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排世記



あるところに、科学文明がとてもとても進んだ国がありました。


空には車がビュンビュン走っており、輝く超高層ビルが立ち並んでいました。


人が食べるものは全て機械が作ってくれ、人々は働くことなく毎日をのんびり暮らしておりました。


その国では、無限に作り出される資源により、枯渇すると言う問題は無くなっていたのですが、逆に溢れる資源を処理し切ることができずに、とても困っていました。


そんなある日、とあるいきものが空からやってきました。


そのいきものは現代人とはかけ離れた見た目をしており、その姿に人々は怯え、恐れました。


そのいきものは直ちに警察に連れて行かれ、偉い人たちがいる所に連れていかれました。



「君はどこからきたんだい?」


偉い人の一人がいいました。


「空からです。僕は空から来ました。」


いきものはそう答えました。


「空からどうやってここに来たんだい?」


また別の偉い人が問いました。


「先生が、僕のことを摘んで、この世界に放り投げてくれたんです。」



いきものは正直にそう答えました。


「ふうん。じゃあその先生は君に何か言ったのかい?」


最初にいきものに話しかけた偉い人がもう一度問いました。


「君の持つ力でここの国の人を助けてあげなさい。と、言われました。」


いきものは先生に言われた言葉を一言一句違えずに答えました。


「君の持つ力…それを見せてもらえるかい?」


今度は、また別のお医者さんのような人がそういいました。


「わかりました。」


そう言って、いきものはそばにあった椅子やら机やらをむしゃむしゃ食べ始めました。


「うわぁ」


偉い人の一人が腰を抜かしたような声を出しました。



むしゃむしゃ、もぐもぐ、ばりばり、ごっくん。



いきものは、その部屋にあった物をほとんど食べ尽くしてしまいました。


「僕は、どんな物でも食べることができるんです。」


いきものは、少し誇らしげにそういいました。


「すばらしい!我々は君のような存在をずっと待ってたんだ!」


偉い人の一人が立ち上がっていきものを褒めました。


「ふふん。ありがとうございます。」


いきものは、鼻高々に感謝の気持ちを伝えました。


「じゃあ、早速こっちに来てもらえるかな。」


偉い人の後ろにいた、強そうな人が、生き物の手を引っ張って、とある部屋に連れて行ってくれました。


そこは簡素な白い部屋で、いきものが座れるような小さな椅子と、小さなテーブルがありました。


「君には今日からここで、毎日ご飯を食べてもらう。」


さっきいきものに質問したお医者さんのような人がいきものにそういいました。


「ご飯ですか?わあうれしい。」


いきものは顔を輝かせましたが、すぐに曇った表情になって不安げに質問しました。


「でも…大丈夫ですか?僕、実はとても食いしん坊で、先生のところにいた時も椅子とか食べちゃっていつも怒られてたんです。」


その不安げな言葉をかきけすようにお医者さんのような人が笑って答えました。


「ははは。大丈夫さ。なんせこの国には食べ物がいーっぱいあるからね。」


「そうなんですか?わぁ嬉しいな。」


お医者さんの言葉に、いきものはまた顔を輝かせました。





そうして、『いきものに資源を食べさせる計画』は、すぐに始まりました。


毎日、いきものの住むところに、余った資源が持って行かれました。


植物や動物、土や石や鉄、石炭や石油、ウランや核化合物、果てはエメラルドやダイヤモンドなんてものもいきもののところに持って行かれました。


毎日何台、何十台もの十トントラックや輸送機がいきもののいるところを往復し、資源を置いていきました。


それらは数えるととんでもない量でしたが、いきものは全く意に返さず、



むしゃむしゃ、もぐもぐ、ばりばり、ごっくん。



とペロリと平らげてしまいました。


…ですが、ある日、そのいきものに異変が起こりました。


「うっぷ。も、もう食べられない…。」


何と、いきもののお腹がいっぱいになってしまったのです。


その事はすぐ偉い人に伝えられました。


偉い人は、いきもののところに向かいました。


「あ、偉い人…。」


「大丈夫かい君。」


「え、ええ大丈…うっぷ。やっぱり大丈夫じゃないかも。」


「お腹がいっぱいになったと聞いたが。」


「そうなんです。お腹が…うっぷ…いっぱいで。」


「でも困るよ。この国のゴミ事情は全部君にかかってるんだから。君は何でも全部食べられるんじゃなかったのかい?」


「そのはずだったんですけど…うっぷ…思ったよりもたくさんご飯があって…うっぷ…食べきれないんです…うっぷ。」


「…な、なんとかできないのかい?」


「今まで…うっぷ…こんな事なかった物で…うっぷ…おぇ。戻しそう。」


「わ…わかった。それじゃあ一旦君への資源の供給はストップするとしよう。また食べられそうになったら言ってくれ。」


「すみません…そうしてくれると嬉しいです…。」


偉い人は、そう言ってまたどこかに行ってしまいました。


お腹がいっぱいで、体の中がぐるぐるします。

中にあるたくさんの資源が寄り集まって固まって、とんでもないエネルギーになってるみたいです。





「それは本当かね!」


いきものが居る場所とはまた別の研究室のようなところで、偉い人とお医者さんが会話をしていました。


「…はい。どうやらあのいきものの中の物質が化学反応を起こして、とんでもないエネルギーを作っているみたいで…これ以上少しでも食べさせたらドカンと爆発してしまいます。」


