031 封印
世界最大都市のジルバードであるが、近隣の衛星都市との間で都市連合体という共同体を作り上げ、外敵に備えている。都市連合体軍という軍事組織も存在し、大陸でも屈指の戦力を有するに至る。
では、外敵とはなにか?
北部には領土の半分が万年雪に囲まれた国家があるし、南部には巨大国家が存在する。
それらの国々とは、長年にわたり、幾つもの外交問題を抱え、過去数度にわたり戦争が起きている。どちらの国にとっても、安全上倒さなければならない敵と認識しているのだ。
だが、それ以外にも敵は居る。内部にである。
生活や環境の不満をジルバードに向けた連中が存在する。
それらがテロリストとして活動しているのだ。
そんな彼等に、今まさに、ソードギルドアリーナは占拠されるという前代未聞の事態が引き起こされていた。
「警備は?」
『複数のルートから入り込み正面以外は突破されました。警備隊と軍には連絡済です』
「あ、っそう」
そうは言っても、この事態をどう解決するのか。
正直言えば、久しぶりに手応えのある挑戦者が現れたというのに要らぬ水差しである。
興ざめも良いところだ。
リンクアーマーで、テロリスト達を見る。
機体は、古い量産型の代物だ。しかし、確かカタログスペック上は悪くない機体であったはず。装甲の整備性が良いらしく、組織での運用に向いた機体である。
『聞こえるかね?』
係員とは違う、男の声が通信では入る。ソードギルドアリーナの運営に携わる人間のはずだ。
「何?」
『依頼を出す』
「ん?」
『奴らを本気で駆逐しろ。手違いで軍にまで連絡がいってしまったが、軍が来る前に奴らを駆逐しろ。ソードギルドをなめた連中がどうなるか見せしめにしてやるのだ。いいか? 一切の容赦なく撃破しろ! 撃破した分だけ報酬は弾む』
「そういうことね。いいよ。たまには本気を出したいし」
『では、すぐに始めたまえ』
ドミニクはにやりと笑う。
本当の本気で戦うなど久しぶりのことだ。
コックピットにある、外付けで付けたボタンを取り出す。厳重に封がしてあり、コードが伸びている。本来は備わっていない装置で、後付けで付けられたものだ。
封を解き、中の重いボタンを押した。
ヘカトンケイルの装甲の隙間が開き、廃熱のための蒸気が噴出される。
その後、全身の装甲のいくつかが、炸薬によって弾き飛ばされて、多少スリムな外見へと変貌を遂げる。
さらに、肩の上から二本、左右の腰から二本、腕が伸びて、飛ばされた装甲を拾い上げた。装甲は、長方形の形に柄が付いていて、剣になっている。
周囲のテロリストが警戒し、ヘカトンケイルを取り囲み始めるが、時は既に遅い。
合計八本もの腕と八本の剣を持った異形のリンクアーマーが姿を現していた。
これこそが、世界唯一の異形のヘカトンケイルの真の姿であった。
「さーて、向かってくるのか、向かおうか? どっちでもいいかな?」
ヘカトンケイルが、大きく飛んだ。
着地先からはテロリストが蜘蛛の子を散らすように離れていくが、着地後にはヘカトンケイルは囲まれていた。
テロリスト達が一斉に攻撃を仕掛けてくる。剣、槍、斧と得物はバラバラであるが、三百六十度全方位から迫る、それら全てを八本腕が裁いていく。
ドミニクの脳に莫大なリンクアーマーの感覚の情報が洪水のように流れ込んでくるが、高い適正値がそれらを受け止めていく。
彼の異能が、複雑で精密な動作を可能にして、剣を振るっていく。
「さぁさぁさぁ素晴らしく狂おしき愛しい君よ、もっと遊ぼうよ」
ヘカトンケイルが、その場で回転しながら、テロリスト達に凄まじい程の攻撃を仕掛けていく。ヘカトンケイルを中心に、まるで嵐であった。
一機、また一機と、腕や頭部を切り刻まれ、脱落していく。
八本腕の猛攻は、近寄らせることすら許さず、圧倒的な蹂躙であった。
骸のように転がる、リンクアーマーをヘカトンケイルは踏みつけ、蹴り上げ、空中でさらに分解していく。
次から次に、脱落していき、少なくなるとテロリスト達がガレージへと向かう。
だが、ドミニクは逃がさない。
巨大なリンクアーマーで、恐ろしいほどの速度で迫り、背中から斬りつけた。
リンクアーマーは、正面からの攻撃を受け止めることが原則となっているため、背後は正面よりも装甲が薄い場合が多く、ヘカトンケイルの剣は装甲を貫いて、そのままパイロットを貫き殺していく。
こうして、たった数分で周りのテロリスト達は蹂躙され尽くしてしまった。
戦いですら無く、一方的な虐殺でしかなかった。
ソードギルドを敵に回すことの愚かさを知らしめたのだ。
「終わりかな?」
そう呟いた時、挑戦者の槍が目前に迫ってきた。




