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魔王様、女体化したってマジですか?  作者: ゼロ
新しい日常編
5/5

魔王様、一緒に寝るんですか?

 とりあえず、セレスと交代で俺も風呂に入った。


 鼻血のせいで頭がまだボーっとするけど、浴室の戸を開けたらさっきのことを思い出し、また頭に血が昇りそうになって激しく横に振る。


「はあぁ~、刺激強すぎだっつの。全く……」


 湯舟に浸かりながらも、風呂場に居る時は終始変な感覚に襲われた。


 だって、そりゃ……元が男で魔王とはいえ、あんな金髪巨乳美少女がうちの風呂に入ってて、俺も同じのに入ってるってことはぁ……。


 ダメだ、長居できねぇ‼


 早々に髪と身体を洗って入浴を終え、着替えてリビングに戻れば、セレスはまだテレビに釘付けになっていた。


「この世界の人間は、本当にいろんな物を持っているのだなぁ…。細かいちりを吸い込むブラックホールだったり、その場の光景を切り取る時間の魔法道具……。俺様の世界に持ち帰りたいものだ」


 見ていたのはテレビショッピングだったようで、こいつが言っているのは、どうやら掃除機とカメラらしい。


 ブラックホールと時間の魔法道具って……言い方が一々大袈裟(おおげさ)なんだよな。


 その時の座り方が女の子座りであり、パンツは丸見えだし、前屈まえかがみだったために、また胸が強調されていて目のやり場に困る……。


 そして、俺が上がったのに気づいたのか、そのままの体制で振り返った。


「おー、上がったか、マサト。貴様は知っているか?この世界の文明の利器りきは、俺様の予想もできんものだぞ」


 目を輝かせながら、興味津々(きょうみしんしん)な態度でテレビを見ているセレスから、1つの疑問が浮かぶ。


「異世界で魔法が使えるなら、こっちの世界の家電なんて目じゃねぇだろ。魔法で何でもできるんだろ?」


「何を言っている?魔法だって、そんなに万能じゃない。その者によってはできることも限られてくるし、使えるようには一々練習しなければならんし、魔力を消費したら疲れるしな。それを考えれば、動作1つで魔力も使わずに動く道具は画期的かっきてきだ」


「はへぇ~。何かやっぱり、イメージと現実って違うんだな」


 異世界の生々(なまなま)しい現実を聞かされ、一気に剣と魔法の世界への夢が崩れていく。


 外を見れば、もう月が出ていてくらだ。


「11時って……もう、こんな時間かよ。流石に今日は疲れたぜ。そろそろ、寝る……」


 時間を見てどっと疲れが押し寄せてきては、眠気を感じていた。


 だけど、ここで1つの重大な問題に気づいた。


 セレスを見ると、あいつは「ん?」と喉を鳴らして首をかしげる。


「あーっと、俺はもう寝るからな。客用の布団ふとん出しとくから、そっちで寝ろよ」


「何を言っている?そんな面倒なことをせずとも、一緒に寝れば良いではないか」


「んなっ…‼アホか、おまえ!?女と一緒に寝るなんて―――」


「あぁ?誰が女だ、この野郎?」


 笑顔で圧をかけられ、思わず言葉を失った。


 結局、その魔王独特のプレッシャーに圧されてしまい、仕方なく一緒にベッドで寝ることになった。


 いや、本当に!仕方なくだから‼



 ーーーーー



 時間は午後11時30分。


 部屋は間接照明に切り替えており、テレビも消して静かな空間になっている。


 さて、どうしたものか……。


 結果、寝れねぇ。


 隣では、セレスが可愛い寝息を立てて入眠している。


 背中を向けてはいるけど、女が隣で寝ているってだけで心臓の鼓動が速くなる。


「うぅぅ…む」


 そして、あいつが寝返りをうてば、後ろからムニュっと柔らかい感触が背中に伝わった。


 これって、絶対…‼‼‼


 つか、無防備過ぎんだよ、こいつ‼


 自分の理性を保つために、前に移動して離れようとした瞬間、細い腕と生足をからめられた。


「んむぅぅ……逃げるなぁ…」


 寝言なのか、起きていて言っているのかはわからない。


 だけど、後ろから抱きしめられている状態になり、余計に心の中で獣が暴れようとする。


 耳元でそんなことを色っぽい声で呟かれただけで、身体が反応しそうになるのを耐える。


 こぉいぃつぅ~‼


 身体を捻じり、起こして文句を言おうとするが、その幸せそうな寝顔が目に飛び込んできた瞬間に言葉を失った。


「なっ…‼」


 何でそんな可愛い寝顔してんだよ…‼魔王のくせにぃ…こんちくしょー‼


 そこで戸惑いを覚えている間に、若干身体が離れたことで違和感を覚えたのか、再度両手を回され、身体を密着させられる。


 今度は胴体に大きな胸部が押し付けられ、顔が近い…‼


 寝息がかかり、こっちは呼吸をするだけで甘いにおいがする。


 シャンプーは同じものを使ってるのに、女子から香るだけでなんでこんなに別物に感じるんだ…!?


