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終わりと日常

「あぁぁぁ疲れた......」


あれから数時間後、ここは自宅の聖域__自室にてベッドに横になっている。親が気を利かせてくれて買ってくれた最高級の布団が自身の疲労を吸ってくれている様で心地良い。


大会は無事に優勝をし、その後多くの審査員に引き止められ、公には出来ないようなプライベートな質問を根掘り葉掘りと聞かれた。殆どが自社のモデルにならないか?というお誘い。一般高校生がお目にかかることが無いような、目が飛び出るような契約の金額と共に名刺を渡された。体良く断ったものの、彼らとてそれで諦めるような玉じゃ無い。伊達に大企業の看板を背負ってきている訳では無いのだ。狡猾な蛇を前に哀れなカエルと化した俺はそそくさと帰ることも出来ずにあたふたと.......


そこで助け舟を出したのは白金の髪を流した一人の妙齢の女性。小皺が目立つもののかなりの美人さんが俺とおっさんの間に割って入り仲裁。そのおかげもあってか餌食にならずに済んだのは良かったのだが......


『有難うございます』

『__やっと会えましたね』

『え?』

『紹介が遅れました。私、エリーナ ・アロディタと申しますわ。』

『アロディタ......』

『そう!将来の義母ですわ!』


腰に手を当てオホホホと高笑い。密室なだけあってその鈴の音がなるような声はよく響く。腰に手を添えて笑う姿はソフィーを思わせるほどだった__ 


「まさかソフィーの母親に出会うなんて......それに社交界って......」


__社交会。全国のお偉いさん、大企業の御曹司、ご令嬢が一同に集うイベント。中世じゃ無いんだからとパンピーな俺は思ったが、本当の上流階級では今も根強く残っている習慣らしい。マナーやダンスなどはしっかりと面倒を見てくれるらしいが、そんな面倒ごと嫌な俺は当然断る訳で......


『ごめんなさい、おことわ__』

『あら?そんなこと言っていいのかしら?』


スッと眼前に向けられたのはスマートフォン、そこに写っているのはツイッチャーにて拡散されている俺のコスプレ姿。


『……脅してるんですか』

『まさかそんなこと致しませんわよ?ただこれから遠からず貴方の身元を詮索しようとする輩が増えるでしょう。そんな時に私たちの力が必要ではなくて?』


あくまでも提案という体を崩さないらしい。ぶっちゃけ魅力的ではあるがタダとはいかないのがこの女の本性。なにやら思惑があるはずだ。


『それにデートの約束だってしてるらしいじゃ無いですか。デートも社交会も似たような物ですわ__』



そんなこともあってかで帰りの俺はひどく窶れていたと思う。別れる前よりも随分と生き生きと帰ってきた部員とは対照的な俺の様相。部長は俺が優勝したことにより物凄いご機嫌だった。お礼に高級レストランの無料券を数枚貰ったのだが行く相手がいないので意味がない。どうせなら焼肉の無料券が欲しかったところ。


ちなみに部員達は大会をボイコットし秋葉を骨の髄まで楽しんだらしい。ちくしょう俺も楽しみたかった。一緒に__


そんな淡い願いを抱いたまま微睡みの中へ意識を手放すのであった。



___________




そんなこんなで平日。先日とは趣向が違う根暗変装を決め込んで学校へ。相変わらず避けられてはいるが慣れたのかそこまで距離は取られていない。最近では多くの女子に話しかけられることも......もっぱら伊達目当てだろうが。


「__それで最近伊達くんはどうなの?」

「瀬徒君友達なんでしょ?教えてよー」

「いやいや休みの日は部活動してたからわからないや、ごめんね」

「「「「「えー」」」」 


伊達目当ての女子に取り囲まれた。なんだか休みの日まで一緒にいると思われているらしい。知らないと言った瞬間に蜘蛛の子を散らすように去って行った。 これでホモという噂が少しでも無くなるといいな。


お昼に差し掛かるとクラスの男子達が携帯を開き騒いでいる。どうやら流行りのソシャゲじゃないらしいが...... 


『__スンゲェ美人さんだよなぁ』

『正直姫川さんでも目じゃねぇわ』

『比べるのが酷ってもんだよ......』

『しかもスタイル超良いし』


クラスの聖女すら霞むほどの女性の写真を見ているのか、あのレベルが霞むほどとは珍しいな。それにスタイルも良いらしい。うーむ気になる。


一つの携帯を取り囲むように生垣を形成している男子達の隙間から、話題の人を拝んでみるとそこには__ 


(って俺やないかい!)


映ってるのは先日の俺の画像。色めき立つ男子達を余所に罪悪感が湧く。まさか後ろにいますよ〜なんて言えるわけでもないし、彼が正体を知った時にはとても申し訳ない気持ちになる。


「__なぁ生真」

「なに?」

「これみた?」


__ってお前もかい。ご丁寧にお気に入りまで......だから今日のハーレム達の機嫌がすこぶる悪かったのか。いつにも増して俺にツンケンとしていたのは女の子の日じゃなかったのな...... そして写真を見て頬を染めるのは辞めてもらいたい。


「すんげー美人さんだよなぁ......」

「ソウダネ」

「会ってみたいなぁ......こんだけ騒がれるとテレビでも出るはずなんだけどなー」


確かに、半ば社会現象と化しているのにメディアはだんまりとしている。不自然なほどだ。それに画像を上げる度に削除されているらしい。そして俺はそのことに手掛かりがある......十中八九あの人たちだ。


嫌でも白金色の女性二人がオホホホと高笑いしてるのが思いついてしまう。勿論無償でやってくれた訳ではないだろう。社交界に出るという条件の下だ。


変装で踊らされた俺は社交界でも踊ることになる__ 







60話を目安に終わらせます。次は過去編です。文章のタッチ......地の文を変えてみました。

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