私の名前が出てません。
流行りの異世界&ゲームを混ぜて、オタクな主人公ちゃんがお荷物しながら『その世界に生きる』ことを実感していく予定です。
「いったた…」
見慣れた顔が近くにある。
「あ、大丈夫ですか?」
「っ、ひっ、ひゃい!」
聞き慣れた声がすぐ横から聴こえてくる。
ああ、でもこんなことってあるの?
彼が私を抱き締めてくれている。支えきれなくって後ろに倒れてしまったのに、私のことを彼は全身で守ってくれて、彼は多分尻もちをついただろうけど私にはそんな衝撃、ちっとも来ない。
「よかった。痛むところはないですか?」
緊張しすぎて出た奇声も聞き流してくれたのか、微笑みながらさらに彼が私のことを気遣う言葉が聞こえる。
私はもう奇声を出すまいと首を思い切り縦に振った。
安堵が感じ取れる慈悲深い笑み。じぃっと見つめれば見慣れた立ち絵『安堵、心配の滲む瞳』。
ばくばくと心臓が忙しく動いて血を巡らせる。顔が火照る。彼に見惚れて動けない。
こっ!これは夢!?夢だよね?!
だって、だって彼は…。
私の推し、最愛キャラ、竜綺くんなんだから!
□ □ □ □
いつもの休日。社会人ツラいとボヤいて。
お昼どうしよっかなーと考えながら着替えて。
ボーナスを受け取るために乙女向けアプリ『オトギバナシ』にログインして。
推しキャラの竜綺くんから『今日も来てくれてありがとう』の微笑み立ち絵キター!して。
その勢い余ってベッドに倒れ込んだら森の中で。
女の子の悲鳴が聞こえて。
そっち向かって走って。
ナニかに弾かれて。
竜綺くんに庇ってもらった状態で。
…よし、分からん。
ポカーンとしながらも頭をフル回転させたけれど、全く分からない。
どうして私は、ゲームの世界にいるの?
ベッドに倒れた時に実は頭をぶつけて気絶した?
え、でもどこも痛くない。
「おい竜綺!ぼさっとすんな!」
あ、あの赤髪さんはボルくんだ。序盤から登場したする癒々子ちゃん第1主義のちょっと周りが見えない系。
「癒々子ちゃんはボクが守るんだから!」
ボルくんの隣にいるのはミミックん!名前はミミック。本名じゃないんだけど1部終盤までナゾ扱いなんだよね!
「みんな、気を付けてっ」
ああっ!ヒロインの癒々子ちゃん!
烏の濡れ羽色ような艶やかな髪と瞳。あどけなさを残しつつも課せられた使命を果たすための決意を宿す瞳にはどんなキャラも彼女には心開き、いつしか惚れしてまう美人!!
生で拝顔叶うとは、やっぱり夢ですよね、これ。
元気な時に続き書きます。
大事な主人公の名前を出せてないしw