」

「赤い着物って普段から着てるの? あれだけ可愛ければ目立つよね?」


「朱雀は・・・そうだな、基本・・・」

 

「タケルはあの子と初対面だって。たまたま会っただけだから、あまりよく知らない子なんだって」

 リヒメが早口で話に入ってくる。


「リヒメちゃん?」

「ね、タケル」

 


 ゴロゴロ ゴロゴロゴロ


 ザアァァァァァァアァ


「うわっ! なんだ?」

「いきなり雨!?」

 突然、空が真っ暗になり、殴りつけるような雨が降り出した。

 慌てて窓を閉めたが、窓際で話していた生徒たちがずぶ濡れになっている。


「ヤバイ、これ。めちゃくちゃ濡れたし。雨雲なんかなかったのに」

「最近、天候おかしいよな」


 ゴロゴロ ゴロゴロ・・・

 

「動画とってSNSに上げよ。ほら、まだあそこで雷鳴ってる」

「あ、私もストーリーに上げたい」

 周りにいた生徒たちが一斉に掃けていった。



「リヒメ・・・」

「突然、雨が降ってきたの。私、何もしてないよ」

「・・・・・・・・」

「巳様来ないかなー」

 朱雀はちゃんと戻っていったのに、まだ機嫌が悪い。


 気を付けないとな。

 こうゆうのに付け込まれて、龍神って穢れたりする。




「マジかよ。『すりーすたー』のチケット外れたんだけど。お前は?」

「俺もだ。はぁ・・・しいなちゃんに会うため、バイトやってたんだけどな」

「どんだけ倍率高いんだよ。チケット譲渡に賭けてみるか」


 ズン・・・・


 急に重みを感じる。

 なんだ? この違和感・・・。


 リヒメも同時に反応していた。

 はっとして、俺と同じ方向を眺めている。


 クラスのリーダー的存在、奏斗と恵が話していた。

 成績優秀、運動神経抜群、確か家柄もそこそこよく、女子からも人気がある奴らだ。


 今、2人で流行っているのは、推し活だった。


 奏斗はクラスメイトの中でも、特に穢れが強い。

 詮索は趣味じゃないが、何かあるとは思っていた。

 リヒメが悪鬼を一掃したときに、一度は浄化されたはずだが・・・。


 そう簡単に、人間の穢れは祓えない。 

 特にスマホを常に持っている今の時代は、な。


「ねぇ、タケル、今のって」

「黒だろうな」 

 スマホで”すりーすたー”って打ってみる。


 結成は数か月前。

 学園の姫として活躍中の、謎めいたアイドルグループ?

 普段はVtuberとして活動し、ライブの時は素顔を見れるらしい。


 ライブに来た人には、優しく調教して解けない魔法をかけてあげる? 

 ファンの名前はウシのヒヅメ? なんだよ、ヒヅメって。


 軽く読むだけで、邪神の存在が匂う。

 しかも、まだ若いんだろうな。


「首突っ込むな。クラスに悪鬼が現れたら適当に祓えばいい。ただ働きすると・・・」

「直接聞いてみる!」

「ちょっと待てって」

 リヒメが立ち上がろうとした。


「え?」

「俺が行くから。転校生が話に割り込んでくると、変に警戒されるだろ」

「そ、そっか。ごめん。人間の世界は難しい・・・ちゃんと、ルールに従わないとね」

 適当な理由でリヒメを止めて、奏斗と恵のほうへ歩いていく。


 つか、なんで俺がこんなことを・・・。


「ねぇ、その『すりーすたー』って何?」

「ん? お前もVtuberとかに興味あるの?」

「まぁ・・・」


 そんな金ないって言いたいのを、ぐっと飲み込んだ。


「そうだ、タケルなら天下一の白鳥と繋がりあるだろ? チケット取れたりしないかな?」

「聞いてみるよ。少し耳にしたことがあってさ。どうゆうグループなの?」


「ほら、SNSのショート動画で振付が流行ってるだろ」


 スマホに3人のVtuberが映っていた。


 わかりやすい歌詞、覚えやすい振付で踊っているが、中にいるのは確実に邪神だ。

 ”星”の名の付く邪神も混ざっているはずだ。


 センターの子か?


「めちゃくちゃ可愛いよな」

「ガチで天使みたいだ。まさか自分がVtuberにはまると思わなかったよ」

「俺も俺も。奏斗にすすめられたけど、マジではまった」


「ふうん・・・・」

 これだけ目立っていて、他の神々に気づかれないのは、2次元の絵で姿を隠しているからだろう。

 

 ライブに来た者を信者として崇めさせる。

 自分たちに依存させて、鎖に繋がれたように離れられなくしているのか。


「ライブはどこでやるの?」

「武道館だよ」


「マジで? 武道館? って・・・まだ結成したばかりだろ?」

「今の時代、広まるのなんて一瞬だ。俺たちも読みが甘かったんだよ。ハコがデカいのにチケット取れないんだ」

「ダンス動画でバズったから一気に広まったんだよ」

「俺たち、古参なのにな」

 正直、地下アイドル的な存在かと思ったら・・・。


 邪神も本気で動いてるらしい。

 荒星こうせいが言い方に含みを持たせていたのはこのことか。


「・・・・・・・」

 リヒメのほうをちらっと見る。

 金が発生しないなら、無視したいところだけど・・・。


 今話していたことは、リヒメに筒抜けだろうな。

 盗聴器がなくても、九頭龍一族は空気振動に敏感で耳がいい。


「もしかして、転売とか多いんじゃないのか? 限定グッズ目当ての・・・」

「そうだ、転売っぽい奴のアカウント炙り出してやろう。徹底的に探せば、住所特定までできるかもしれない」

「はは、奏斗はえぐいことするな」

「転売する奴らが悪いんだろ」


 サアァァァァ


 空中に小さく浄化の文字を書いて、2人から穢れを取っていく。

 

「ん? 今・・・体が軽くなったような」

 恵が体を伸ばす。


「さっきのチケットのことだけど、天下一の白鳥のタケヒコさんあたりに、聞いてみるよ。あの人顔が広いんだ」

「あぁ・・・頼むよ」

 天下一の白鳥の中では唯一まともそうだからな。





「おかえり。やっぱり邪神だったね」

「そうだな。まぁ、邪神はありふれてるし、いちいち潰さなくても・・・」

「でも、あの2人は穢れてたよ」

 リヒメが凛とした表情で言う。


「私、行かなきゃ。倒してくる」

「そんな簡単な問題じゃない。もう、ファンがついている。もし、無理に下ろしたりしたら、ファンの穢れが悪鬼になり、新たな邪神を生み出す」

「でも・・・・九頭龍としては、見過ごせないよ」

 席について頬杖をつく。


「穢れはさらなる穢れを呼んでしまう。取り返しがつかなくなる前に・・・」

 リヒメが起こした嵐はいつの間にか収まって、晴れ間がのぞいていた。


「まずは、日本武尊さんたちに相談する。ライブチケットがないと、そもそも中に入れないし。おそらく今回の邪神はデカいから、絶対に一人で動くなよ」

「・・・うん、わかった」


「・・・・・・・・」

 あわよくば日本武尊さんたちのほうで、巻き取ってくれないかと思っていた。


 正直、タダで働きたくはない。


「穢れは絶対許さない」

 リヒメには悪いけど、邪神を倒しに行くとか言い出したら仮病を使うつもりでいた。

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