「閑話」最愛を探すヤンデレ
きっと誰もが彼女の部屋を「気持ち悪い」と評すだろう。部屋一面に彼女が最も愛してやまない
人の「顔写真」が一面に張られている。陰から静写した彼の様々な表情を見るたびに彼女の心が熱烈にたぎる。 小学校のころから慕ってやまなかった人物、いろんな女性が彼にアプローチする都度その嫉妬という名の激情が苛烈に熾烈に鮮烈に高まっていく。
_______纏わりつくな
_______色目をつかうな雌犬が
_______お前にあの方の何がわかる?
_______二度と彼に近づくな
語ってしまえば止めどなく溢れる雌犬への罵倒。容姿だけで近づく犬たちに嫌悪感を抱きざる負えなかった。彼の浮世離れした美貌もそうだが真にすぐれたところは彼の優しさだろう。その優しさに触れた私だけが知っている彼の表情も、彼の好みも、彼の夢も、なんでも、お前たちが知らないようなことを私はたくさん知っている。
私は彼をずっと守ってきた。彼を妬む多くの猿共の悪意から、それを上回る悪意を持って消してきた。無理やり関係を持とうと画策するビッチだってそうだ。
自分らを親衛隊と名乗っておきながらやっているのは彼の追っかけで何も守れていないアホ共の尻拭いだって陰で私がやってきたのだ。親衛隊なんていらない、私さえいれば他なんていらない。
毎日彼を想う、あの天使のような微笑みが自らの罪を浄化してくれてるような気さえする。彼だけが私を許してくれる。彼だけが私に優しくしてくれる。中学の時は彼とは緊張して話せなかった、だがいつまでもそうしている場合じゃない 彼だって異性を意識する多感な年だ。普段は内向的で臆病な私も彼のことを想えば強くなれた、一歩踏み出そう 彼なら私を受け入れてくれる。
貞子と言われる所以となった垂れた長い髪を切り過去の自分と決別する。月の光に照らされて人形を思わせる精巧な顔づくりがあらわとなる。
本来であれば綺麗なそれも薄暗い部屋も相まって今では呪いの人形とでも言ったほうがふさわしいようにも思えた。
そっと彼を模した手作りの人形を豊満な胸部にはさみ抱きかかえる。生気のない顔が上気する
今度は直接貴方にやってあげたい。普段は下卑たる視線を集めるだけの脂肪の塊も貴方に奉仕するために役に立つのなら嫌にならない。 貴方との高校生活......きっと多くの雌犬に絡まれることだろう
どうか安心してほしい 私がそばに立って守ってあげるから......そしてあなたと_________________________________________
彼の写真に唇を当て妖艶に微笑むのであった......
色のない世界が続く、貴方がいない世界になんている意味がない。どうしてあなたは私の元から去ってしまったのだろう? あれほど夢想した貴方との高校生活 貴方がどこを選んでいても合格できるように毎日一生懸命勉強もした。なのに......どうして......
心機一転 中学の時とはまるで別人のような私 貴方に振り向いてもらおうと時間が許される限り自分磨きをした。入学式会場で貴方を探すもそれらしき人物がいない。ちらちらと私と胸に向けられる下卑た視線がイラつきを加速させる。
「すいません、新入生の名簿もらえませんか?」
つまらなそうにボーっとしている受付の人に声をかける
「あーはいどうぞ」
そう無造作に渡される名簿をかすめ取る。一瞬顔を顰められたがどうてことない。
名簿をあけ貴方の名前を探す。ばしばしと勢いよく捲る。その必死な形相に彼女に声をかけようとした男たちが引き気味に控える。
探す さがす サガス sagasu...... 頭の中で巡る貴方の名前 廻れば廻るほどその存在は色濃くなる。
入学式の時間が差し迫っているにもかかわらず一心不乱に探す彼女に声をかけられる人なんていない。 それは先生ですら怖気ついてしまうほどに......
思えば貴方の進学先は親衛隊の中でも謎につつまれていた。先生に聞こうにも脅そうにも知らないの一点張りで全然口を割らないし、親衛隊が本人に聞こうにもはぐらかされてばっかり。
執拗な監視と聞き取りのもと行き着いたこの学校ですらハズレ......ならどこに?どこに貴方がいるの_____________?
_____________探すから待っててね、瀬徒君......
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