表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/57

12 Youtuber天下一の白鳥

「はぁ!? 心霊企画?」

「そうだ。最近、ネタが尽きてきてな。浮き輪なしで漂流してみたとか、身一つで山を登る方法とかは、過激過ぎてBANされる可能性もある。ほかの3人のメンバー、エタケルとオトタケルは燃え尽き症候群になってるし、タケヒコは車出してくれるっていうけど・・・」


「つか、エタケルとオトタケルってクマソタケルだろ? 討伐したのは日本武尊って・・・・」

「1900年も前の話だ。今は自由に生きてる」

「・・・そうっすか」

 確かに俺も前世なんか忘れて、自由にやってるほうか。


「日本武尊さん、お茶飲みます?」

「あぁ、ありがとう」

 リヒメが緑茶を出していた。


「あの・・・今日、休日なんですけどいつまでいるんですか?」

「休日だから来たんだよ。君たち、学校に通ってるって聞いてるからね」

「はい! 私、高校に通い始めました」


「・・・・・・・・」

 リヒメが呼ぶからか、当たり前のように家に神々が入るようになってきてしまった。

 九頭龍の兄たちはいなくなったけど、なぜか猿田彦さんだけテレビの前にいる。

 まだ、ウズメさん見てるし、家に帰るぞぶりもない・・・。


 喧嘩でもしてるのか? 


「陰陽師の少年と、心霊スポットを巡るって言ったら、なんか再生数伸びそうな気がする・・・・」

「俺、自分が陰陽師だって明かしたくないんですけど」

「わかった。霊の見える少年Aでどうだ?」

「そうゆう意味じゃなくて」

 スマホを持って、畳の上に寝転がる。


「俺はそうゆう目立つこと苦手なんです・・・すみません」

「私はYoutuberってすごく興味があったんです。SNSとか、九頭龍一族みんな苦手で、でも、そうゆうので宣伝しなきゃって気持ちもあって」


「わかるよわかるよ。今は神々もSNSを駆使する時代だ」

「はい!」

「ショート動画とかもいいんだ。バズったら一気に有名になれる」

「ふむふむ。ショート動画」

 リヒメがのりのりで頷いていた。

 

 SNSなんて、悪鬼の製造機みたいなものだろうが。

 わざわざ、そんな面倒なものに首突っ込むかよ。


「タケルくんは・・・」

「あー、俺、パスします。昨日の疲れもあるので、体もだるくて」

 具合悪いふりをした。


「なるほど、そうだよな。新宿の邪神を倒したばかりだったもんな。残念だよ」

「日本武尊さん、その袋なんですか?」

「あぁ、企画の出演料だよ。人間のエネルギーの相場がわからないから一応、10万持ってきたんだが・・・んー足りなかったら、また持ってこようと思ってたけど」


「是非やらせてください! その企画」

 飛び上がって、座り直す。


「え・・・・さっきまで疲れてるって」

「いや、俺、実はそんなに疲れてないっていうか、ちょっと食べすぎちゃっただけみたいなんで。天下一の白鳥よく見てて、本当はずっと企画参加してみたかったんですよね。登山企画とか面白かったです。やっぱ最後に勝つのは友情ですよね」

「そうかそうか」

 白い袋に、1万円札がちらちら見えた。束になってる。


 リヒメが来てから、金の流れがいい。

 龍神の加護ってやつなのだろうか。


「よかった。じゃあ、私も準備しなきゃ!」

「リヒメはマジで疲れてるだろ?」

「そ、そんなことないって。私も行けるよ。大丈夫」


「俺にごまかしは通用しない」

 ポケットから九頭龍の水晶を出す。

 親指くらいしかない、小さな水晶だが濁りかけていた。


「あ・・・・」

「リヒメの浄化は済んでる。この濁りは体力的な疲れだ。一日休んでろ。今日は学校も休みだからな」

「でも、龍神と巫女は一緒にって兄さんが・・・」

「その体力で悪鬼に会えば、隙を突かれてもおかしくない。いくら九頭龍の末の妹でも、負ける時は負けるぞ」

 強い口調で言うと、リヒメが口をつぐんだ。


「・・・・・・・・」

 紫の布に包んで、ポケットに入れる。

 

