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3つの星⑱

「おっ、先に食べてるぞ」

車のドアを開けるとサンドイッチを片手に晴喜が言った。助手席に柊の姿はなく、両親の元へ戻った様子だった。

「遅くなってすみません」

拓人は後部座席に乗り込んだ。

「1時間様子を見ることになった。それで雨が止まなかったら午後の撮影は中止して後日に延期する」

「わかりました」

「なにかあったのか?」

「え」

「落ち着きないから」

「…コンビニの帰り知り合いに会って、ちょっと話してたんです。走って戻ってきたんで息が切れて」

「知り合いってさっきボール飛んでった時の子?」

「あ、はい」

「へえー」

晴喜は呑気な相槌を打った。拓人は鼓動がいつまでも落ち着かないのを感じている。

「知り合いって、こっちで知り合ったのか?」

拓人はおにぎりのフィルムを剥がしていたが手を止めた。

「小学校の時の、同級生です」

「静岡?」

「いえ、高知です」

「高知ね」

「こっちで会うなんて思わなくて。実は、清掃で行ってるデパートで働いてて」

「ああ、今の職場な」

「はい」

「それで落ち着かないのか」

晴喜は笑った。拓人は心の内を見透かされているようで気恥ずかしくなった。そして止めたままになっていた手を動かしフィルムを剥がしきると海苔のおにぎりにかぶりついた。



昼食を食べ終わり小さな画面でテレビを見ていた。もうすぐ1時間が経つという頃、窓には雨粒がついたままだったが陽が差し空は晴れ渡った。

撮影を再開することになり、車に積みなおした小道具類を再び台車に乗せた。

「地面が濡れてるからピクニック風のセットはできないな。これとこれは置いていって、こっちを持って行こう」

「はい」

2人は芝生の広場へと向かった。真ん中あたりまで来ると大き目のブルーシートを広げて固定し荷物を置いた。小道具の準備をしているとやがて柊と家族がこちらにやってきた。

「お待たせしました」

「いえいえ。お昼ご飯ゆっくり食べられましたか?」

晴喜が聞いた。

「おかげさまで」

そう言った柊の母親は紡を抱いている。しかし、紡は眠っているようだ。

「紡ちゃん寝てるんですね」

「そうなんです。それで、申し訳ないんですけど私はこの子を抱っこしてるので先に柊と父親を撮ってあげてもらえませんか?」

「わかりました。そこのブルーシートに荷物置いてください。あとベンチも拭いておいたので座れますよ」

「拭いてくださったんですか」

拓人はブルーシートの荷物からブランケットを取り出した。

「ブランケットも用意してあるので、よかったら使ってください」

「ありがとうございます」

「午後の撮影もよろしくお願いします」

晴喜と拓人は両親に頭を下げた。柊は父親の隣で少し戸惑ったような顔をしている。


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