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ヘル編8

突如、夜空に巨大な紫の球体が出現した。球体は徐々に移動し、昼にヤロヴィッツ Jarowitz の都上空で静止した。球体の下方部にエネルギーが集まった。エネルギーは下にあるヤロヴィッツに向けて発射された。主砲の威力はすさまじかった。ヤロヴィッツは住民もろとも、一撃で壊滅した。生存者はいなかった。

これが魔導要塞プルトンである。

「なんだ、あれは!? あれが魔導要塞プルトンなのか!? 一撃で一つの都市を壊滅させただと!?」

セリオンは魔導要塞プルトンの威力に呆然自失した。

「すさまじい超兵器を、敵は持ち出してきたね。もっとも、君が敵をあれほど追い詰めなければ、敵もあんなものを持ち出したりはしなかっただろうけど」

「スラオシャ!」

「やあ、セリオン。あれの狙いはヤロヴィッツじゃない。本当の狙いはブレスラウだ。あれはゆっくりとブレスラウに向かって移動している」

「くっ!? あんなものをどうやって止めたらいいんだ! このまま手をこまねいてただ見ていろっていうのか!?」

「セリオン、あせる必要はない。どんなものにも弱点はある。それはあの超兵器も例外じゃない」

スラオシャの青い瞳とメガネが光った。

「何を、どうすればいいんだ?」

「あの球体型超兵器の核をねらえばいい。中枢部にある核を叩き壊せば一撃でプルトンを沈められるよ」

「そういうことか。わかった。来い! バハムート!」

セリオンの前に、魔法陣が現れた。その中から一匹の龍が出現した。蒼龍バハムートである。

セリオンはバハムートの肩に乗った。

「行け! プルトンのもとへ!」

バハムートはセリオンの命令を受けると、翼をはばたかせて飛翔した。




セリオンとバハムートはプルトン内部に侵入した。セリオンはバハムートの肩から床に着地した。

「じゃあな、バハムート。帰りにまた会おう!」

セリオンはバハムートと別れてプルトンの内部を進んだ。床は一本道で、所々階段が設けられていた。

セリオンは走った。時間的余裕などなかったからだ。すると、先に進んだところに半円形の門が現れた。

「これは、何だ?」

セリオンは門の表面に触れてみた。そうすると、門の表面にさざ波が走った。

「!? 吸い込まれる!?」

セリオンは門の中に吸い込まれた。気づくと、セリオンは上のフロアにいた。

「ワープしたのか」

次のフロアでは道がいくつも分岐していた。

「道が分岐しているのか…… どちらが正しい道なのか、分からないな……」

セリオンはポケットから「アリアドネの糸」を取り出した。

「これもスラオシャが用意したものだが、つくづく準備がいいな」

セリオンはアリアドネの糸を使った。すると、糸が伸びて正しい経路をたどり始めた。

「よし、行くか!」

セリオンは道に迷うことなく正しい道を進んだ。再び門が現れた。セリオンは門に触れた。セリオンは吸い込まれ、上層のフロアに移動した。セリオンはアリアドネの糸に導かれ、プルトン内部を移動した。そうすると、広場のように開けた場所に出た。

「お待ちしておりましたヨ、セリオン殿!」

聞き覚えのある声がした。

「おまえは…… リゴール!」

「わたくしのことを覚えておいてくれるとは、うれしいですヨ! 再会を楽しみにしておりましタ!」

「リゴール! アイーダはどこだ? アイーダをどこにさらった?」

リゴールはニヤリと笑った。

「イーヒヒヒヒヒ! 巫女アイーダは確かに預かっておりますとモ! ですが、ただ今どこにいるのかはわたくしにも分かりませんねエ…… すべてはゼノビア様の英知がご存知のことですからねエ…… もっとも、巫女をさらったのはこのわたくしですガ」

