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ホンモノのお嬢様による最愛探し

『まだ見つかりませんの!!!』


まるで一国のお姫様が住んでいそうな豪華絢爛な部屋で声を張り上げる一人の女性。報告をした一人の侍女はその形相の恐ろしさに直ぐ恭しく頭を下げ逃げる様に退出する。


白金色の髪を綺麗にカールし、西洋人形を思わせる顔造。 そんな端正な顔が怒りで歪んでいるわけは____


(愛の国から戻って来てはや三ヶ月、一年会えなかったよりもずっと胸が痛みますわ......)   



そう心の中で吐露するのは本物のお嬢様、どこかのぽっとで成金ドリルお嬢様と違い由緒正しい家系の出である。 指をさせば何でも買ってもらえる程に彼女のことを溺愛する両親を持ち、誰からも羨まれる美少女。


彼女の辞書に「敗北」の文字なんて存在しない。常に勝者であった。 歩けば視線を集めるであろう天使の様な容姿に加え学業や運動も最高水準。さらに実家は世界でも上から数えたほうが早いほどに大金持ち。


そんな彼女を放って置く訳もなく常にいろんな男性がアプローチしてきたしそれはこれからも変わらないだろう。


「はぁ〜会いたいですわね......」


額縁に飾ってある彼とのツーショット写真(合成)をうっとりと眺め、頰を染める。最高級品質の紅茶の香りが漂う室内で彼との出会いを思い返す。


彼女の初恋は中学生の時、彼女を見れば常に媚びた表情で話しかけてくる大勢の男子の中で唯一と言っても良いくらい全く自身に関心を寄せなかった一人の男。


その男の容姿はまるで御伽噺の王子様を髣髴とさせ、彼女同様に勉強も運動も最高水準。

最初はその幻想的な、現実離れをした容姿に惹かれた。


つい、いつもの癖で指をさそうとしていた自分に気づく。


__あぁ私、彼のことが欲しいのですわ。


彼女の行動は早かった。直ぐに自身の侍女達に彼の調査を依頼する。大沢中学でも彼は非常に有名だったので直ぐに名前はわかったし、非公式のファンクラブなるものに所属すればあらかたの情報も手に入れられたがこれで満足するわけでもなく、父にお願いをし、 最大限彼に関する情報を集めた。


彼に対する情報量は既に影の猛者達よりも抜きんでていた。彼好み(※調査結果により)の最高品質な香水を体に振りかけ、自身の出で立ちを確認する様にくるりと回る。 いささかセックスアピールが激しい様に思える服を着飾り、妖艶に微笑む姿を姿目で確認する。そこに天使とモテ囃された面影はなく、色気溢れるサキュバスが立っていた。


舞台は使用人総出で整えた。今頃数多な親衛隊と熾烈な戦いに興じているだろう。 最も警戒すべき影の猛者たちの動向は気になるが、千載一遇のチャンス、必ずものにしなければならない。


覚悟を決めた様にキリッと顔を凛々しくするサキュバス......もといお嬢様。


__さぁ、堕としに行きますわよ!


オホホホと高笑いが木霊するのだった。












「うぅぅ......何がいけなかったの...... 」


さっきまでの活き活きとした様相とは真反対に純白な机に顔を伏せるお嬢様。


「お嬢様、口調戻ってますよ」


何とも空気の読めないメイドであろうか、だが今の自分に怒る元気などない。 その理由は至極簡単で

『振られた』のだ。


最高の舞台と彼好み(※調査結果)の服装もしっかりと決めた。 何がいけないのか正直わからなかったが。告白を影から覗き見ていた専属メイドによれば「あの告白の仕方は振られてもしょうがない」と言うだろう。


外もすっかりと暗くなる。もしお付き合いできたのなら今の時間我が家御用達の高級レストランで彼と食事をしているのだろうか?  すっと大失敗に終わった告白が蘇ってくる。


__私とお付き合いしてもよろしくてよ!


__え? 


__よ ろ し く て よ!!  


__ご、ごめんなさい 


あぁ、思えばなんて高飛車な告白だったんだろうか...... 自身が幾千と脳内でしたデモンストレーション

もまるで意味がなってなかった。 あの時、「恋する乙女」よりも私自身の「お嬢様」が出てきて......


「このっ!このっ!ですわ!」


必死に太ももを力強く叩く彼女。 じーんと痛む太ももを抑える。


「はぁ〜私、本来は尽くすタイプですのよ? 彼の為なら何だって差し上げられますのに......」


くどくも彼女の傷を抉るように思い出す。


__ な、何でですの! ま まさかお金? 毎日たくさんあげますわよ!! 


__ いや、そう言うんじゃなくて......


__ まさか!身体ですの!? 


__ 今の君からは何もいらないよ、告白してくれて嬉しいけど大方容姿に釣られてきたのかな?

俺は本物の愛が欲しいんだ。中身を見てくれる......そんな人に


__ ホンモノノアイ? 何それどこに売ってますの!? 直ぐ取り寄せますわ!


__ その意味がわかったらもう一回きてくれないかな?  


そう言って振り返らずに夕焼けをバックに戻っていく彼に声をかけられず、ただ呆然とした。 近くで雰囲気作りのため演奏をしている召使いたちも唖然とする。


失恋を経験し、落ち込みはしたけど諦めないのがこの女だ。


本物の恋を知るために恋愛を題材にした本や映画を読み漁り 見漁り 行き着いた一つの決断。


「フランスですわ!」


ねっと?でも愛の国と言われているらしい。 3ちゃんねる?の名無しと言う賢人達から得た大量の知識。 


これと本場で学ぶ愛との相乗効果で次は本当に彼を落とせるだろう。


彼女にとっては気の遠くなるほどに会えない時を過ごす事になるのだが、最終的に結ばれてそこらからの数十年間に比べれば、塵も良いところだ。 きっと楽しい事ばっかじゃないけれど 最後は二人で笑えたら良いな。 そのためにも頑張らなきゃ__  一人の乙女が殻を破る瞬間でもあった......







「せっかく!愛を知り舞い戻って来たのに!何で高校もわかりませんの!?」


権力ぶんまわしで探すも彼の影を捕らえることすら出来ない。結局、彼が行きそうな高校を徹底的に調べ上げ、泣く泣く運任せに入学したがやはりそこには彼はいなかった。


一年彼に会えないと言う途轍もない苦難を乗り越え成長した自分を早く見て欲しいという気持ちが先行する。


「クフフ、まぁこれも試練ってやつですわ、この試練を乗り越えればきっと結ばれる!」


千辛万苦乗り越えた先に待つ終わりは等しくハッピーだ。 そう思えば試練すら心地の良い踏み台になる。


一歩一歩駆け上がりましょう。まずは彼を見つけなきゃいけませんわね......






__愛の逃避行、 貴方はどこまで逃げられるでしょうか? 成長した私、ソフィーア アロディタから逃げられると思わなくてよ? 




その晩、屋敷には久しぶりにお嬢様の高笑いが鳴り響くのであった。




















メッセージでの応援ありがとうございます。間違って『お礼』って書いちゃったのは気にしないでください。 後書きから失礼します。 

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