4 涙
「貴様ら、大地からの恵みであり糧である食べ物を粗末にするとは何事か!」
拙者は憎むべき外道に対する憤りを露にした。
しかし、下浪どもはしばらく顔を見合わせると猿のような声で大笑いした。
「貴様ら何がおかしい!」
拙者は憤慨し、二人の下浪に詰め寄った。
拙者に対し二人の下浪の片割れは下品な笑みを醜悪な顔に浮かべながらこういい放った。
「俺たちはこの女がクソまずいケーキを配ってたから叩きつけて踏み潰してやったんだよ。
いかにも不味そうで汚ならしいものを配るのはもはや公害ってかテロだろ。
だからこうしてテロを未然に防いでやったってわけ。
俺たちはこのまちの救世主なんだから感謝こそすれどテメーみたいなコスプレ親父にキレられる謂れはねーんだよ」
「そんなに不味いなら食わなければいいであろう」
「うっせー、この女のケーキは最早ウンコだから。ウンコは道にあるだけで不快なんだよ!」
「ギャハハハハハハハ!」
無茶苦茶な理論をまくし立てながら二人のチンピラは不快な声で高笑いした。
拙者は言葉にならない怒りをどうにかして沈め穏便に事態を片付けようとする。
するとうずくまって泣いていた娘が涙ながらに口を開いた。
「お侍さん、みんな私が悪いんです。私のお菓子がこの人たちを嫌な思いにしてしまったからこうなっただけなんです。私は、私のお菓子でみんなを笑顔にしたかっただけなのに···」
少女の目から大粒の涙が溢れた。
その様子を見て下浪どもは少しも悪びれた様子を見せず耳を疑う更なる暴言を吐いた。
「オラッ、テメー自分のやったことわかってんのか?ちょっとでも反省するように俺たちが身体でしつけてやるよ」
「そりゃいい!おい、ねーちゃん、俺らとちょっとこっちで遊ぼうぜぇ」
そう言うと二人組の下浪は女性の手を引き路地裏に連れ去ろうとする。
回りの者は見て見ぬふりをしてばかりで助けようともしない。
娘の大粒の涙が地面に落ちた。
瞬間。
拙者は刀を抜いた。
「な、なんだオッサン!?」
「刀とか、嘘だろ、正気か?」
自分より強い武器を目にしあからさまに狼狽える下浪に我はいいはなった。
「お命、頂戴致し申す!!!!!」