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部活動をするモブ

桜良学園の放課後、勉強一色だった日中とは対照的に彼方此方から上がる運動部たちの掛け声。鬱憤を晴らすかのように怒声地味たモノが聞こえる中で学内でもある意味有名なイケメンに付き纏う不細工少年、瀬徒は最近御無沙汰だったアニメ部の部室に来ている。 基本自由参加なので毎日行かなくても咎められることはないがこの日ばかりは部長直々の招集。 あの内向的で穏やかな部長からの招集ともあって緊張してしまう。


「__あっ、瀬徒君お疲れさん」

「みんな、なんで入らないの?」

「いやぁ......ちょっと......」


「アニメ部」と書かれた扉の前に集まるは究極日陰者集団__通称”インキャーズ” 纏まって蠢く様はまさに邪悪。皆顔には緊張を孕んでいる。 先輩たちによるとかなりのイレギュラーらしい。 何時もは軽く開けられる心休まる居場所の扉も今この瞬間だけは石扉が如く立ちはだかっている。 誰もがドアノブに手をかけない.......否かけられない。 扉の奥で感じるは凄み、脳内が告げる。


__この先に化物がいるぞ。っと 


元々インキャーズは危機に対する感知に異常に長けている。なんて言ってもカーストを地で這っている集団、強者からのやっかみに晒されてくるのは世の常。だからこそ一級の感覚が告げているのだろう......と俺は思う。


「__よし!みんなでいけば怖くないな!」

「そ、そうですね」

「よし......俺から行くぞ?」


一人の大漢が男気を魅せる。扉を開けた瞬間待ち受けるのはニコニコと笑顔な部長。両肘を机につけ口元を隠すように両手を組んでいる。柔らかな顔とは裏腹に扉を開けたことにより純度100%の凄みも襲ってくる。 そして口元にある新鮮味ある傷口がやけに目立つ。まさかそれ関連のことなのか__? 


「やぁ諸君、それと瀬徒君は久しぶりだね」

「御無沙汰してます......」


こちらの目を見据えるニコニコ顔の部長。非情にも部員は俺を隠れ蓑に...... 漢気先輩なんて影の方に寄って縮こまっている。 さっきまでの感動を返して欲しい。


「今日は君に......いや君達部員に話があって呼んだんだ」

「......」


部員一同沈黙。何時もは趣味の話で花を咲かせている聖域もこの瞬間だけは滴枯らす砂漠のようで......それでいてジリジリとした威圧は太陽をも思わせる。 皆が固唾を呑む中で口を開け語るは__ 







「いやぁ〜ビックリしたね!部長があんなこと言うなんて!」

「そうだね..... まさか遊びの誘いだとは思わなかったよ」


場面は変わり噴水を中心に添えた公園での待ち合わせ。 休日といったこともあって多くの人の往来、そして突き刺さる死線ならぬ視線。そんな中で待機するのは二人、瀬徒と佐藤だ。 休日で会うなんて二人にとっては初めてのこと、それでいて男友達と休日に遊ぶなんて初めてな瀬徒は純粋にこの日を楽しみにしていた。


「それでも部員集めて何するんだろうね?」

「んんん聖地巡礼とか?」

「あ〜あるね!それは!」


アニメ部に入っても尚幽霊部員だった瀬徒。しっかりと事前知識を脳内に詰め込んできている。これも部の輪に入るための弛まぬ努力。大丈夫、メイド喫茶に行くのではないし、変装もきっちり決めている。 誰がどう見ようとも一般Aだ。


「__やぁ諸君......って二人だけか......ちょっと早かったかな?」


仕立ての良い服をきたおぼっちゃま然りの部長が笑みを浮かべながら挨拶を、インキャーズの支配者、No1の御成りだ。


「「お早う御座います!」」 

「元気良いね!その元気があれば今日は大丈夫そうだな!」

「何処の聖地行くんですか!」

「ん?......聖地?行かないよ?」 

「え?」


まさに何言ってんのって面持ち、対する俺達はアホ面を晒す。興奮で揺れている佐藤君のふっくらボディも気分急降下で控えめに。


「__今日はオタクの聖地!秋葉にて我らがアニメ部!コスプレ大会に挑む所存!!」


ドバッと風が吹き荒れる、青葉が舞い散り噴水から水が勢いよく吹き出るのをバックに威風堂々と語る部長。 その目に宿るは闘志。彼が執着する理由とは__ 


「優勝すると超限定グッツがもらえるらしい!僕はそれが超欲しい!」


彼はこれでも財閥の御曹司、その気になれば金で万事解決も夢ではない。曰く自分で勝ち取るからこそ意味があるらしい。 そしてそれに巻き込まれる形となった二人組こと俺と佐藤君、それと後から来るであろう部員達。 謎の凄味の正体も明らかになっていく。


(なるほど、それが欲しいから故の威圧感か......)


「それじゃあ行こっか?」

「えっ......まだ他の人きてませんよ?」

「彼奴らは現地集合!僕は君たちを伴っていくのさ。それとコスプレの事は気にしないで!パパに頼んで超一流のスタイリストさんとか諸々呼んでいるから!」


自分の力とは何なのだろうという疑問が喉元を迫り上げてくるがゴクリと唾を飲み込むことにより制御。

佐藤君なんかは秋葉に行けると聞いて有頂天にも。


「僕はね、瀬徒君!君に期待しているんだよ?」

「何でですか?」 

「スタイル超良いじゃん! 185cmくらいでしょ? それに一流のスタイリストさんによる改造で凄いことになりそう!」

「え!?俺出るんですか!?」

「無論僕も出るよ!一緒に頑張ろう!」


二人の方を叩きながら激励をする部長。周囲の奇異な目線も一層強くなっていくが大物なのか気にするそぶりもしない。変装をしている少年が皮肉にもコスプレの大会へ。 舞台はオタクの聖地、秋葉。 闇に映える黄金がもうすぐ解き放たれる__ 







報告欄を更新しました。これからもよろしくお願いします。

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