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屋敷の夜

フクロウの鳴き声が聞こえそうな程の静寂の中、慣れない環境での疲労故か客室として宛てがわれた部屋で横になっている1人の青年がいた。そしてその横には白金色の髪を蜘蛛の巣みたいに広げながら寝ているソフィーアのシスターと一緒に......


「すごい歓迎されたなぁ......」


あの後、夕食をご馳走になるだけでなくお風呂も頂き。挙げ句の果てにはお泊まりも促された程に。最初は体良く断ろうとはしたものの、ソフィーの妹と弟に泣きつかれ折れてしまう形に......


その瞬間のソフィーアの邪を孕んだ笑みに対して一抹な不安を抱きながらも、一流ホテル顔負けな程の豪華な客室で寝れるのは僥倖といったところだろうか。フカフカなベッドは自身の所有している高級なベッドですら霞んでしまうほどに......


これがなければ生きていけないと思わせるほどの魔性のベッド。いつまでもどこまでも寝れそうなほどだ。


横になって目を瞑ればコロッと夢世界へ旅立てそうな魅力を兼ね備えている。ソレに丁度いい抱き枕も__


「って流石に少女を抱き枕はいかんな」


今も自身の隣を独占し、抱きつくように寝ている幼女の名前はユリア。人一倍俺に懐いて来た小学二年生だ。


何をするにも後ろをテトテトと付いてくるピクOンみたいな子。流石にお風呂に入ろうとした時はソフィーが鬼の形相で首根っこを掴み引き摺っていった。


「......寝るか」


慣れないことを行った所為か、普段は使ってないない筋肉が悲鳴すらあげている。これは明日にも持ち越しそうだ。月明かりが照らす客室、ふと窓に目をやれば黒いキャンパスに一線の光芒が走る。ドア付近に蠢く影に気付かないまま寝てしまうのであった。







「__アリア、寝ましたわね?」

「はいお嬢様」


大切なお客様にのみ宛てがわれる部屋の前で声を殺し話しをているのは2人の美少女。片やネグジェリ姿で片やメイド服姿。ヒソヒソしている姿はさながら宝目当ての盗賊にも見える。そんな2人が目当てなのは黄金のお宝__ではなく1人の青年。


「では手筈通りによろしくお願いしま......」

「お姉様何してるの?」

「ゲッ!ユリア......」


ギィと控えめな音と共に無表情でこちらを見るのは私の妹、ユリア。普段はとても愛嬌がありとても可愛らしい妹。私に似て学業や運動も優秀。


そんな妹が彼のいる部屋の扉からヒョッコリと顔をだし忌々しげに毒を吐いてくる。そして解せない。何故彼女が彼の部屋にいるのか。ソレもパジャマ姿で__


「あらあら少しお話をしようと思ってたのですわ、おほ、おほほほ」

「なら今日はダメよ!もうお兄ちゃん寝てるもん」

「お、お兄ちゃん.....?あぁそうねそうね、時期にあなたの義兄ちゃんになりますわ。オホホホ」

「アリア、本当にお姉様お話に来ただけ?」

「そ、それは......」


おおよそ小学生とは思えないほどの凄味を醸し出しながら問うてくるユリア。そんな威圧に百戦錬磨のメイド、アリアはたじろく。ちなみにソフィーの戯言など耳には入っていない。


「それに首にかけているものは何よ?カメラ?お兄ちゃんと私の健やかな眠りを妨げることは許さないわ!」

「お、お嬢様......」

「いいこと?ここからはディープな時間。お子ちゃまはお寝んねの時間ですわ。自分の部屋に戻って寝てなさい?」

「ムキーーー!!!何よ!私だってすぐに大人になるんだから!」


互いに火花を散らす。そして騒音も散らす。それを窘める人はここにはいない。メイドはもはや空気。今も扉の奥で眠っているであろう青年が起きてこないかハラハラしている。


今もギャーギャーと言い争っている2人。ドス黒いオーラを放つ御人に気付かなかったのは無理もないだろう。それはこの屋敷の本当の支配者。アリアが珍しく冷や汗を流すほどに......


「貴方達、うるさいわよ?」

「「おっお母様......」」 

「それにアリアもしっかりなさい。婆やに報告かしら......?」


スッと血の気が引き白くなっていくアリアを尻目に口を開いたのはユリアの方。


「お母様は何故こちらに?」

「騒がしくて気になっていたのよ。そして来てみたら......」

「それはお姉様の所為よ!あろうことか私のお兄ちゃんの寝床に侵入しようとしてたんだから!」

「なっ、第一ユリア、貴方が最初にいたのではなくて?ずる...これは許せませんわ!」

「私は妹だからいいもーんだ」


せっかく鎮火した言い争いも再燃。指で目頭を抑え、ため息をつく。周囲の迷惑など御構い無しに騒ぐ娘達に堪忍袋の尾が切れたのか目を吊り上げる。


そんな様子に気づいたのは今も顔色を伺っているメイドのアリアのみ。そっと離脱しようにも主人の睨みで硬直。さながら蛇に睨まれたカエルの気分。


「さっさと戻りなさい」

「「え〜」」

「え〜じゃないわ。まったく......」


肩を落としトボトボと踵を返す娘達を呆れながらもどこか楽しげに。これには淡い期待も覚える。もしかしたら叱られずに済むかもと。


「アリア、明日も早いんですしもう眠りなさい」

「はい......」


否応無しの宣告に、さっきまで抱いていた期待は脆くも崩れ去る。


翌日、うつらうつらとしながらも仕事に取り組むメイドがいたとかいなかったとか......






「__やっと去ったかな?」


抱き枕少女、ユリアがベッドから抜けたところで意識が覚醒。後ろから抱きつくのは長男のロイくん。中性的な容姿で一瞬少女と見紛うほど。


そっとその金糸のような髪を撫でる。


「やっぱいいな〜弟って」


彼を巡る争奪戦、勝敗は思いもよらぬ展開を広げていた。








体調崩してました。すいません。

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