 甘い匂いとずっと抱き枕扱いされたことで理性を抑えることに必死であり、結局その日は寝付くことができなかった。



 ーーーーー



 窓から差し込む光が目蓋まぶたに当たり、目が覚める。


 寝れた感覚は無く、起きても疲れが残っていた。


 主に原因は、あの無防備エロのアホ魔王のせいだ。


 重たい身体を両手で支えつつ起きれば、テレビの音が聞こえる。


「起きたか、マサト。全く、おまえは1度寝ると中々起きん奴だなぁ」


 セレスは機能と同じ格好のまま、テレビゲームをしていた。


「ふあぁ~。逆におまえは早起きだな、おい。今、何時―――だ!?」


 目覚まし時計を見れば、時間は8時を回っていた。


 朝礼まで、残り30分!?


「お、おまえ、何で起こしてくれなかったんだよ!?つか、アラームセットしてただろ!?」


「あ、あらーむ?また、訳の分からんことを……。その時をきざむ道具が急にうるさくなったが、スイッチを押したらすぐに止まったぞ?」


「うるさくしてんのは、起きるためなの‼つか、学校行かねぇと!遅刻すんだろうが‼」


「学校…?それなら、昨日行ったではないか」


「学校はほぼ毎日行かなきゃいけねぇんだよ、アホ‼」


「はっ…ええぇー!?」


 セレスも理解していなかったようで、俺たちはあわてて準備をしつつ、家を出て学校に走った。



 ーーーーー



 全力疾走した結果、何とか朝礼前に間に合った。


 同時に2人で間に合ったことで、教室中からの視線を浴びる。


 うわぁ~、気まずっ。


 先生も到着し、朝礼が始まりそうになる。


 しかし、机に着けば、チャラそうな男が口笛を鳴らしてからかってきた。


「何だよ、加藤。もう転校生に手を出したのか?陰キャのくせに、やることはやってんだなぁ~」


「そ、そんなんじゃない、よ……」


 確か、名前は佐伯宗さえき しゅう


 面倒な奴に、クラスメイトの前で大々的に声をかけられる。


「ハハッ、そんなこと、そいつにできるわけないじゃ~ん。しゅうったら意地悪~。セレスさんも、こんな奴に触られるとかありえないよねぇ~?」


 佐伯の彼女が、便乗して盛り上げようとする。


 しかし、セレスの次の一言が空気をぶち壊した。


「?確かに、俺様はマサトに触られたぞ?胸をガッとな」


 平然とした顔で言っているが、その瞬間に教室中が凍り付いた。


 な、何言ってんだよ、このアホォー‼‼‼


「い、いや、あれは事故だから‼別に意図的いとてきに触ったわけじゃ…‼つか、元はと言えば、こいつが怒って迫ってきたからだし…‼」


 やっちまった、言い訳がましい言い方をしてしまった。


 冷たい目を、主に女子から向けられる。


「うわぁ~、女の子のせいにしてる。サイテー」


「これだから、何考えてるかわからない陰キャって嫌なのよねぇ~」


「セレスさん、カワイソー」


 非難の声を浴びながら、何も言い返すことができない。


 当然だ、こんなのどう考えたって、悪いのは俺だって空気が流れてる。


「ちょ、ちょっと、みなさん!落ち着いてぇ~」


 担任は場をおさめようとするけど、アワアワと動揺していて声が届いていない。


「そんな奴やめてさぁ~。俺と後で遊ぼうよ、セレスちゃ~ん?きっと、その陰キャよりも楽しいぜ~?」


 佐伯がセレス……いや、あいつの胸を見て、いやらしい目を向けている。


 こいつの言う遊びが、ただのそれじゃ終わらないことは知っている。


 この男……こいつの気も知らねぇで…‼


「さ、佐伯、セレスはおまえの想ってるような奴じゃ―――‼」


 セレスをかばうつもりで声をあげようとするが、その前に隣の机がドンっと強く叩かれ、ドスの効いた声が教室中に響いた。


「黙れ」


 それは決して大声で言ったわけじゃなかった。


 だけど、その命令は耳だけでなく、身体に響いては俺への非難の声が止まる。


「マサトは俺様によくしてくれた存在だ、恩義がある。そんなこいつを侮辱ぶじょくする者が居るなら、俺様が許さん…‼」


 ギロっと教室全体を一睨みすれば、佐伯を含めた陽キャ集団がビクッと怯えながら「ひぃ‼」と震えた声を出した。


 そして、その威圧的な態度を解いた後、セレスは俺に向き直っては指をさしてくる。


「大体、おまえがビクビクしているから、このような愚民ぐみんどもを調子に乗らせるのだ、バカ者‼おまえは悪くないのだから、堂々としていれば良いのだ‼」


 俺に対しては、昨日と同じような感じで怒ってくるセレス。


「す、すんません……」


 俺も思わず謝罪してしまい、言いたいことを言ってスッキリしたのか、セレスは腕を組んで担任に目を向ける。


「先生とやら、俺様の話は終わりだ。朝礼を始めてくれ」


「は、はいぃ‼」


 魔王に促され、朝礼がやっと始まった。


 結果として、俺はこの魔王様の威厳いげんに救われたようだ。


 先生が話している中、彼女の方を見て小声で伝える。


「助けてくれてありがとな、魔王様」


 礼を言われると、魔王は目を見開いては耳まで顔を真っ赤にして顔を逸らした。


「う、うるさいっ……この愚民ぐみんが」


 そういうセレスの暴言からは、怒りは感じなかった。

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