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控え室の美少女?

 普段もかなりの熱気に包まれているが本日は一層熱を伴っている。ただでさえ蒸し暑くなって来る時期、その暑さに熱中症予防の注意喚起が成されるほどだ。コスプレイヤーが年間の内最も気合いを入れるであろう祭典が此処秋葉にて行われるからだ。


周囲を見渡すと思い思い自信のある衣装を着飾っている。チラホラと美男美女のレイヤーさんも見受けられるが実際はカメラを手にしたアキバ系の男性が多くを占めていると言った感じ。 そして超絶美少女と化した瀬徒生真こと生子ちゃんとは別行動中のアニメ部の部員たちはというと......

 

「うわぁ......」

「すごいね!」

「瀬徒の奴も勿体無いことしたなぁ......」


 様々なコスプレイヤー達の川に流れて歩く根暗集団。一流のスタイリストさんによって手心を加えられた姿に陰キャの姿はない。田舎から都会へ出稼ぎにきた人みたいに呆然と、そして秋葉を楽しんでいた。


「いや〜すごいね!メイクって!」

「こんな俺が憧れのキャラになりきれるなんて部長に感謝しかないぜ」

「まぁあの人もなんか狙っている印象ありましたけどね......」

「細かいことはいいんだよ!楽しもうぜ!」

「は、はい」


 いくら周りに似たような格好をしてる人がいても正直言って恥ずかしい。先輩方は全く気にしてなさそう......てか思いの外楽しんでいる。時たまクルリと舞台役者のように衣装を翻して見たりと和気藹々している。


「俺たちが出るグループ部門ってまだ?」

「もうすぐソロ部門が始まるしまだまだかな」

「見にいく?」

「いや〜あそこ熱気超すげぇじゃん。折角だし秋葉を楽しもう!」


 コスプレ大会はソロ部門とグループ部門の二つに分けられているのだが、例年注目されるのはソロの方。そこに出るのは超一級のレイヤーばかり、だからこそ多くのメディアも注目するらしい。そこで優勝でもすれば一躍有名人の仲間入り。 だからこそ多くの人が参加しようとする......が 。


「ソロ部門って推薦のみだっけか?だからこそ質が超高いんだよなぁ......」

「そっちも猛烈に気にはなるけど後でツイッチャンで見れるし、やっぱし秋葉を楽しむことにするか!」

「瀬徒はどこ行ったんだろね?佐藤は何か知ってる?」

「いや特に......」


 往来が激しいからこその騒音の中でよく通る声で言う佐藤。先輩方も気にしてはいるようだがやはり秋葉を楽しみたいのだろう。部長も把握してるらしいのもあってか心配はしていない。もうすでにパンフレットに目を通している。


(瀬徒君、大丈夫かな......)


 今期超大作である王道異世界アニメに出て来るオークのコスプレを纏いながら、此処にいない友達に想いを馳せるのであった。







「__やっぱり慣れないな」


 此処は会場の控え室。机の上には支給されたお弁当とお茶、腹が減っているのだが義ちゃんに食べちゃダメと...... 曰くちょっとのお腹の膨らみでさえもその完成されたプロポーションが損なわれるらしい。胸の詰め物がやけに鬱陶しいし早く終わらせたいと密かに願う。


「本当にアニメのキャラ見たいだよなぁ......」


 自惚れではなく、何度鏡を見ても惚れ惚れする美しさだ。このコスプレの元は大ヒットした前期のアニメの女神らしい。 画像と自分を見比べても遜色が無いくらいだ。そして男としての性が顔を出し始める......


(ちょっとくらい、ちょっとくらいポーズして見てもバチは当たらんだろうし......)


 自分以外誰もいないか控え室をキョロキョロと。誰もいないことを確認し、豊艶な胸元を手繰り寄せて上目遣いをすると__ 


(破壊力凄すぎだろ......)


 自身の身長故にかなり屈まなきゃいけないのがネックだが、それでも堅物でさえ容易に凋落できそうなほどの微笑みは自分ですら骨抜きにされそうになる。 こんなこと一人じゃ無いと決して出来ないことだ。


(何やってんだろ、俺。やっぱし疲れてるのかなぁ......)


 急に現実に引き戻され沸々と羞恥心が湧く。なんか徐々に女の子になっている気がしてしまう程にも。早くコスプレを解除しなければ義ちゃんみたいになりそうだ。あのオカマは大会の関係者に挨拶に行ってるらしい。まぁその手の業界じゃ彼......彼女はかなりの有名人なのだししょうがないだろう。気分を変えるためにもお茶に口をつけようとすると__


「くぅぅぅぅぅ!痺れたわ!生子ちゃん!」

「ぶぅぅぅぅぅぅっっっっ!!!」

「女の子がはしたないことするんじゃ無いわよ」


 唐突に出現。声をかけられて初めて気づく。口内を潤していたお茶も一斉噴射。変態さんなら金も出しそうな黄金の霧吹きが控え室を舞う。


「いつからいたんですか?」

「さっき♡なんだか楽しそうだから声をかけるのも憚れちゃって......」


 いたのなら声をかけてほしい。ていうかさっきって......


「見ました......?」

「何を?ちゃんと言ってくれないとわからないわ〜?」


 くっ!忌々しいオカマめ、気付いていながらも意地悪をしてくる。 嗜虐的な笑みがやけに様になってますね......


「......です」

「ん?」

「鏡の前でポーズ取っていたことです......」

「その恥ずかしそうに言うの最高よ!!それと貴方そんなことしてたの?」

「__え?」


 どうやら義ちゃんが見たのはポーズを取った後らしい。上手い具合に乗せられた。やっぱりこの人苦手だ......


「くっ!......」

「そんな顔しても可愛いだけよ。もう時間だし頑張りましょ?」


 怨嗟の視線も一蹴。そして始まるコスプレの大会。この日刻まれることになるだろう。アニメファンフェスタにおける伝説を、金色の聖女が彩るのももうすぐだ。 

出来たら明日も投稿します。

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