社交界(中)
写真を撮ってもらいそれを二人で眺めてから、ソフィーのお父さんがいる部屋へと案内をしてもらう。チラチラとお互いを盗み見る二人の初心な姿は使用人達からは暖かい目で見られていた。
「おぉ!とても似合ってるじゃないか」
使用人に案内され、着いた一室の中で感嘆の声を漏らすのはソフィーの父親でもあり、企業の総帥でもあるウラヌスさん。相変わらず図体がデカく、容姿は整ってはいるものの強面の印象が強い。それに加え独特な圧もあるのだがそれはウラヌスさんのカリスマ故だろう。
失礼ながらソフィーやその妹が母親似で良かったと思う。
……本当に失礼だけど。
「ん?生真君どうした?具合でも悪いのか?」
「え!?」
「どこか部屋で休むかい?妻と娘の我儘に付き合わせちゃって申し訳ないね」
さっきまで失礼なことを考えてた自分に気を遣ってもらって罪悪感を感じる。柔らかな笑みを浮かべながらこちらの顔を窺われるともっと申し訳なくなるのでやめてほしいです。本当に。
「生真さんは緊張していますからね。初めての社交界。かくいう私もパートナーを伴った参加は初ですので緊張しますわ」
「緊張か……無理はしないでくれよ?なんかあったらすぐ言ってくれ」
有難うございます。とお礼をしてから本題に入る。仮にも超有名企業の総帥である人が暇ではなく、無理言って打ち合わせに参加してもらっている。なるべく相談したいことは手短かつ端的に。
「自分の社交界の立ち回りを教えてもらっても良いですか?」
「ただ娘の隣で立ってて貰えれば良いよ」
「それって…..」
「あぁ勘違いしないで欲しいのだが、決して君が何もできないとかそんなんじゃなくてね…..ただ隣に立ってるだけで周りを圧倒するからね君達は。それに何かあっても__」
「私がいますわ」
そっと瀬徒の手を握り、微笑みかける彼女はとても綺麗だった。
何かあっても、自分がまもると。言葉よりも雄弁に彼女の手の暖かさが伝えていた。
「中々有意義な時間だったよ。例の事も把握した。今日は泊まっていきなさい」
明日の流れ、そしてクラスメイトが参加するかもしれない事を伝え、作戦を練っていたら良い時間になっていた。外も薄色紫に染まり、地平線に沈む朱色の太陽が幻想的だ。今から帰るにしても家につくのは深夜になるだろうし、その申し出も正直有り難かったのだが……
(物凄い圧迫感を感じる。目がガチだこの人……)
この否応無しの凄味。拒否はさせんぞと言わんばかりだ。肩に手を回されとても上機嫌。
「え、えぇ御言葉に甘えさせて頂きます」
「そうかそうか!じゃあ浴場に行こうか!」
「ちょっとお父様!」
ソフィーの制止を振り切り無理やり手を引かれ為すがままの瀬徒、複数の使用人が追いかけようとするソフィーの前に立ち道を塞いでいる。使用人も一枚噛んでいるのだろう。
キーキーキャーキャー声が遠くなるにつれ、腕の拘束が解かれ大浴場に着いた。相変わらずの大きさだ、前に来た時もその大きさに驚いた。
それにしても何故こんな強引な手を取ったのだろうか?そんなことを思っていると肩を叩かれる。振り向くと人の良さそうな笑みを浮かべたウラヌスさんが一言__
「男と男、腹を割って話そうじゃないか……」
一糸纏わぬ姿のウラヌスさんが仁王立ちをしながら立っていた。
次は日曜日を目標にします。気に入ってくれたらブクマお願いします。リハビリも終わったので次回からは200後半を目指します。




