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手伝いをするイケメン

 高校生になるとお金がかかるのは誰もがそうであろう。それは当然瀬徒にも当てはまっている。


 三年間の学園生活で大きな基盤ともなりうる4月に彼は一度もクラスメイトから遊びに誘われていない。彼の薄気味悪い変装は「とりあえず誰でもいいから話しかけよう」の誰でもいいという範疇を超えているのだ。 彼が四月でもっとも会話したのは伊達でもなく佐藤君でもなく一人の獣 黒羽葵のみ、

 屋上解放の対価に彼女と毎日お手製の弁当を屋上で食べるという何とも男子諸君なら大喜びしそうな条件なのだが......


 災難なことに彼女と昼休みに二人でいるところを幾度なく見られているので、そこに変な邪推をする者まで出てきている始末だ。彼女はそれを怒るでもなく嬉しそうに体をくねらせるので本当にやめてほしいところ。 彼女狙いの男性教諭たちからは授業中幾度となくあてつけのように指名してくるし

 そんな注目まで浴びている奴と一緒にいたくないのか佐藤君ですら自分から話しかけに来たりはしなくなった。 気弱な佐藤君が火中の栗を拾いに行くなんて期待をしないほうがいいだろう。数少ない友達にまで避けられ始めている現状に目をそむけたくなる。 


 がたんごとんと単調な音が自身の思考を後押ししているようだ、物憂げに車窓から景色を見る絶世の美男子にたまたま乗り合わせた乗客からのひそひそ声が聞こえてくる。


「あの人有名人かな?」 


「超イケメンじゃん声かけてきなよ!」 


「えぇ~釣り合ないよう」 


 ワザと大声を出して気を引こうとする彼女たちの方を見ずに眠ったふりを決めつける。 

 そんな格好も様になるようでキャーキャー車内お構いなく黄色い声を上げる。薄目を上げてみると

 女子大生くらいの二人組で二人ともそこそこには可愛い容姿をしている。 常に熱射のように刺さる視線に耐えながら微睡に消えいくのだった......





 喫茶店「懐正」 親父の知り合いが経営している店で見つかりにくい場所にあるものの

 店長の出すコーヒーの味に熱狂的な固定ファン続出。それに加え見たこともないような天使がここで極稀に働いてるという噂が拍車をかけてこのあたりでは名店とされ人気がある。


 まだ準備中なのだろう、「close」という立札が味を出している木製の扉の前に立ててある。 

 今回瀬徒は客としてではなくお手伝いとしていくので意に返さずドアノブに手をかけ入店する。


 店内はメイドカフェとは違い落ち着いた雰囲気に包まれている。席は6席あり カウンターは12席

 あんまり大人数は受け入れきれないがそれでも効率よく店内は回っているらしい、ある時期を除いて......おそらく今日もその時期なのだろう、というか瀬徒が手伝いに行く日はいつも

 店内に人があふれる。その日はコーヒー以上にお目当ての物ではなく者、何を隠そう

 我らが瀬徒生真である________ 


「桐生さんこんちは~」 


 奥で仕込んでいるだろうこの店のボス 桐生幸一に声をかける 


「おー久しぶりだね!助かるよ」 


 人の良い笑みを浮かべる強面オジサン、親父の学生の頃の友人らしい。大学を卒業後に就職したがやめて故郷のこの地で店を開くに至る。奥からどたばたと落ち着いた雰囲気に似合わない音を立てて近づく影が、



「あー!! 生真君だ!!」 


 透き通る鈴が鳴る声で話しかける一人の美少女、桐生琴音 赤茶色のロングヘアーが似合う同い年の高校一年生だ。名前から察せられる通り店長の娘さんでこの店の看板娘。彼女にとっては幸いなことに店長の強面は受け継いでいないが身体能力の化け物具合には

 彼の面影を感じざる負えない。 


「久しぶりだね 琴音ちゃん」 


 中学の卒業式以来からだろうか? 瀬徒は卒業式終了後すぐ隣の県に引っ越したので

 中学の時みたいに中々あえてなかった。 


「生真君彼女とかできたー?やっぱり超イケメンだから中学の時みたいに女の子ほっとかないでしょ?」 


 そう言ってどこか落ち着かない感じで話しかけてくる。少しばかり目が潤んでいる気が_________


「まさか、 俺高校では変装してるんだよね」 


 ほら、と彼女に変装時の写真を見せる。それを食い入るように見る彼女 


「え 嘘、これって生真君なの!?」


 心底驚いた感じで訪ねてくる、やっぱり可笑しいのかと心の中で苦笑する。


「このせいで彼女とかできないし気味悪がられているよ」


 ちょっと困り顔をつくり悲しそうに眼を伏せてみる 


「だ 大丈夫だよ!!隠したほうがいいよ!!絶対に!私以外には見せちゃだめだよ!!」 


 そう捲し立てる彼女、いや見せちゃダメってこれからバイトをするんですが......そう思案していると背後から奥に戻っていたはずの店長から声をかけられる。


「オマエ、琴音に手を出したらわかってんだろうなぁ?」 


 ドスの聞いた声で瀬徒を脅す店長の目には闘志が宿っていた。誰が893顔負けの屈強な強面おっさんが大事にしている愛娘に手を出すのだろうか?そんな勇気のあるやつがいるのなら見てみたいわ。 


「手なんかだすわけないじゃないですか~」 


 そんなのべつ幕なしに女子と関係を持とうとする猿ではないのだ。この容姿故に襲われることがあるのだが自分はまだ清いままだ。安心してくれ 


 ちらりと視線を動かし琴音をみるとどこか不機嫌そうだ。


「む~お父さん!生真君にセクハラされた!」


 うえーんとワザとらしくゴリラに泣きつく彼女 


「え!?ちょ 琴音何言ってんだよ!」 


 本当に洒落にならないので口より手が先に動くゴリラの説得を試みる。

 もうすぐ開店時間なのにいつもの茶番をやっている暇なんてないぞ! 


「店長 誤解です。琴音が勝手に____」 


 言っているという制止の言葉を無視し生死を決めるであろう一撃を決める。紙一重で避ける瀬徒


 さすがの当事者琴音も止めに入る。 


 毎回オープンする前に始まる茶番 高まる緊張も爽やかな清涼のごとくすっきりする。


 三人で気合を入れ、これから入店してくるお客さんに最高のおもてなしを______ 


「close」から「open」に変わる立札と共に緩んだ現場もきつく締まる。慌ただしい一日の始まりだ。








いつの間にかブクマの数が500超えてました。回を追うごとに執筆するのが楽しくなってきている自分がいます。数に囚われず好きに書いていくことを忘れがちですが自分を見失わずにまい進していきますので応援よろしくお願いします。 一日一話! 

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