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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

番召喚なんて糞食らえ

作者: 深崎那琴

番召喚。

この国に住む人なら誰でも知っている言葉だ。

成人を迎えた王族が伴侶を召喚する儀式のことを差す。

そう、伴侶となる相手を勝手に呼び出すのだ。結婚してようが、婚約してようが、お構い無しに。

番召喚で家族や恋人を奪われた人の気持ちなど、王族には一生分からないだろう。



ことの始まりは、私が七歳だった時。

あの日、母は父と出掛けて帰ってきた私をおかえりなさいと出迎えてくれた。でも、私がただいまと抱き付く直前、母の姿は消えた。

残された私は、あまりにも突然な出来事に呆然としていた。

ただ、父が悔しそうに呟いた番召喚という一言がいつまでも耳に残った。

翌日になって、母は帰ってきた。側に豪華な服を着た男の人を連れて。

母は私と父に泣きながら謝って、最後に私を優しく抱きしめてくれた。

私は母と離れたくなくてずっとしがみついていたけど、男の人に無理矢理引き剥がされた。そして、男の人は母を連れて家から出て行った。

翌日、父は首を括って死んでいた。その後、母とは一度も会えていない。



それから十年。両親を失った私は、必死に毎日働いていた。

番召喚で召喚された人の家族には国からわずかばかりの謝礼が支払われる。だけど、そんな微々たるお金じゃ生活できるわけがない。

慌ただしい日々の中、私にも恋人が出来た。優しくてかっこよくて、とても素敵な人。

結婚の約束もしていたけど、またしても目の前で彼の姿が消えた。

原因はやっぱりというか、案の定というべきか、番召喚だった。

最後にごめんと謝ってくれた彼の顔は、未だに忘れることができない。



さらに二十年が経って、私は幸せな家庭を築いていた。

何かと世話が焼ける旦那としっかり者な息子と元気で甘えっこな娘。

家族四人、毎日賑やかに過ごしていた。番召喚で娘を奪われるまでは。

娘の姿が消えて、私は家族に番召喚のその後のことを話した。

翌日、娘が帰ってきた。もう二度と会えないと私から聞いていた旦那と息子は、娘にそれぞれしっかりと別れを告げたようだ。

娘は今までありがとうと泣きながら、それでも笑っていた。

太陽のような娘がいなくなって、旦那はだんだんと体調を崩すようになった。一年後、風邪を拗らせてあっさり死んだ。



月日が流れ、結婚した息子は母さんが心配だからと同居してくれた。

優しい息子と気配り上手な嫁に、娘によく似た明るいお転婆な孫。

新たな家族に囲まれ、幸せを噛み締める一方で、この幸せをまた奪われるんじゃないかと不安に思わない時もなかった。

大切な存在を三回も奪われたのだから。

その不安は先日、とうとう的中してしまった。番召喚で孫を拐われたことによって。

だけど、悲劇はそれだけで終わらなかった。

孫との最後の別れの時、息子と嫁が番召喚された人とまた会う機会が欲しいと王族に直接訴えたのだ。

王族は考えておくとだけ答えて、孫を連れて家から出て行った。

その後、息子と嫁が不敬罪で騎士に斬り殺され、私もついでと言わんばかりに剣で斬られた。



だんだんと遠くなる意識の中で思う。

私の人生は番召喚によって狂わされた。

母と恋人、果ては娘や孫まで奪われ、父や旦那、息子と嫁はそのせいで死んだ。

私から大切な存在を奪っておきながら、今ものうのうと暮らす奴等が憎い。

王族なんて皆死ね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 番という存在なんで、ずっと馬鹿馬鹿しいと思っています。 これに対する反撃もあればいいと思っています。
[気になる点] 長いあらすじを読んだ気分
[良い点] 王家の番召喚 の利点が分かりません。 平民が多数召喚されていますが 政略結婚でもなければ 教養や品性に差がありすぎる。 伴侶という名の成人した王族の 性の練習用玩具という位置付けでし…
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