042 笑顔
地下にも何人もの襲撃者がいたはずなのだが、逆に襲撃されていた。軍人崩れ、マフィア、チンピラといった寄せ集めの集団であり、統制もなにも無いようなものだったが、それなりに戦い方を知っている集団でもあった。
が、戦場で味わったこともない恐怖を感じていた。ヘラヘラとしまりのない顔と表情で無防備に現れたかと思うと、ちょっと道に落ちているゴミを避けるような感じで銃弾を避け、ヒラヒラと手を振る感じで銃弾を弾き、近づけば拳の一撃で床、壁、天井に叩き付けられて、無力化していっていた。
「なんだ!? ありゃ、化け物か!? 」
一人のスキンヘッドの大男が離れながら、ナイフをもって交戦している一人の仲間を見る。
「あはは。遅い遅い」
笑いながら、構えもせずに何度も連続で繰り出される突きを避けていく。普通なら、圧倒しているはずなのに、焦燥が焦燥を生み出し、汗だくでナイフの一撃を繰り出していくが、ナイフを手で弾き落とし、さらに天に向かって蹴りを繰り出す。
構えすら見えず、ただただ、速く爆発的な破壊力をもった蹴りが男の顎に直撃し、吹き飛ばす。
「さてさてさて。素晴らしく狂わしいほどに愛しい皆さん、もうちょっと遊ぼうか? 」
目の前の少年とも言って良いような風貌の男にとって、戦いですらないようだった。その気になれば、瞬時に撃破できるはずなのに、それをしようとせず、手を抜いて撃破していく。手を抜いても問題がないほど、実力差があってしまった。
「戦いがつまらないからさ、遊んでいるんだよね」
そう言って、それなりに楽しんで、それなりにつまらなそうに。相手の打つ手が全て判るチェスをプレイしているような、判ることは楽しく、勝負そのもはつまらないゲームにいるような。
「さーて、ちゃっちゃと終わらそうか。夜までには帰りたいからさ」
粗悪なリボルバー拳銃を構えた大男に向かって言った。ゴーグルごしには、目を細めてられていたが、瞳の奥底には奇妙な光が宿っていた。




