30 うつけ者
爽やかな初夏の日差しが差し込む昼下がり。
拙者は路地裏を時速60kmで疾走していた。
拙者の高速移動は電車やバスより遥かに経済的で大変重宝しているのだが、人目につくと色々と不味いのでこうして人通りの少ない路地裏を利用しているのである。
ここまで人通りが少ない路地裏なら一人二人に見られても白昼夢だと思い込むだろうし仮に動画を撮られてもCGだと思い込むだろう。
そんなこんなで拙者はゲームセンターに到着する。
このゲームセンターはいわゆる複合型ゲームセンターで闘技王などのカードの販売·デュエルスペースの提供やファーストフード屋のフードコートも入っている。
早速拙者は目当てのゲームの場所に向かおうとしたが、その時拙者の耳にこの世のものとは思えない下劣な奇声が聞こえてきた。
何事かと思い振り向いた拙者の目に写ったのは、およそ人とは思えないチンパンジーの出来損ないの姿であった。
奇声を上げながら対戦相手を威嚇するかの様に台に拳を激しく叩きつけている。
年のころは20くらいだろうか。
見た目自体はよくいる普通の青年だが知能はチンパンジーから進化していないのであろう。
「おいてめーざっざどアシストしろよぐぞぉぉぉぉぉ状況わかってんのか戦争だぞごれぇぇぇぇぇぇ!マキブは戦争なんだぞぉぉぉぉぉぉぉ!テメーみたいな雑魚はこの宇宙最強パイロット石田直行に逆らうんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!マキブじゃ強さが正義だから最強パイロットの俺様にじだがぇよぉぉぉぉぉぉぉ!」
幼稚園児のような駄々をこね、奇声を上げながら相手を罵倒する男、名前は岩田なんとかといったか、
彼の立ち居振舞いは偽りの力に溺れし憐れなイキリチンパンそのものであった。
散々奇声を上げ醜態を晒した石田であったが奇声を上げることに意識がいったせいでプレイが疎かになったのか、試合に大差で敗北していた。
「ぶぎぃぃぃぃぃぃごがぐばゃざぎらさぐげぁ!」
頭を抱えのたうちまわりながら奇声を上げる石田。
回りに心ある人がいたなら警察に通報して彼を留置場に入れてもらおうとするところだろう。
しかし通行人はみな我関せずと行った具合で石田を無視し関わらないようにしようと足早にその場を離れて行く。
見るに見かねた拙者が止めに入ろうとしたその時、数人の店員が現れ、そのうちの一人が彼に声をかけた。
「お客様、大変失礼ですが他のお客様のご迷惑となりますので···」
目にした誰もが精神病院に隔離したがるような狂人相手にも全く怖じけ付くことなくメガネの若い店員が石田に声をかける。
その瞬間。
石田は立ち上がりいきなり店員を蹴り飛ばした。




