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駆けるお嬢様と黄金の聖女

 瀬徒が変装によって性転換をしている中、物語のスポットライトは白金の女神へ。 豪華絢爛な自室にて一人のメイドから本日の予定を聞いている所だ。足をブランブランとしながら使用人の報告をつまらなそうに聞いている。一見すると不遜然りとした態度。その訳は__


「お嬢様。早く社交界のパートナーを見つけませんとご当主様に適当に見繕いられてしまいますよ?」

「う、うるさいですわ!ムキーーー!!お父様もしつこいですわね......ねぇアリア?貴方もそう思いませんこと?」

「ご当主様は前々からずっと仰っておりましたよ?どうせ件の男性に連絡すら取ってない現状。お嬢様は奥手すぎるのです。お嬢様のお手にかかれば落ちない男性なんてい割る訳がないのですから自信をもっと......」

「一回フラれたんですのよ!?2回目はハードルが高すぎますわ!」

「はぁ......」


 アリアという赤毛の専属メイドはため息をつく。ソフィーアが齢3歳の頃からずっと支えてたため、彼女自身は主従の関係ではなく実の姉妹として思っている。だからこそ、彼女には想い人と一緒になって幸せになって欲しいと思うのは姉としての愛故か。


「ですが良い加減パートナーを連れてこないといよいよもって......」

「うぅ......」


 その先を言わなかったのは彼女なりの親切心から。状況を一番よくわかっているのは他でもない彼女自身なのだから。


 来月に行われる社交界。様々な企業や政府関係者も出席するイベント。たかが社交界と侮れなかれ、その裏では今後の社運を決めるような取引も行われる。そして婚約者探しに勤むものまで現れる始末...... だからこそ格好の狙いとなるのだ。 容姿、血筋、学業全てにおいて最高水準な彼女を密かに狙う輩も少なくはない。


「それと、アホーン商会の跡取り息子、ゲロロ様からお手紙が届いておりました」

「またあの人から.......」


 年がら年中手紙を送りつけてはアプローチを仕掛けてくる彼。当然社交界の話を聞いたのであろう。パートナーは是非にといった催促の手紙が週に一度は届いてくる。容姿の良さを鼻にかけて常に周りに女を侍らせているらしい。正直言って嫌悪すべき人間だ。


「お父様からも一言いってもらえないかしら?良い加減鬱陶しいですわ......毎回卑猥な目で見てくるし......」

「流石のご当主様でもアホーン商会は無下にはできませんし......」

「むぅ......」


 気分は更に急降下、こういう時は彼の写真を見て英気を養うに限る。机の中にあるプロマイドカードに手を伸ばそうとすると......


「あともう一つお嬢様にとって大事なお知らせが御座います。」

「がおーっ!なんなの!せっかくの成分補給に水をささないでくださいます!?」


 自身が置かれた状況と手紙の事があってか疲弊していた彼女。彼で一服入れようとした時にまた横槍が入ったため堪忍袋の尾が切れる。オヤツをお預けされた子犬は時して獰猛なライオンへと変化を遂げる事もあるのだ。


「例の少年の事ですよ」

「え!?」

「本日10時くらいに彼が黒塗りの外車に乗り込んだのを機動隊Bが発見しました。そして後をつけていると......」

「つけていると......」


 さっきの獰猛さは一瞬で鳴りを潜め、深窓の淑女へと変貌。ゴクリと喉を鳴らしアリアへ傾注。 ちなみに機動隊とは彼を陰ながら監視......護衛する部隊のこと。


「秋葉原にいきつきました。恐らく彼はコスプレの大会に出ると思われます」

「コスプレの大会?__その心は?」

「彼は高校ではアニメ部という部活に入っております故に。現に同じ部員の少年も一緒だったのを確認しています」

「へぇ、でもコスプレねぇ......あのお方はそういうの嫌がる人でしょ?」


 彼__瀬徒生真は使用人の間では非常に有名だ。お仕えするお嬢様が恋幕を抱く人物。気にならないわけがない。そして彼が変装をしてまで容姿を隠していることまで知っている。だからこそ目立つコスプレの大会に出る訳がわからないのだ。


「これを見てもらえれば判るかと......」

「こ、これは......!!今すぐ車を出しなさい!私たちも行くわよ!!」


 タブレットに写し出された写真を見て血相を変える。ドタバタと音を立てて部屋を退出。乱暴にドアを閉める彼女を咎める声など疾うに聞こえず。

 煌びやかな白金色の髪を振り回しながら屋敷を走り回る姿は神話の麒麟のように美しくも荒々しかった。








『__いやぁこれまでのレイヤーさん凄かったですねぇ!』

『ええ毎度ながらレベルの高さに驚かされますね』


 会場にて司会と審査員が互いに感想を語らう。これから折り返し、コスプレ大会の大物が一人一人と出てくるたびに会場が軋みを上げ、オタク達の咆哮が季節外れの蒸し暑さに拍車をかけているようにも。


『それにしても今大会は多いですねぇ!リリアナちゃんのコスプレ!』

『ですね、あのアニメが大ヒットしたのはヒロインでもあるリリアナの尽力がデカイですから』

『どのコスプレイヤーさんもとても可愛らしくて甲乙つけ難いですね!』

『さぁさぁいよいよ後半です!次は__イクコさんです!どうぞ!』


 あれ程騒々しかった会場も冷や水を浴びせたかのように静かに......そして入場口に集まる視線。そこから現れる一人の長身の女性に目を__心を奪われることになる。














水曜日に載せます。

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