All travelling becomes dull in exact proportion to its rapidity.
あらゆる旅はその速さに比例してつまらなくなる。
『高崎~高崎です。高崎線、上越線方面へお越しのお客様は連絡口を過ぎた場所にいる駅係員までお申し出ください。』
『振替輸送証を受け取って、八王子、熊谷方面へは5番ホーム 10:20発 普通 大宮・八王子行 8両編成』
『常磐線、東京方面へは6番ホーム10:27発小山行きで伊勢崎にて東武線へお乗り換えです』
「此方のほうが早そうだな、楽だし」
「これでいいんじゃない?」
「じゃ3番乗り場へ向かいますか!」
...この時、2人は肝心な放送を聴き逃していた。
『なお、5番ホームの10:20発 普通 大宮・八王子行は後ろ3両を途中の高麗川にて切り離し、大宮行に、前5両が八王子行となります。八王子には12:42着、大宮には12:34着となります。』
この場合、図で示すとこうなる。
←至 八王子
___ ホーム __
□□□□□ □□□
└八王子┘└川越┘
このことに2人が気づかなかった理由が2つある。
八高線は非電化区間と電化区間の2区間がある。
このうち非電化側である高崎-高麗川間の列車は高麗川で折り返し、高崎へと戻っていくため、そもそも川越への直通運転なんか想定されていないのだ。
そもそも列車に装備されている方向幕に"大宮行"が存在しないのである。(八王子は存在)
このため、全車で八王子行の幕が表示されている。
ホームには発車標があったが、本来5番ホームが使用される高崎線の運転見合わせのため使用されていなかった。
「あっちの車両ガラガラじゃん」
「あっち行こうぜ、どうせ八王子まで寝れるし」
ストレスか、それともホームに吹きつける北風から開放されたからか、ボックスシートを占領した2人は発車までに寝てしまった。
『高麗川~高麗川~です、この列車はこれより後ろ3両を切り離す作業を行います、作業終了まで車内にてお待ち下さい』
『2番線、八王子行きの列車が発車します、ご注意下さい。』~♪
2人は発車メロディのけたたましい音で目が覚めた...時既に遅い。
『2番線、大宮行きの列車が発車します、ご注意下さい。』~♪
目が覚めたとともに失敗に気づいた2人にとって再び鳴る悪魔の音。
「......」
「......」
臨時列車は非情にもダイヤ通りに走り出す...
この場合は望まない遅れですが...