セリオンは神剣サンダルフォンを取り出した。

「アイーダの居場所を知らないのなら、おまえと話をしていても時間の無駄だ。おまえの分身攻撃はもう見切っている。速攻で、終わらせてやる!」

セリオンはバット状に大剣を構えた。

「いやはや、勘違いしないでいただきたいですネ! 誰がわたくしがあなたの相手をするなどど言いましタ? あなたのお相手は秘密兵器がいたしますヨ!」

「秘密兵器? そうでス! 来なさイ! 機動兵器パルテノス Parthenos !」

シュウウと音を立てて、機械兵器が広場に出現した。兵器はカーブした半月型の形をしていた。色は薄いピンク色だった。どことなく女性の形をしているように見える。

「さあ、パルテノス! 敵を殺しなさイ!」

「なるほどな。俺はおまえたちの敵というわけか」

パルテノスがセリオンの前面に躍り出た。パルテノスが胸部レーザー砲四門発射した。

「!?」

セリオンは反射的によけた。

「レーザーか…… くらったらただではすまないな……」

「イーヒヒヒヒヒ! パルテノスの力はまだまだこれからですヨ!」

パルテノスはレーザーを乱射した。セリオンは巧みなサイドステップでそれらをかわした。パルテノスはミサイルを発射した。セリオンはサイドステップでよけたが、ミサイルはセリオンの跡を追ってきた。

「ホーミング・ミサイルか!?」

セリオンは大剣を振るい、ミサイル四発を切断し、迎撃した。パルテノスの中央ハッチが展開した。パルテノスはメガビームキャノンを発射した。セリオンはとっさに光の剣でビームを受け止めた。

「くっ!?」

「イーヒヒヒヒヒ! いいですヨ、パルテノス! もっともっとおやりなさイ! おまえの力を、もっと英雄に思い知らせるのでス!」

「不快な言葉だ……」

セリオンは立ち上がった。

「おやおや、まだ立てるのですカ? 床をはいつくばっていればいいものヲ! イーッヒッヒッヒッヒ!」パルテノスは再びメガビームキャノンを発射した。セリオンはサイドステップでかわすと、パルテノスに急接近し、雷鳴剣を放った。雷電がパルテノスに打ち付ける。パルテノスは小爆発を起こした。セリオンはパルテノスにダメージを与えた。パルテノスは小刻みに振るえると、上方へ上昇した。パルテノスは上方からセリオンにレーザー砲で攻撃してきた。

「くっ!? 上からの攻撃か!?」

セリオンは光の刃でレーザーを迎え討った。パルテノスは左右からのバルカン砲で攻撃してきた。

セリオンは器用によけた。パルテノスはメガビームキャノンを放った。セリオンは光の刃を叩きつけてガードした。直後、セリオンは大きくジャンプして、パルテノスに接近した。

「くらえ!」

セリオンは雷の力を収束し、必殺の一撃「雷光剣」を放った。雷光剣はすさまじい威力だった。パルテノスは一撃のもとに破壊された。パルテノスの残骸が床に飛び散った。それは無残な光景だった。

「さて、次はリゴールか。ん?」

セリオンはリゴールの姿を確認しようとしたが、どこにも見つけられなかった。

「逃亡したか…… 逃げ足の速い奴だ」



セリオンはプルトンのさらに奥に進んだ。そこは長方形の足場が連続している空間だった。セリオンは奇妙な空間だと思った。

「この先に、ゼノビアがいるのか……」

セリオンはジャンプして、足場を渡った。足場を渡った先に半円形の門があった。セリオンは門に触れて、吸い込まれた。

「来たか、英雄よ」

プルトンの中枢で、ゼノビアが待ち構えていた。

「ゼノビア! おまえとの因縁もこれまでだ! アイーダを解放しろ!」

セリオンは大剣をゼノビアに突きつけた。

「フッフフフフフ! 甘いのう…… わらわが敗れたと本気で考えているのか……? そなたは闇が無限の力を持つということを知らぬ」

「アイーダを解放しろ! さもなくば……」

「さもなくば?」

「死んでもらう……」

「フッフフフフフ! 英雄よ、己が無知を恥じよ! 闇は永遠に無限の力を与えてくれる! クレスカでわらわに勝ったと思うてか! フフフフフフ! よかろう! わらわの真の力を見せてやろう!」 

