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17 バズる

 聖なる輝きであるか、穢れであるか。

 神であるか、邪神であるか。


 俺からすると、どちらも大差なく感じられた。

 まつろわぬ神は人がねじ曲げた歴史だ。

 

 ”星”の名を持つ邪神に会うと特に、神という存在がわからなくなる。

 アマツミカボシは姿を現さないが、どう思っているんだろうな。


「こ、こうゆう感じでいいのでしょうか?」

「そうそう。いいねぇ、朱雀は赤い着物がよく似合うから」

「ふふふ、ありがとうございます。ほめられると嬉しいです。タケル様、いかがでしょうか?」


「いいんじゃない?」

「はっ・・・タケル様に褒められてしまいました」

「あはは、可愛いね」

 朱雀が頬を赤くして照れていた。


 人間になりきって、崩れかけた階段に立っているところを、タケヒコが撮影している。


「んー、いいねぇ。伸びる絵だ」

「廃墟を歩く企画はどうなったんですか?」

「悪鬼をすべて倒してしまったんだから仕方ないだろ。あ、タケヒコ、向こうからも撮ってもらえる? 光の当たり具合がいいんだ」

「了解です」

 日本武尊がタケヒコに指示しながら、隣で腕を組んでいた。


「清々しい空気だ。久しぶりに戦ったよ。たまには体を動かすのもいいね」

「いつもネットでレスバするくらいですしね」

「ははっはは、8割炎上するんだよな」

 ホテルタイタン2は建物全体が浄化されていた。

 すべての窓から光が差し込み、砂埃がキラキラしている。


 神社に近い空気だな。

 神がいるから当然なんだけど・・・。


「それはそうなんですけど、どうして朱雀を?」

「廃墟で出会った美少女を撮影してみた。これはSNSでバズる」

「あ、そうですか・・・」


「こうゆうのはどうでしょうか?」

「いいね。雑誌の表紙みたいだ」

 ノリノリでポーズをとる朱雀を眺めていた。

 のせられやすい性格だ。


「朱雀の撮影が終わったら帰るんですか」

「うーん、せっかくここまで来たら、心霊企画はできなくても、何かはしていかなきゃいけないな」


「何か・・・・こんなところでできることなんて、焚火は危ないから炎上しますし・・・鬼ごっこかかくれんぼじゃないですか? でも、人数が4人しかいませんけど」


「それだ!!!」

「えっ」

 日本武尊の声に驚いてしまった。

 