深刻な表情でお医者さんは答えます。


「何と…ではどうすればいいのかね。」


こちらもまた深刻な表情で偉い人が問います。


「あのいきものを封印してしまうしか…。」


「殺してしまえばいいのではないかね。」


「そうしたいのは山々なんですが…あのエネルギーを抑えてるのもまたあのいきものでして…。」


「何と…あの先生とやら、とんでもない化け物を地球に送ってきたと言うわけだな。」


「抗議したいですね。」


「全くだ。」





そして今度は、『化け物封印計画』が始まりました。


「うぷ…どこに行くんです?」


「いいからついてこい。」


いきものの手を引っ張るのは最初にもここにいきものを運んだ強そうな人です。


少々強引に引っ張られる手に少し痛みを覚えながらいきものは大きな廊下を連れて行かれました。


そうして連れてこられたのは、今まで暮らしてた簡素な白い部屋とは対照的な、ゴテゴテとたくさんの機械がくくりつけられたメタリックな部屋でした。


たくさんの管が周りから伸びていて、その部屋の真ん中にはちょうどいきものが入れそうなカプセルみたいなベッドがありました。


周りの管は、全部あれに繋がっているみたいです。


何かSF映画みたいでかっこいいなと、いきものは思いました。


「今日から君にはここで生きてもらう。」


「あ、お医者さん。」


いきものがこの部屋の見た目に感心していると、背後からお医者さんが現れて声をかけてきました。


「ここで…今日からですか?」


「ああ。」


いきものの質問にお医者さんは簡潔に答えます。


「今からあそこのベッドに寝てもらう。取り敢えず君はしばらく資源を食べることができないみたいだからね。お腹が減るまでちょっと寝ててもらうだけさ。」


「なるほど。そのためのベッドなんですね。」


いきものは、もうご飯が食べられない自分にこんな優しくしてくれるなんてお医者さんは優しいと思いました。



「じゃぁ、おやすみなさーい。」


「ああ。おやすみ。」



そうしていきものは、言われた通りにベッドの中に入りました。


コレは寝返りが打ちにくいぞ。と、いきものが思っていると、ウイーンと音がして周りのカプセルが閉じて、何やら甘い匂いがし、いきものの意識は消えてなくなりました。



「実験は成功しました。」


「よくやった。」


いきものの体が完全に動かなくなったことを確認して、お医者さんと偉い人は笑い合いました。


「あの装置には半永久的に麻酔薬を投与する機械がついています。取り敢えず、あの腹のエネルギーが減るまであの化け物が起きる事はないでしょう。」


「流石だ。」


「お褒めに預かり、恐縮です。」


そして、彼らはその部屋から出ていきました。


無人となったその部屋では、麻酔を投与する装置が立てるカタカタという音だけが鳴っていました。





いきものがいなくなったことで、国のゴミ問題はより深刻になりました。


これまでいきものに頼って処理していた資源が処理しきれなくなっており、ゴミはあらゆるところで溢れかえりました。


「うあああああ!神よ!先生とやら!またあの化け物をおくってくれー!」


偉い人は叫びましたが、もう空からいきものが降ってくる事はありませんでした。


人類の文明は、溢れかえる大量のゴミによって、ほろびました。




何年もの年月が経ちました。


かつての栄華を誇った超高層ビルは、時と共に風化し、今やただの砂の塊になってしまいました。


さらに頑丈に造られたはずのいきものを閉じ込めていた装置もずいぶん昔に動作をやめ、いきもの体は露わになっていました。


そんな時です。


強い突風が吹き、周りの砂が舞い上がりました。


その砂の粒子の一つが、いきものの口の中に入り込み、食道を通ってはちきれんばかりのエネルギーを溜めた胃袋の中に入り込みました。


「おえええええええええええええええ!」


お腹がいっぱいになったところにさらに食べ物を入れられたいきものの胃袋はついに限界に達し、いきものは思わず嘔吐しました。


「おええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」


いきものの口からは、かつての文明が適当に放り込んだ大量の資源が溢れて出てきました。



「おええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」


植物や動物、土や石や鉄、石炭や石油、ウランや核化合物、果てはエメラルドやダイヤモンドなんてものが口から放出され、それらが世界に満ちていきました。


トラックを何往復させても収まりそうにないたくさんの資源が、枯れた地球に潤っていきました。


「おえええぇぇ…ごほごほ。」


六日ほど吐き続け、一通り吐き出してスッキリしたいきものが再び立ち上がった時、地球は緑豊かな楽園になっていました。


「わぁ。驚いたなぁ。こんな世界だったかしら。」


いきものは、キョロキョロと興味深げに辺りを見回します。


「…あれ?そこにいるのはアダムじゃない?」


そんな時です、何やら聞き覚えのある声がアダムの後ろから聞こえてきました。


「その声…イブ?」


振り返ると、アダムと姿形の似た、黄色の髪に可愛らしい顔、すらっとした2本足に純白の2本の腕を持ったイブが立っていました。


「久しぶりだなぁイブ。今までどこにいたのさ。」


「あんたのお腹の中よ。アダムったら先生から出された食事と一緒に私まで食べちゃうんだから。」


「ありゃりゃ。そうだっけ?」


「そうよ!」


イブがプリプリ怒りながら言うのを、アダムが笑いながら答えます。



そんな時です。


ぐう〜


と、アダムのお腹が鳴りました。


「イブ、お腹減ったー。」


「またなの?んもうしょうがないわね。あそこに美味しい木の実がなってるから一緒に食べましょう。」


「ほんと?やったー。」


イブは、呆れた顔をしながらアダムの手を引っ張っていきました。


アダムは、嬉しそうにそれについていきました。


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