顛末と怒られるモブ
昼休みの痴話喧嘩は見かねた野次馬が一人の体育会系の先生を呼び出し、事なきことを得た。一触触発な空気を物ともせずに間に入った男気溢れる先生の行動に賞賛が上がった。
当事者二人はその後連行され、事情聴取が行われているのだろう。昼休み終わりの五限目の終盤に差し掛かっていても未だに伊達は戻ってこない。伊達を取り巻く女の子たちは心配そうに忙しなく視線がドアに向けられているのがよく分かるほどだった。
中には瀬徒に恨みを込めた視線を送る輩もいるのだが、いちいち気にかけてもしょうがないので、どこ吹く風と白を切り込んでいた。
五限目の終わりを告げるチャイムがなり挨拶を終えると直ぐに瀬徒に近ずく影が一人。授業中恨みがましくこちらを睨めつけていた女性の一人であり、クラス屈指のお嬢様の花崎だ。その顔にはいかにも不機嫌ですと言わんばかりに歪み、敵意を向けてきてるのがよく分かるほどに。
「ちょっと貴方、どういうつもり?」
「え?」
瀬徒自身、憎まれはしても直接文句を言われるとは思わなかったので、一瞬呆然としてしまう。
そんな態度に更に機嫌を悪くした花崎の目がキリッと眼光を鋭くしたのにたじろぐ。元々ツリ目であった目がさらに磨きがかかったように鋭くなっている。
「貴方、正樹さんと友達じゃないの?ならあの時助けるのが当たり前でしょ?」
「うーん……」
「それに、もし大事なお顔に痣でもできたら貴方どう責任を取ってくれるつもり?もうすぐ大事な行事が行われるというのに……」
大事な行事……そう言った彼女の口ぶりからはとても大切な行事だろうということは誰が聞いても明らかだという程に感情が込められている。
「大事な行事か….」
そういえばと、瀬徒自身ももうすぐ行われるであろう大事な行事を思い出す。
「そうよ。もうすぐ社交界があるの。まぁ貴方には関係ないでしょうけど。大事なパートナーである殿方の顔に痣があったら恥になるところだったわ」
「その社交界って、もしかして…..来週の?」
出来れば当たっていてほしくないという万感の思いとともに質問をする。もし同じ社交界であったのなら、自分が隠してきたものが露呈し、自惚れではないが普通の生活が送れるとは思わないからだ。
そんな想いも虚しく、その問いの答えは口からではなく表情で読み取れるほどに露骨であった。花崎の顔は一瞬で驚愕に染まる。なんでこいつが知ってるんだと言いたげそうな顔だ。
「なんで貴方が知っているの?」
「え?いやその……知り合いが出るらしいんだよね」
「ふーん、まぁそういうことにしていてあげるわ」
知り合い….というのは勿論嘘だが、いまの自分の容姿と、社交界に出る時の容姿とではあまりにかけ離れているので誤魔化しも効くだろうと。相手も言いたいことが言えたのか、相手にするのも辞めて自分の席へ戻って行った。
モチベが無くなってました。これから頑張ります。




