91.馬匹
馬屋に向かうと。
随分と閑散としていた。
牧童の若い男(俺より年下)が暇そうに対応している。
「はい、今は在庫がないので買取のみの営業です。」
イマイチ覇気が無い。
「荷馬車用の馬が欲しいのだが。」
「ああ、在庫がないのですが予約は出来ます。」
「在庫が無いだと?」
「ハイ申し訳ありません、数日前、軍の方が粗方借りて行きました。」
おいおい、馬車の目処が立ったのに馬ナシはないだろう?
「軍が?」
「そうです。王国騎兵が預けていた馬だけじゃなく。荷馬車用の馬で騎乗できる馬まで全部です。」
「荷馬車用の馬はあるのか?」
「有りましたが。今は全部、騎乗できる用にするために調教中です。」
「荷馬車用の馬で良いのだが?」
「今休憩中の馬は全て予約で一杯です。休憩が終わった馬から貸し出している状態です。」
「一ヵ月後ならどうだ?軍から返って来た馬は?」
「う~ん、今までの経験だと軍の遠征は一ヶ月から半年です。馬が帰ってきてもしばらくは休息させないと…。体重が戻りません。」
苦々しく言う牧童。
そういうものなのか?
ベスタは頷いている。
そういうものらしい。
俺は馬のコトは解からないからな。
馬には乗れるが馬のコトは馬房頭の言うとおりにしていた。
まあ、途中で乗れる馬が居なくなって最近は乗っていない。(体重的に。)
「荷馬車なら牛と言う選択があります。簡易馬車ならロバと言う選択も。」
「ウシですか…?」
嫌そうな顔のベスタ。
「何か有るのか?」
「いえ、人がハミを持って誘導しなくてはいけません。歩みも馬より遅く人と変わりません。重いものは運べるんですが…。」
「ロバはどうだ?」
「ロバですか…。騎兵がロバ…。」
なるほど、馬に乗るのがステータスなので、ロバはイヤなのか?牧童に尋ねる。
「二頭引きの馬車なんだが。」
「ああ、ロバの二頭引きは難しいですね。ロバはあまり協調性がないので。」
「フルサイズの元が軍用馬車なんだ。重いものは乗せない。」
「ウシ一頭か馬二頭引きですね、ロバだと相性が悪いと二頭引きは難しいです。大人しいメスのロバは…。今は繁殖期ですので出せるのは無いですね。」
「こまったな、時期が悪いのか…。」
「うーん。ワケありの馬なら何とか…。」
「ワケアリ?」
「ああ、馬にも性格が有るので。気性の荒い馬や大人しい馬。怖がりなヤツとか。勇敢なヤツとか居ます。性格上あまり使役にそぐわない馬も出てきます。そういう馬が残りますね。」
「うん、馬なら何でも良い。そんな馬を都合してくれ。」
ベスタの強い口調で言う。
そんなにウシやロバが嫌なのか?
「えーっと。休憩中の馬で二週間後に来る馬が二匹居ますが…。止めておいたほうが良いですよ。」
「なぜだ?」
「女の言うことしか聞かない馬なんです。」
苦々しく言う牧童。
なんだ。問題ないだろ?
「いえね。結構歳寄りの馬なんですが元騎兵の馬で長いコト乗馬主が女だったらしく。女しか乗せない馬なんです。そのくせ力があるので良い馬なんですが…何人も振り落としてケガ人が出てるんです、女には優しいんですがね。」
「問題ない。ソレで頼む。」
いきり立つベスタ。
「はあ、その相棒の馬が、牡馬のクセして大きな牡馬に良くなつく馬で雌馬や痩せ馬が相棒だと言う事聞かない馬なんですよ。まあ、今は両方放牧中なんですが…。」
まあ、このさい馬がBLでも問題ないだろう。
ココには馬すら攻めや受けを気にする貴腐人は居ない。
きっと、そんな馬車馬ごときで薄い本を何冊も書ける超脳内変換士もいないだろう。
「すまないが、もう既に馬車の手配は付いている。馬が何としても欲しい。たいした金は出せない、クセの有る馬で良い。コチラには馬の扱いに長けた者がいる。その馬を三週間後に借りたい。」
「ええ、良いですが…。あまりお勧めしません。まあ、二週間後にココに来るので見てから決めてください。」
話と手付け金(金貨1枚)だけ払い馬屋を後にする。
ふむん。コレで馬の用意は何とかなった。
後は冒険者の道具だな…。
┌( ┌ ^o^)┐ヒヒーン