「へぇ・・・この式神タケルが出したの」

「一応・・・」


「すげぇ」

「ハチル、そこにいたら見えないって」

「見えるよ。だってこんなにテレビが大きいんだもん」

 リヒメとハチルが大画面テレビの前にいた。

 新品、最新型のテレビだ。人がいるのを感知したりするらしい。


 天下一の白鳥のYoutubeを映して、みんなで眺めていた。

 リヒメ、ハチル、猿田彦さん、朱雀が横一列に並んでいる。


「テレビってこんな綺麗に映るのですね。この場にいるみたいです」

「ふむ、やっぱりテレビは大きくないとな」

「猿田彦さんからの結婚祝いだって。ありがとうございます」

「いやいや、いいよ。僕も見に来るしね」

 猿田彦さんがここでウズメさんを見るためにあるような気がしないでもない。

 なぜか、頻繁にいるしな。


「すごい! タケル、この動画急上昇ランキングに載ってる」

「なんでこんなのが載るんだよ」

「わっ、トレンドにも載ってるよ。えっと、黒い人間に追いかけられるメンバーが最高に面白いって。あと、タケルが妙に冷静なのも」


「タケル様はいつでも冷静ですよ」

「別に、わかってるよ」

 朱雀はリヒメと顔を合わせるまで帰らないってごねて、まだ傍にいた。

 俺の命令に背いたことなんてなかったのに。


「式神をここまで出して、全て操るとは。大変だっただろう」

「空気の入れ替えみたいなものです。式神たちもたまには外に出たいので、喜んでました」

「へぇ、式神がねぇ」

 猿田彦さんが俺を見て、画面を見つめていた。



『うわっ・・・ここにも、助けて、やまと・・・』

『俺らの友情もここまでだ。俺は行く!』


「ふふふふ、日本武尊さんたち、面白いね」

「確かに演技がうまいよな」

「あれは、本気でタケヒコを見捨てようとしてるんだよ。目を見ればわかる。ふむ、皆は騙せても、猿田彦は騙せない」

「えー」


「そんな堅苦しく見るものじゃないですって」

 息をついて、麦茶を飲む。


 結局は、俺が出した式神と日本武尊さんたちの廃墟を使った鬼ごっこになった。

 俺が出した式神は50体、全て、全身黒タイツの人間のようなものを描いた。

 それぞれに、悪鬼が宿っている。


 コメント欄を見る限り、なぜかこいつらがウケてる。

 全身黒タイツの式神について、謎が謎を呼び、推理が始まっていた。


 人はこうゆう不気味で人間と同じ動きをするものに、なぜか興味持つんだよな。


『うわぁぁぁぁ、こっちに逃げれば、って行き止まりだ。どうする? どうする? タケヒコの呪いか? いや、あいつは死んでない』


 日本武尊が自分で持ったカメラに向かって話していた。


 「あの黒タイツには誰が入ってるんだろう。動き方から推測するに、男だ」とか、

 「本当に人間じゃなかったりして」とか、

 「有名人かもよ」とか、

 「このまま顔出さなくても気になる」とか・・・コメント欄が滝のように流れていく。



『ひゃっ、飛べないと不便。あ・・・』

 画面が切り替わって、着物で逃げる朱雀が映った。


『・・・・・・・・』

 式神は明らかに、朱雀を追いかけたくないって滲み出ている。

 見えてるくせに、避けているのがバレバレだ。


 朱雀のいる場所を通る時だけ、反対側を見て走っていた。


「あ! 朱雀さん、逃げるの上手いですね」

「はい。人間の姿ですし、地面に足をつけるのは慣れないのですが・・・なぜか、うまくいきました。廃墟と相性が良かったのかもしれません」

「なるほど、そうゆうのあるんですね」 

 どう見てもおかしいだろうが。

 ハチルは、画面の情報を少しも疑うことなく信じ切っている。



「タケル様、見てください。私、追いかけられてますよ」

「知ってるって。あの式神、俺の配下にあるんだから」

「ふふ、翼がありながら、飛ばなかったのは、かなり人間に近づけたと思います。タケル様もそう思いますよね。ここからも私が活躍するのです」

 朱雀が目をキラキラさせながら、画面を指していた。


「タケルはちゃんとみんなのこと見てるよ。それに、日本武尊さんの動画は編集をやってる巫女さんがプロなのもあって演出が・・・・」

「私はタケル様と話しているので、大丈夫です」

 朱雀がツンとしながら言う。


「朱雀、喧嘩するなって」

「はい、タケル様。あ、ここから、振り返るところも可愛いって褒められたんです。ほら、コメント欄に私のことが書かれてます。私、Youtuberに向いてるのかもしれません」

「あまり浮かれるなよ」


「もちろんです。でも・・・・こうゆうの嬉しいのです」

 朱雀がにやける頬を叩いていた。



「今日の夕食は、タケルの嫌いなトマト入れちゃおうかな。そうゆう栄養も取らないといけないしね。タケルのためだから!」

「・・・・・・・」

 リヒメの機嫌が悪い。  


「タケル様、私は今回、大活躍だったと思うのです。日本武尊にも、また是非出てほしいって言われましたし。来てもいいですか?」

「要相談な。それより、これを見たらちゃんと戻れよ」

「わかってます。私は忠実な式神ですから、タケル様との約束は破りません」

 朱雀が着物の裾を直して正座する。

 何気なくスマホを眺めると、朱雀という言葉がトレンドランキング1位になっていた。


 『廃墟に現れた美少女』とタイトルで、ショート動画でバズったようだ。


「ふぅ・・・楽しかったなぁ」

 朱雀が画面を見ながら呟いた。


 武神の力が押し上げたのか、朱雀の霊力が一段階上がっている。

 朱雀はまだ気づいてないようだけどな。


「・・・・・」

「・・・・・」

 リヒメと目が合うと、何も言わずに逸らされた。


 リヒメでも怒るんだな。

 朱雀には悪いが、しばらく適当な理由をつけて出さないでおくか。

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