「ここにいれば、多少気を抜いても安全だ。猿田彦さんもいるし。まぁ・・・いつまでいるのかわからないけど・・・リヒメがもとに戻るまではいてくれるだろ」

 ウズメさんの映ってる部分を何回も巻き戻していた。

 聞いていないようで、聞いていると思うことにしよう。


「・・・・わかった。待ってる。早く帰ってきてね」

「それは企画次第だけどな」

「うん」

 リヒメがすとんと座った。


 後で式神に見張らせておくか。

 何もないと思うけど、一応な。


「タケルくん、よろしくね。あ、君もタケルって名前だったね。俺と同じだなんて、いい名前を持ったな。ははははは」

「っと・・・・」

 日本武尊さんが肩をたたいてきた。


 熱いな。

 ついていけるかわからないけど、とりあえず目先の金のためだ。



「それで、心霊企画って何するんですか?」

「廃墟探検だ。ここから高速で3時間走ったところにある、ホテルタイタン2というところだ。心霊スポットで有名だけど、もともと村があった場所に、建てた建物だから穢れが多いだけなんだけどな」


「えっ、ホテルタイタン2って・・・許可取ってるんですか?」

「その辺はタケヒコがうまくやってくれてる」

 日本武尊さんが白い歯を見せてくる。


「・・・ちなみに、日本武尊さんの巫女はどこにいるんですか?」

「もちろん、きちんと神棚で毎日祈りを捧げて浄化してもらってるぞ。あとは、動画編集したりスケジュール管理してもらってるんだ。今日はオフィスで打ち合わせって言ってたな」

「そうですか」

 神によって違うけど、この人についていく巫女は大変だな。

 かなりのスキルが求められているようだ。


 ブオンッ


 窓から車の音がした。

「タケヒコが来たようだ。さぁ、行こう」

「あ、ちょっ・・・。リヒメ、行ってくるから」

「はーい」

 リヒメがソファーに寄りかかって、両手を振っていた。


「いってらっしゃい」

 少し寂しそうに微笑んだ。




「やぁ!」

 Youtuberの天下一の白鳥の一人のタケヒコさんが車から出てきた。

 車名はわからないが、芸能人とかが乗ってる車だった。


「高そうな車・・・ですね? 目立ちません?」

「Youtuberは目立ってなんぼだよ」

 タケヒコさんが焼けた肌に、金色のネックレスをしていた。

  

 なんで今まで普通に見てて、神だって気づかなかったのか理解できた気がする。

 あまりに変わり過ぎて、誰だかわからないんだ。


「こんにちは。君がタケルくん。陰陽師なんだってね」

「はい・・・一応」

「すごいなぁ。乗って乗って、巫女が掃除してくれたから。新宿の邪神を倒しちゃうなんて、びっくりしたよ。あ、ここにカメラ設置してるけど、撮ってないから気にしないで」

 Youtuberって感じだな。


 車内は輝くように磨かれていた。

 ベンツっていうか、白馬に乗ってるような気分だ。


「いやぁ、YoutuberやってるとあらゆるSNSで炎上しまくって大変なんだ」

「ベンツが羨ましいなら買えばいいのにな。人間たちは不思議だ」

「嫉妬ですよね。指摘すると炎上しちゃいますし」

「でも、これでも10代には大人気なんだ。純粋な子供は見る目が違うね」


「・・・・・・・」

 たぶん、買えねぇんだよって言葉を飲み込んだ。

 天下一の白鳥は人気Youtuberだけど、人間の感覚と離れすぎてたまに問題発言をしたりする。


「ん? ヤマトさん、どうしました?」

「前髪がうまくいかないなって思って」

 日本武尊さんが車のバックミラーで髪を整えていた。


「せっかくだ。ちょっとSNSにアップする写真撮るから。タケヒコ、撮影頼めるか?」

「了解です」


 パシャ パシャ


 タケヒコさんがハンドルから手を放して、日本武尊さんの写真を撮っていた。

 すごい構図だな。


「あ、いいですね」

「ん、こっちの角度から撮った方が顔が小さく見えるんじゃないか?」

「いやいや、こっちだと光の当たり具合が・・・こうゆうふうになっちゃいますよ」

「なるほど」


 背もたれに寄りかかって、紙と筆を出す。

 長くなりそうだから、式神でも整理してるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