お手伝いをするイケメン2
喫茶店「壊正」 何時もお昼時前には決まったメンバー......常連客が店内を賑やかせているのだが
この日ばかりはいつもとは異質な雰囲気に包まれていた。というのも_____________
(なんだこの客の多さは......)
しっかりと喫茶店で使われている正装を着こなしウェイターとして働いている瀬徒。ちらりと視線を動かせば我らが看板娘の琴音も忙しなく動いている。 最後にお手伝いに来たのは中学3年の春頃だ
その時もかなりお客さんが来てくれたのだが今回は異質も異質。
(俺が来てない1年間何があったのんだ?)
ふと扉を見たらそこで蠢く多数の人影、外を見たら長蛇の列が出来ていたのだ。
落ち着いた雰囲気が売りの喫茶店だとは到底思えない。店長の出すコーヒーも列を作るまでに至ったのか
と感心し店長の方をみると何とも困った顔をした強面と目が合う。 本職のヤーさんですら進んで道を譲る
顔造りからは想像も出来ないほど困り果てた顔がそこにはあった。
「店長凄いですね、ここのコーヒー確かに美味しいし人気になって良かったですね」
「いつもはこんなに混んでないんだよね......」
「え?そうなんですか? じゃあ何で......」
何時もは混んでいないのなら今日何が有るんだろうか? ガヤガヤと店内の音をBGMに思案する瀬徒をどこか冷めた目でみる店長
「多分、殆どが君目当てだよ、ほら見てみな」
そう促がされて初めて店内を見渡すと.......
成る程、店長が困るのも分かる気がする。だが訂正するとしたら"殆ど"ではなく”全員”だ
全員がこっちをうっとりと見つめている。普段ならこのような視線を受けたのならすぐに気付くはずだが
久々のお手伝いで緊張していたのもあったのだろう。
「ちょっと生真君!何サボっているの!お客さん沢山いるんだからもっと動いて!店長もちゃんと周りよく見て!」
立ち尽くす瀬徒に喝がはいる。申し訳無さそうに苦笑するのも様になる。対する店長も愛娘に注意された事で凹む仕事中の立場関係が分かるひと時でもあった。 余談だが、仕事をしている時の娘から父への呼び名は「店長」だ。
瀬徒目当てでくる客の大半は彼に何らかのアプローチを仕掛けている。写真撮影などはNGなのでそれ以外の事には出来る限り答えようとしている。 連絡先も沢山頂いたがこれに連絡するつもりなんて毛頭無い
握手や頭を撫でたり、壁ドンなんて安いもんだが 連絡先を執拗に渡してくる客は平日のお昼に屋上でみる獣とおんなじ顔をしているのだから怖くて連絡出来ない。
一心不乱に接客をやっているといつの間にか蠢いてた影も消え、長蛇の列もなく、店内は姦しい音で盛り上がっていた。未だに落ち着いた雰囲気は取り戻せてない。 過去類を見ない忙しさに瀬徒と琴音はほとほと疲れ果てていた。 だが終わりまであと少しそう思えるだけでやる気という火が一気に燃えあがる。
姦しい音を打ち叩くような音と共に入店する一人の影、さっき焚べたやる気も相まって最高の笑顔を__________
「いらっしゃ......」
え......ここ貴方がいる学校から遠い隣県のしがない喫茶店ですよ。何で貴方がいるんですか!?
いつもより鋭利そうなドリルを引っさげた我が校の女神もといお嬢さま、伊達ハーレムが一人の花崎詩織さん...... ふんわりと質が良さそうなワンピースに華やかな帽子 彼女の容姿も相乗効果で視線を集めてた。あの姦しい空間も
冷水でも浴びせたかのように静かになった。あぁおかえり何時もの喫茶店の雰囲気さん
想定外の来訪者に驚き数秒固った瀬徒、まずい、不審に思われたか!? 早く席に案内して接客は琴音に任せないと....... 幸いな事にあまり顔をみられなかったのだろう。これ以上接客するとバレかねないので
上手い具合にサボっている琴音にバトンを渡す。いきなり仕事を振られてムッとしてるのだろう
美形な顔を歪ませ頰を膨らませる彼女。
ーーーーーーーーー頼む、あの人の接客やってくれ、同級生だ。
ーーーーーーーーーえ!?あんな美人な人と? ......わかった これ貸しだからね!
ーーーーーーーーー貸しでも菓子でも何でもやるから頼んだぞ!
小声でコソコソ話す瀬徒達を訝しげにみる彼女、琴音は瞬時にバイトで使う愛嬌の笑みをみせ接客を始めたところを影で見守る瀬徒。
もうすぐ閉店の時間だ。落ち着いた雰囲気さんを掻っ攫っていた姦しい女性たちも退席し会計を済ませ帰って行く。お釣りを渡すときにねっとりと手を掴まれ苦笑をしながらも挨拶をする。
山場を乗り越え手伝いも終わり、未だに花崎さんに接客をしている琴音に声を掛けようとしたが
店長経由でも伝えてもらおう。
お手伝いの過酷さも鑑みてお小遣いも多くもらえた。親からの過分な仕送りがある分お金には困ってはないのだが、罪悪感なく使える貴重なお金に喜んでしまう。
行きとは違い、茜色に染まる空を見上げ変装をする、この時間のこの辺りは朝と違い人の往来も多くなるので下手なトラブルを招く自分の容姿を隠しざる負えない。
根暗な変装も決まったところで疲労の余韻に浸りながら、今日の夕飯くらいは贅沢しようと考え
人とぶつかる。
「あっごめんなさい」
ぶつかったのは高校生くらいの女性 恐らく彼女も前を見てなかったのだろう。
「怪我とかないですか?」
「ええ 大丈夫」
「私も前見てなかった。ごめんなさい」
「お互い気をつけた方がいいですね」
あははと愛想笑いを浮かべ立ち去る。何だか初めて会った気はしなかった。今の自分は聖女にも引かれるほどの容姿なのだが彼女は嫌そうなそぶりもせずに淡々としていた。
何度思い返して見ても結論にはたどり着かない。
茜色の空もまるで鮮血のように、赤く 紅く 朱い空の下立ち止まり顎に手をやり思案する
________________あんな人形のように綺麗な人、中学校にいたか?
順調に回っている歯車も、ちょっとした異物で滅茶苦茶に巻き込み、壊れる。
_________________________________________________見つけた。
いつも小説を書いているPCとはOSが全く違うので誤字脱字があるとは思います。
今回もアクセス有難うございます。是非ブクマお願いします
暫くはモブ視点で事を進めます。