ゼノビアが両手を広げた。セリオンとゼノビアの周囲の風景が歪む。亜空間魔法の発動だった。

ぐにゃぐにゃと風景が歪み、空間が定まっていく。周囲が暗い空間に包まれた。ゼノビアの姿が変化する。

多くの触手と花弁型の赤いアーマー、頭部にゼノビアの上半身がつけられた巨大な体に変化した。

「恐れよ! 絶望せよ! 偉大なる闇の力を思い知るがよい!」

ゼノビア=アルキダイモン Zenobia-Archidaimon

「なんて巨大さだ!」

セリオンは圧倒された。ゼノビアは魔法を唱えた。無数のつららが落下する。セリオンはつららのあいだを軽快なステップでよけた。凍てつく氷が花のように咲く。ゼノビアの広範囲魔法だ。セリオンはその氷の花を大剣で叩き割った。

ゼノビアは氷の刃を放った。セリオンはサイドダッシュで氷の刃をかわした。

ゼノビアは氷の柱を地面から出現させた。セリオンは巧みなステップでそれらをかわした。

ゼノビアは大きな氷の球を落下させた。セリオンは氷の球を叩き斬って迎撃した。

ゼノビアは小さな氷の塊を無数に出現させた。氷の塊が落下する。回避は不可能。

セリオンは蒼気を纏い、蒼気の刃で無数の氷の塊を斬り払った。

ゼノビアはゼノビアは長い触手を動かした。長い触手がセリオンにうねって、襲いかかった。

長い触手はセリオンを殴打した。セリオンは大剣でガードしたが、触手に殴り飛ばされた。

セリオンは壁に激突した。

「くっ!?」

「どうじゃ? 思い知ったか? これこそが闇の魔導の力じゃ!」

さらに触手の群れがセリオンに迫った。触手はセリオンに巻き付いてきた。触手がセリオンを拘束する。

「くそっ!?」

「フフフフフ。まだ闇の力の本質を見せてはおらんぞ? そなたにはこれから闇の力の真価をたっぷり味あわせてくれよう! やみのいかずちよ!」

触手からセリオンに放電が巻き起こった。

「くああああああ!?」

ゼノビアはセリオンに執拗にいかずちを送り込んだ。セリオンは苦悶の叫びを上げた。

「フフフ、フッフフフフフフ!」

ゼノビアは高いところから笑い、あえぐセリオンを見くだした。

「これで終わりか、英雄よ? 違うであろう? このわらわに、そなたの力を見せてみよ!」

触手の拘束が解かれた。セリオンが落下する。セリオンはなんとか無事に着地した。

「……これからが本番だ!」

セリオンは大剣に雷の力を収束させた。

「くらえ! 雷鳴剣!」

セリオンはゼノビアに接近し、雷鳴剣を放った。雷電をゼノビアに叩きつける。

「ぐう!?」

ゼノビアが苦しみの表情を浮かべた。

「さらに!」

セリオンは大剣に雷の力を集めた。ビカビカ大剣が放電する。

「雷光剣!」

セリオンはゼノビアのアーマーに必殺の一撃を叩きこんだ。ゼノビアの花弁型アーマーが砕け散る。セリオンの攻撃はゼノビアに大きな打撃を与えた。

「どうだ!」

「ぐううううう!? さすがは英雄!? わらわのアーマーを破壊するとは…… じゃが!」

ゼノビアは両手に魔力を集中させた。

すると破壊されたアーマーがみるみる修復していく。

「!? 再生か!?」

「どうじゃ? これでもとどうりじゃ。フッフフフフフ!」

「くっ!?」

「いなずまよ!」

セリオンを狙って、闇のいなずまが落ちる。セリオンはピンポイントでかわした。

さらに、闇のいなずまはセリオンめがけて

落下する。セリオンはステップでうまくかわした。セリオンは蒼気を展開した。

「いくぞ?」

「フッフフフフ! 来い、英雄よ!」

無数の触手がセリオンめがけて襲いかかる。セリオンは凍てつく蒼気を発し、触手を迎え撃った。セリオンは蒼気の斬撃を放った。触手は蒼気の刃に切断された。ゼノビアの花弁型の赤いアーマーも傷が入った。

