3 卑劣!誹謗中傷 クレーマーに鉄槌を!
拙者が今行っている組織の「外回り」と呼ばれている仕事は、暴力団事務に御用聞きやご機嫌伺いをしたり、違法風俗からゆすりたかりをしたりという、その程度の雑用である。
拙者のようななかなか依頼が来ない構成員は依頼がないときは穀潰し同然のようなものはこのようなサポートをし、少しでも組織に貢献するしかあるまい。
一件目の暴力団事務所に向かう途中、拙者は二人の暴漢が若い女性に因縁をつけているのを目撃した。
「貴様ら、何をしておる!」
義憤に駆られた拙者はその憎むべき暴漢どもに詰め寄った。
よくよく見てみるといかにも低俗で品性下劣な服装をした堕落しきった人種であることがわかる。
拙者は西洋の衣装には明るくないが、とかくその二人の暴漢はとかく派手なリーゼントとモヒカンの下浪とだけ現せばいいほどの、貴公らに解説する価値もない人種なので解説を割愛させていただく。
その暴漢二人は拙者を見るなりその品性下劣さが滲み出た醜悪な顔を歪め拙者に詰め寄った。
「おうおう、なんだこの侍コスプレ野郎は」
「頭いってんじゃねーのかオッサン」
オッサンなどと呼ばれたことに少々戸惑いを覚えつつ拙者は気を取り直し、騒ぎを沈めることにした。
「貴様らは何故そのおなごにからむのか」
すると下浪どもはへらへらと笑いながら地面を指さし臆面もなくこう言いはなった。
「決まってんだろ、このクソ不味いケーキに腹立ったからだよ」
不良たちの足元には無惨に踏み潰されたケーキがあった。
その傍らで、一人の娘が泣いていた。
エプロンドレスを着ていることから恐らく街の洋菓子屋の娘であろう。
長いロングの黒髪が美しい清純そうな娘であった。
その娘の涙と踏み潰されたケーキを見て拙者の中の何かが爆発した。