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痴情のもつれとモブ

剣呑な雰囲気醸し出す2人。片や悪魔の形相。今からでも人を軽く屠れそうなほどの気概が感じられる。そしてもう一方は1人の女性に寄りかかられ、余裕そうな笑みを浮かべている。


そして影でそれを見つめる俺、休み明け一発にして危機一髪の状況。クラスメイトも固唾を飲んで見守っている。


麗らかなお昼時、ギャラリーはそこそこと行ったところで......


「おい伊達どう言う事だよ!」

「何がですか?」


当事者は当校のハーレムメイカーにしてトラブルメイカーでもある伊達正樹。隣にしな垂れて寄りかかる1人の女性の肩を抱き込み、爽やかな笑顔を浮かべる。


その女性はお姉さん系で有名で、勝気で男肌な生徒会長とは対照しておっとり系の三年生で主に一年生の間では人気......らしい。そして今も尚眉間に皺を寄せブチギレてるのは三年の先輩、どうやら男女の仲にあったらしいが詳しい事情はよく解らない。


「私、知ってるよ?」

「うおっ」


いきなり耳元で囁くような声にびくりと驚いてしまう。振り向くと髪を垂れ流し、その髪の間から黒く光る目と目があう。いつ見ても本能的に嫌悪感を抱いてしまう。


「か、神崎さんだっけ?」

「ふふ、覚えてくれてたんだ。近くを嗅ぎ回ってたら面白そうなネタを発見したの」

「__ネタ?」


俺の疑問に答えるよう鞄から写真と紙を見せてくる。その写真には伊達にベッタリの女と見知らぬ男が腕を組んでいる写真。それも数枚程ある。


「これって神崎さんが撮ったの?」

「そうだよ」

「えぇ......」


どうやらこの写真は神崎さんが盗撮した物らしい。そしてその写真を付き合ってた先輩に送り、案の定言い合いになったとかで......そもそもなんで先輩の連絡先を知ってたのか謎なんだが。


「コレ送ったら先輩すんごい怒っちゃってさ、先輩が怒り狂っちゃった訳。いよいよ手まで出そうとしたその時!」

「あぁ......わかった」


そこで主人公の登場。独り善がりの正義を翳し彼女の尻を持った訳か。まるで物語みたいだな。無論手を出せと言ってるわけではない。愛して居た彼女が他に奪われ、激情の中で手が出るのもしょうがないと思う。それを関係のない第三者に止められ且つ悪者扱いされたのならその怒りも一入だろう。


事情が見えると今も繰り広げている三人の見方が変わってくる。女なんて悲劇のヒロインよろしくしてるし伊達なんて雰囲気に酔ってるのか解らんがギザな事を捲し立ててる始末だ。


周りも訳を知らないのか伊達を執り持つばかり。この現状の当事者。神崎を見ると面白そうにニヤニヤと。今後一切関わりたくない人種だ。


「最近先生とはどうなの?」

「......どう言う事?」

「お昼毎日食べてるんでしょ?どんな手を使ったら気に入ってもらったのかな〜って。応援の時だって君の所言ってたしさ」

「別に何もしてない。何かと避けられてる俺を慮っての行動じゃないのか?よく出来た先生だよ」


俺と先生が一緒に食べていることは校内でも有名な話。だけどそこに浮ついた噂がないのは俺の根暗な容姿故と推測している。もしそれが伊達なら男性教諭達は寝込むことになるだろう。


「ふ〜ん。最初は生徒と先生との禁断の恋!?だなんて面白そうだなぁと思ったんだけどさ、瀬徒君は先生のこと好きなの?」

「俺は生徒であっちは先生だぞ?厳しいだろ」

「否定はしないんだね。まぁコレでも見て考え直してよ。君とは釣り合わないからさ」


今度は鞄からではなく懐から一枚の写真を、一層と笑みを深くさせながら渡してくる。


写真を見ると先生と1人の男性が楽しそうに何処かで見たような喫茶店で仲良く談笑してるであろう姿。先生の黒髪とは対照して相手の男性は目が映えるような綺麗な金髪に碧眼。写って居たのはいつかのデートの時の俺と先生でした。


俺が写真の金髪の男だと気付かれてないのは安心した。バレたらそれこそ学校中に言い触らすだろうし。


俺のリアクションが気になるのかずっと見つめてくる神崎さん。この人俺だよなんて言える訳ないし、もし言えたとしても病院を紹介されるオチ。


「この人すっごい美少年だよね〜先生とお似合いかも?瀬徒くんどうするつもり?」


どんなリアクションを取ろうか考えてると、それを落ち込んで言葉に詰まった風に思われたのかここぞとばかりに捲し立ててくる。なるほどこう言う手口で先輩を毒牙にかけたのか......


「さっきから黙っててどうしたの?」

「別に」

「なんか反応が淡白でつまらないなぁ。もしかして好きじゃなかったとか?それとも__」


あんましコイツに付き合ってると疲れるしボロが出そうだ。ブツクサと君が悪いので距離を取る。コレからは極力絡まれないようにしないと。


火中であり渦中な教室を出ようとすると、綺麗な声で名前を呼ばれる。


「瀬徒くん!」

「姫川さん何か用?」

「用も何も......正樹を助けてあげて!」


上目遣いで見上げてくる瞳にはしっとりと涙が見える。視線を動かして見ると胸ぐらを掴まれている伊達の姿が目に入った。









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