静観するモブ
昼食終わりの5限目、いつものように腹一杯お手製の弁当を食べさせられた瀬徒。
何時もはこの時間、満腹も相まって夢現となるのだが今日の5限はイレギュラーであるため
覚醒している。
「さぁ〜もう少しで待ちに待った春の運動会よ〜!」
黒板の前に立つ獣____もとい黒羽先生が綺麗な声を上げる。 彼女に集中する視線 これから行なわれる行事が楽しみなのだろう爛々とした目をしている。 隣の伊達を見れば爛々を通り越してやる気の炎すら見える。
「「「「うぉおおおお!!!!!!」」」」
体育会系男子の雄叫びが木霊するが、それを咎めるのは誰もいない 隣の教室から似たような雄叫びが聴こえるのだから。
春の運動会......ここ、桜良学園でも有数のビッグイベントで多数の外客を迎え盛大に行われる行事の一つ、
主な種目はサッカー、バスケ、陸上では100m走やクラス対抗のリレーなど少数だが毎回密の濃い試合が行われる事で人気が高いが それだけでなく この時期からやたらと付き合う人達が出てくるのだ。
男子の雄叫びに含蓄する意味は勝利の雄叫びなのだがそれは「試合」ではなく「勝負」......気になるあの人への大躍進の意気込みなのだ。
「全員参加だからね!話し合って決めてね〜」
話し合い......何かと避けられてる瀬徒には無縁の話だろう、適当にオコボレにでもしようと窓を眺めてたら......
「おい、お前なに出るんだ?」
さっきまで目に熱意を灯していた鈍感系主人公が話しかけてきた。こいつは運動神経もいいので活躍出来るだろう。何ともこいつに御誂え向きのイベントだ。
「んー俺は適当に残ったやつでいいかな」
「お前なぁそんなんでいいのか?楽しめないぞ?」
楽しむねぇ...... お前みたいにキャーキャー言われたらそりゃ楽しいだろうよ。少しはモテない男子高校生の心情も拾って欲しいものだ。
「良いんだよ、俺はそれで」
最近は何かと変装を解いてきてたが認識を改めないといけない。この容姿故に得することも確かにあるのだが厄介ごとも同時に引き寄せてしまうのだ。運動会もカツラとマスクをつけての参加だ。激しい運動もできないだろう、そう考えると一番無難そうなのは......
締め切りの時間も刻刻と迫る中...... 一様に黒板に書いてある種目の下に名前を書く人たち
(やっぱサッカーだよな、一番人数も多いし 何より隅っこで立っているだけで良い......)
幸いなことにうちのクラスは運動部が多いので皺寄せがこっちに来るなんて思わなくて大丈夫だろう。
大方書き終え、前でたむろしていた影も晴れ露わになる結果。
意外にもクラスで人気な種目は人数が少ないバスケや陸上だ。 サッカーは人気があんまりなかったのだ。
サッカー部所属のやつですら陸上に行った理由は......
(浅ましい奴らだ、大方女子に応援して欲しいからだろう。サッカーなんて活躍すればそら目立つし良い印象も与えられるだろうけどそれは一部の奴で_______)
根暗な俺が何を選ぶのか気になるようで疎らに集まる視線も気にせずに、未だ4人しか埋まっていないサッカーの元に名を連ねる。サッカーを選んだ4人からは何とも言えないような顔をされている。
「うわ〜あいつ入ってきたぜ......」
「こりゃ応援も期待できそうにねぇな......」
「佐藤に瀬徒.....それはやばいな」
影でクスクス笑って居る君たち 聞こえてますよ。
佐藤君も運動会が嫌なのか終始悲しそうな顔をして座ってる。
全員が記入し終え、騒々しかった教室も静かになる。 集まった参加希望がひどく偏っている
サッカー部門は佐藤君を初めとしたインキャ5人衆 あと6人も集まりそうに無いのだが
そこは人数を超過したバスケと陸上の奴らで話し合いをして決めてもらうらしい。
応援のこなさそうな陰の此方側にきたくないのか、必死に話し合いをして居る。
「おい お前サッカー部だろ、行けって」
「はぁ?たまにはサッカー以外もやりたいんだよ、何ならお前が行くか?」
「俺はバスケ部だから無理だね。」
野太い声で言い争うバスケ希望の人達 どれだけ此方側に来たくないのかわかるだろう......
何時迄も終わりそうにない平行線をたどる争いも、一人の聖女の介入で事は動き出す。
「むぅ〜私達ちゃんとサッカーも応援するから誰か行ってあげないかな?」
「え!?姫川さん応援に来てくれるの?」
バスケ希望のチャラそうな奴が嬉々とした声をかける。
「もちろんだよ!みんなの活躍見たいし!」
鼻をふんすと鳴らし、ガッツポーズをしながら語る姫川さん。それだけでやる気が出る一同
「ん んじゃあ俺行こっかな〜」
「はぁ?俺が行くわ お前はバスケやりたいんだろう?俺に任せろ」
終わると思われた話し合いもまた平行線に......
そんな様子にあわあわする姫川さん、さぁ男気を見せる時だぞ佐藤君 イケメンから幼馴染を奪い返せ
すっと椅子を引く音が聞こえる、心の中で佐藤君を応援するが_______
「おい良い加減にしろ 小春が困ってるだろ」
「ゲェ 伊達......」
「ほんとそうね、貴方達は黙って正樹さんの言うことを聞いてれば良いのよ」
追撃するようにキツイ口調で語る ドリルの申し子。 伊達ハーレムの一員で校内でも人気を集める美女達に嫌われるのでは彼らも厳しいのだろう。てか名前呼びまでに発展したのか、手が早いな.....
「「......ごめんなさい」」
あれほど言い争っていた二人は潮らしくなり、少し嫌そうな顔をして此方側に来たのだった。
なろう新参者故にランキングとかわからないんですが
自分のも載っていたのでしょうか? ただこんな小説あればいいなと思って拙い頭捻くりだしてできた小説も多くの方にブクマして頂きありがたい限りです。過度の自虐も読者様に失礼だと思いますし、今後ともご愛読よろしく御願いします。