「フフフフフ! さすがにやるのう……」

ゼノビアはセリオンを見くだした。

「せいぜい、今のうちに高いところから見くだしていろ!」

セリオンはゼノビアを見上げた。

「はあああああああ!」

セリオンは蒼気の太刀でゼノビアを攻撃した。膨大な蒼気をゼノビア=アルキダイモンに叩きつける。上から下へと強力な一閃をセリオンは放った。ゼノビアのアーマーに傷がついた・

「ぐう!? おのれ…… まさかここまでやるとは思わなんだぞ…… だが、真の闇の前に、光など無力にすぎぬ! 我が闇の魔法の真髄しんずいを思い知らせてくれよう!」

黒い円がいくつも現れた。黒い円にエネルギーが集まる。

「くらうがいい!」

黒い円から一斉に爆発が起こった。セリオンは爆風に巻き込まれた。

「どうじゃ、見たか! むう!?」

セリオンは光の刃を大剣に形成していた。光の刃は闇の爆発からセリオンを守った。

「おまえが闇なら俺は光だ。光の力をおまえに見せてやる!」

セリオンはゼノビアに接近し、光の刃で下から上、上から下、左から右に大剣を振るった。

「くうううううう!? 目障りな光だ! その光の力、わらわの魔力で消してくれる!」

ゼノビアはいくつもの、鋭いつららをセリオンめがけて放った。セリオンは上方から降り注ぐつららをうまくステップで回避した。

「氷の花よ!」

ゼノビアは広範囲の魔法を唱えた。氷の花が咲き誇る。セリオンは迫りくる氷の花を光の刃で撃退した。

氷の花が砕かれる。

「裁きのいかずちよ!」

ゼノビアは両手から膨大ないかずちを放出した。セリオンは光の刃をいかずちに叩きつけた。いかずちと光の刃がせめぎ合う。セリオンは分が悪いと悟ると、バックステップで後方に下がった。

「よくぞ、ここまで耐えたとめてやろう、英雄よ! しかし、我が究極の魔法で消し去ってやろう!」

「究極の魔法?」

「そうじゃ。くらうがいい! 究極魔法メテオ!」

ゼノビアは両手を上に上げた。空中に魔法陣が現れる。上空から巨大な隕石が落下してきた。セリオンに逃げ場はない。

「死ぬがいい、英雄よ!」

セリオンはいっそう光の力を強めた。メテオが地面に降下した。

「フッフフフフフ! これで英雄の最期……!?」

その瞬間ゼノビアは信じられないものを見た。それは大きくジャンプして、大剣を自分に突きつけたセリオンだった。セリオンは光の大剣を構えると、ゼノビアの胸のあいだに突き刺した。

「ぐふっ!?」

光の刃がゼノビアを貫く。セリオンは地面に着地した。

「まっまさか、このわらわが倒されるとは…… ヘル神よ、申し訳ありません……」

ゼノビア=アルキダイモンの体が闇の粒子を上げて崩壊した。亜空間は消滅し、もとの空間に戻ってきた。

これが闇の魔女ゼノビアの最期だった。プルトンの内部ではゼノビアの死体が横たわっていた。

セリオンはゼノビアを軽くいちべつした。ゼノビアは間違いなく強敵だった。ゼノビアはあくまで闇に固執した。闇の魔力は絶大だが、光は常に闇に反し、闇を討ち滅ぼす。強大な闇の力がどれだけ大きかろうと、光の力はその中で煌々(こうこう)と輝き続ける。まるで希望のように。

「さて、問題はプルトンのコアだ。コアはどこにある?」

セリオンはプルトンのコアを探した。

「あれか!」

セリオンはプルトンのコアを見つけた。それはプルトンの中心に存在した。コアはメタリック・シルバーに輝いていた。セリオンはプルトンのコアを見おろした。

「いくぞ!」

セリオンはジャンプすると、プルトンのコアめがけて、強烈な斬撃を叩きこんだ。

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