14 制裁
我々が倉庫地帯にたどり着いたのは、既に暮れなずむ夕陽が町を照らす頃だった。
ここ、B14ブロック倉庫地帯の34番倉庫に奴等はいるらしい。
地図を頼りに探すまでもなく、黒塗りの高級車が目印のように倉庫の前に止まっていた。
店長、ボスと共に中に入り、拙者と店長はたくさんの部屋の中の入り口から近い一つに入る。
そこには、黒服に金属バッドで殴られ全身から血を流す軍畑の姿があった。
目隠しをされ、猿轡を噛まされているので状況がわからないのか猿轡の下から奇声を発している。
既に糞尿も垂れ流しで部屋に入った瞬間、血の臭いと排泄物の臭いが入り交じった度しがたい悪臭が我々を襲った。
まずは猿轡を取り奴の惨めに泣き叫ぶ声を聞くとしよう。
拙者はあらかじめ店長と拷問の種類や手順、順序について細かいミーティングをしていたのだ。
顧客の望むターゲットの絶望と苦しみを提供する、それが拙者の仕事人としての責務なのである。
拙者が軍畑の猿轡を外すと、軍畑の口から何か赤いものがポロポロとこぼれ落ちた。
拙者が拾い上げると、それは血で染まった軍畑の歯であった。
見ると唇が軽く裂けており、呼吸で動くたびに血が溢れだしている。
どうやら口にもいくらか金属バッドを食らったのだろう。
歯の半分以上が欠けており、還暦を過ぎた老人のようになっていた。
この無様な姿ではもう一生女性に悪戯することはないと思うが、血迷って強姦を始める恐れもあるため後でしっかりと去勢しておくことにしよう。
拙者が軍畑の哀れな姿を眺めていると軍畑は要領を得ない幼児のような日本語で喚きだした。
「へ、へへーら、ざでばぎばぁごーどばにぐぢのでじだだだ!(て、てめーら、さては北高の谷口の手下だな!)
でべーらよじじよっべごのおでをざらいやがっだごどごうがいずるぞ!(よりによってこの俺を拐いやがったことを後悔するぞ!)
ごのおでざまのぜんばいばな、やぐざにめぇつげられどるほぼどずげーぎどばんばど!(この俺様の先輩はな、ヤクザに目をつけられとるスゲー人なんなぞ!)
ぞでにごのおでざまのおやばごごがでぼぢだがらぼばえらのごどなんがどーじでもでぎるんばじょ!(それにこの俺様の親父が金持ちだからお前らのことなんかどうにでもできるんだぞ!)
ぜっばいにぜっばいにぶぎごぼじゅう!(ぜったいにぜったいにぶちころすう!)」
と見ているこっちが恥ずかしさと惨めさでいたたまれなくなる暴言を吐いてきた。
しかしこんな思考だと社会に出たときさぞ困るだろう。
拙者がしっかり論破して矯正してやらねばな。
拙者は弱った鼠をいたぶる猫のような残酷な笑みを浮かべると、軍畑に残った唯一の希望にして生きる意味であるプライドを破壊することにした。




