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運動会とモブ

絶好の運動会日和、 この学校の行事を飾るに上々の晴天。 周囲は浮足が建っており、皆忙しない。一様に顔を凛々しくし、まるで戦地に赴く兵士のような貫禄すら感じさせてる。 無論、優勝への意気込みもあるのだが彼らの脳内を占める大半は別のこと。  


__女子達にかっこいい所をみせたい。 


つまるとこそこに行き着くのだ。


瀬徒自身は雨で中止にでもなって欲しいと心から願っていたのだが都合よく行く訳もなく......

 

佐藤君なんかは毎日逆さまのてるてる坊主を作っていたと言うのに報われず、精根尽き果てた顔をして座っている。 学内で一番運動会を望まなかったのは彼だろう。


そんなに嫌なら休めばいいと言ったのだが、両親が応援しにくるので休むに休めないと涙目で語ってきた。 俺自身も休めば周囲から更に冷めた目で見られるのもあって休むつもりはない。


集合時間が迫る中徐々に教室内に人が集まってくる。優勝候補でもある伊達率いるバスケチームは集まり作戦の最終打ち合わせでもやっているのだろう。その周りを囲む女子達が激励の声をかける。


”頑張ってね!”


”応援行くよ!”  


”私も行くよ!”


大方、伊達狙いなのだろうが取り巻きの男達はデレデレと鼻の下を伸ばしている。それを羨ましそうに見るサッカーチームの面々。 一人調子のいい奴が口を開く 


「サッカーも応援してくれよ!」


応援なんか来なくていいのに、だって......


「えぇ〜、練習してないんでしょ? すぐ負けそう......」


そう、一度も練習してないのだ。 他の種目の人たちは毎日厳しい練習をしてたというのに『まったく』練習してないから期待されなくてもしょうがない。様々な事情が重なり一度も全員が集まらなかったのだ。 個人で練習をしてる奴もいるそうだが、やっぱりチームで一度も合わせてないのは厳しいだろう。


醜態を晒すだけなので応援がない方がマシだ。瀬徒自身、運動神経はかなりあるのだがそれを一人で補えるかと言うと無理な話なわけで......


「ちらっと見に来るだけでいいから!お願い!」


「気が向いたら行くよ......みんなも行くでしょ?......」


「「「「う、うん」」」 


絶対に行かない人が言うセリフなのだが男は嬉しそうにガッツポーズ。 彼女達の反応からすると何かと理由をつけて来なさそうだ。


「絶対な!頼むよ!」


そう後押しする男に苦笑いしながらそそくさと教室をでた伊達達を追いかける彼女達。


「お前ら聞いたか! 応援来るってよ!」


眩しいからそんな顔やめてくれ、負けることより応援が来なかった方が精神的にキツそうだな。


ニコニコと一人一人チームメイトの肩を叩きながら激励する彼はひどくまぶしかった。


「あ〜姫川さん達きてくれないかな〜」


そりゃ無理だ、バスケとサッカーは同時進行。運が悪い(?)ことに瀬徒チームと重なっているため 

応援は二者択一、女子全員伊達の所に向かうだろう。 俺にとっては僥倖、醜態晒さずに負けてやる。


「ぜってぇ勝とうな!」


瀬徒の心情なんて知らねぇよと言わんばかりにやる気をだす。


「「「お、おーー」」」


覇気のない入魂を決め、開会式に望み 試合が行われるのだった__ 







本当にここで試合が行われるのだろうか?と来た人は思うだろう。その訳はオーディエンスの少なさだ。


瀬徒チームの応援は クラスから担任の黒羽葵と前髪を垂らした同じクラスの少女__神崎さんのみ。 彼女も根暗で不気味だと思われてる。 なんだか通ずるものがあるな...... はぶかれてこっちに来たのだろうか? ここにいるメリットなんて無いしな。 


あとはモデルのような美男と美女 そしてちみっ娘。


「お おい あそこの女の人綺麗だな、まさか俺の応援に!?」


クラスの美女誰一人応援に来ず、頭が可笑しくなったのか顔を赤くし戯言を吐く。


「ぼくの両親だよ......」


佐藤君が気まずそうに答える。


「「「え!?」」」 


チーム一同驚愕を顕にする。 あんな美男美女から生まれて来たのが__ 驚いた面々の疑問も彼には察せられるだろう。顔をしかめてしまった。


「お隣のちびっこは?」


みんな興味津々といった面持ち、 両親の横でぴょんぴょん跳ねている美少女が一際目立つ。


「い 妹だよ」


「「「おぉ〜!」」


歓声が湧く。そこにはクラスの女子からの応援が来ないからと死んでいた雰囲気はない。活性化するチーム。 あんな幼気な少女を伊達の毒牙にかからせてはいけない。 あとでお兄さんが後ろから守ってあげよう。 うん。 


「お兄ちゃん!頑張れー!」


佐藤君 いい家族を持ったな。妹さんとも仲が良くてよかったよ。 きゃっきゃと楽しそうに跳ねる妹さんを暖かい目で見るチーム一同 そこに邪念はない。


俺たちの試合を見えるよりも彼女の天真爛漫さを眺めたほうがいいのではないかと思ってしまう。まぁそんなことすれば今も鬼の形相でこちらを睨め付ける佐藤パパに殺されそうだが......


両手を大きく振り 佐藤君にエールを送る姿も超可愛い。 中学の頃、執拗に付き纏って来た自称妹キャラとは違い計算されてない可愛さがそこにはあった。やっぱりいいな、妹は。 


佐藤君もそれに答えるように腕を振る 


「姫香、みんなの応援よろしくね」


「任せて!」


お姫様の応援を携えて臨む試合、醜態は晒せない 兄の威厳を見せるためにもここ一番と凛々しくなる佐藤君の顔。 色気溢れる担任の応援も合間って チームの士気が最高潮になるのであった。






受付の前で偉そうに手を腰に当て高笑う一人の影とそれに付き従う二人の従者 



「__オホホホ!! ここが桜良学園ですわね!来ましたわよ! 」


ただ休みの日に暇だからと遊びに来ただけのお嬢様。 そこに最愛がいるとは知らずに......



影の猛者との距離も最高潮に近くなるのであった。
























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