86.魔力
マルコにラウンジに誘われた。
今日のハアハアは終わっているので誘いに乗ってラウンジの丸テーブルの一つをミソッカス共で占領する。
テーブルクロスは洗いざらしたモノに変わっている。
給仕がティーセットを積んだワゴンで来てお茶を用意してくれる。
お茶が行き渡るとワゴンを残したまま給仕が一礼して立ち去る。
後はセルフサービスだ。(片付けは給仕がやってくれる。)
給仕が立ち去ると全員、銅のマグをテーブルに出した。
「おい?なんだお前ら?ココでも練習か?」
「そうだよ。食後に何時も練習してるんだ。」
答えるフェルッポ。
「練習熱心なのは良いが。魔力の総量に気をつけろよ?余力を残しておかないとイザと言うとき詰むぞ?」
「大丈夫だ、後はもう寝るだけだ。」
カールが肩を竦めて答える。
心配だなコイツら。
収納から低級ポーションの小瓶を15本取り出す。
一つずつサーチしてチェックする。うん。悪くなっていない。
収納魔法は劣化が進まないが取り出したモノは点検する癖が付いてしまった。
まあ、戦闘時はそんなヒマは無いが。
「ほら、一人3本収納しておけ。イザと言うときだけ。使え。」
「イザってどんな時?」
不思議そうな顔のフェルッポ。
「夜襲を受けたり緊急避難の時だ。」
「寮で夜襲か?」
「マルコ心構えの問題だ。ジョン、お前だって非常食持ち歩いているだろう?」
無言で頷くジョン。
「心構えねえ…。」
呆れ顔のマルコに適当な答えを与える。
「軍人は準備が重要だろ?」
「そうだな。」
「そうだ、」
頷く乳タイプ兄弟に首を傾げるフェルッポ。
「そういうものなの?」
「うーん軍人って大変だね?」
まるで他人事の様なアレックスの態度に迷いが断ち切られる。
ウッカリするとコイツら死にそうだな…。
よし、ついでだ。
「ついでに、ポーションの劣化を抑える方法を教える。」
渡したポーションで練習する。
ポーションの魔力を読み取って、合わせた魔力を送るだけだ。
ただし送り出す魔力の量が大きいので皆クラクラしている。
しまった、まだ教えるのが速かったか?
「きついな、コレは。」
魔力切れが近いカール。
「うーん、魔力の総量が多い時にやっておくしか無いな。安全な場所で寝る前だな」
「コレで劣化が収まるのか?」
ジョンは懐疑的な目で低級ポーションの瓶を見ている。
「まあな、道具がイザと言う時に使えないでは困るだろ。定期的な点検も必要だぞ。」
「まあ、そうだが…。」
「兵に配るポーションの無駄が無くなる。家の出費が減るぞ。あと死傷者もな。」
俄然、真剣な顔になって練習する乳タイプ兄弟。
やれやれ、脳筋共は具体的事例を上げないと真面目にやらない。
ソコは応用として自分で気が付いて欲しいモノだ。
魔法使いならな。
サロンから部屋に戻ると、メイド達がラフな格好をしている。
うむ、何か久しぶりにベスタの顔を見た気分だ。
「ベスタ、明日は昼から冒険者ギルドへ行き登録する。マルカ、エミリーを誘いなさい。一緒に昼食を食べよう。”エール”を食べに行こう。」
「「はい!!」」
「その後はベスタに仕事を頼みたい。マルカは休みだ、自由にしてよい。エミリーが一緒なら町に出ても良いが一人になるな。」
奴隷に因縁付ける平民が居るかもしれないからな。
「ハイ。」
「明日の為に小遣いを渡す。」
メイド達に銀貨1枚づつ渡す。
うん、ゲームならコレで好感度がアップするハズだ。
さて、明日に備えて寝るか…。
川の字(激流)になって寝ました。




