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伝説の幕開け
陽の光
鳥のさえずり
穏やかな風が世界を包む。
リーベルタースの朝は早い。農家が畑を耕し、兵達が眠気まなこをこすりながら見廻りへと向かう。
「ふぅー、支度はこれで良し」
この国、唯一の酒場兼喫茶店で働く彼は腰に手を当てながら、そう呟いた。
店の窓から見える、いつも通りの日常に多少の不満を抱きながらも、黙々と開店の準備を整える。
昼になり、畑仕事や見廻りを終えた者達が彼の店を訪ねる。
挽きたてのコーヒーの香りが彼らの腹の虫を鳴かせている。
夜になり、酒場へと変貌するその店は、昼とはまた違う賑わいを見せる。
歌えや踊れとそこかしこから声が響く。皆陽気に手を叩き、歌を歌い国民一人一人が幸せそうに暮らしていた。
しかし、その日は少し様子が違ったのだ。