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83.行商準備

店に入ると店番は娘だった。

「こんにちはオットー様。」

「ああ、商品の包丁を持って来た。イレーネはドコだ?」

「奥の作業場で収納袋を作ってます。ご近所の奥さんと一緒に。」

「なるほど、手が早いとは思っていたが”人海戦術”だったのか。」

「JIN…。なんですか?」

「ああ。お針子さんを呼んでいたのか?」

「ええ、もう既に200袋は完成します。追加の袋を作ってま…痛い!!」

娘にデコピンを喰らわせる。

「そんなに作ってどうする!!」

「えー、もっと売りますよ。」

「売れるか!!包丁なんて20年使えるんだぞ!!この町に何家族在ると思っているんだ!!もう行き渡ってるぞ!!残り200で打ち止めだ!!」

「え?でも!!あっ、ぎょ行商で売れば売れます!!」

「田舎は物価が安いんだ!!金貨5枚の包丁なんて売れるか!!」

「安くすれば…。あ、止めて、その指イタイ。」

でこを押さえる娘。

まったく、困った娘だ。

「で、行商の計画は進んでいるのか?」

「え?行商いくんですか…。え?待って。なんで?」

デコピン発射準備。

「軍が山賊の討伐に出発した。」

「へー。いや、待って何で」

ターゲットロックオン。

「決まってるだろ!!回廊が回復するのは時間の問題だ!エンリケの通った道を行商に行って村々で顔を繋いで仕入れをするんだ!!」

「え?だれが?(発射!!)痛い!!」

「お前がだ!!お前が行かなければ、お客さんは信用してくれない。馬車を準備し始めろ。商品と金を集めろ。情報を集めて軍が街道を制圧したらスグに出発しろ。」

「え?でも。商品は何を集めれば良いんですか?」

「エンリケが出発した時に積んでいた商品の明細は在るか?仕入れの台帳だ。あと、どの村へ回っていたのか分かる物は在るか?」

「あ、はい、在ります。」

「それがきっと村々で頼まれた商品だ。必ず届けろ。無駄になっても良い。地図で場所を調べて移動計画を立てろ。余裕を持って回避する脇道も調べろ。」

「あの。昔、良く父と一緒に回ったコトが有ります。ここ数年は在りませんが。」

「よし!良いぞ。回った家も覚えているな?売った相手も買い取った人の顔もだ。」

「あ、たぶん村に着けば思い出すと思います。」

「よいぞ。娘。後は馬車と馬だ…。まあ、馬は借りればいいかも知れんな。馬の扱いはできるか?馬車は扱えるか?」

「あ、はい、馬車は行商の時、何度も扱いました。たぶん…。でも、馬はちょっと…。」

まあ、数年前と言っていたからエンリケはまだ小さい娘に馬は触らせなかったんだろう。

大人でも蹴られると死ぬからな。

馬の扱いに慣れた腕の立つ信用できる冒険者で長旅に慣れている者か…。全てを揃えるのは難しいな…。

いや、一人いるが…。

冒険者では無いが元軍人の騎兵だ。輸送護衛任務ぐらいはできるだろう。

女同士だし都合が良いだろう。男が居ると揉めそうだ。

「エンリケと村を回った時は他に誰か居たか?護衛の冒険者とかだ。」

「はい、毎回、一人冒険者の護衛をギルドに出してました。でも、盗賊に父も冒険者も…。」

「そうか。一応ギルドを通すのが無難だな。」

「そうですね。冒険者ギルドに行けば数日遅れですがドコの町を出たのか解かります。」

なるほど、冒険者ギルド間で情報伝達サービスが在るのか…。

「よし、解かった、馬に詳しい冒険者を連れてくる。こんど馬車と馬を見に行こう。娘。商品を集めろ。金は包丁を売った金だ。この200セット売れば集まるだろう。貯金は使わなくて済む。」

「はい、解かりました。」

「よし、では包丁を出す。奥の作業場へ…。ああ、イレーネ、こんにちは。」

「ようこそ、オットー様。」

「お母さん、あの、」

「ああ、イレーネ。袋はどれ位まで出来ている?」

「明日までに300が完成です、材料も裁断済みです。」

「そうか、ソレで終わりにしろ。そんなに作ってももう売れない。余った布は俺が買い取ろう。」

「はい、解かりました。」

「娘。包丁を200セット納品する。さらに今もっている100セットと交換用予備25セットを納品するコレで終わりだ。」

「交換用予備?」

「そうだ、不注意でダメにする客が来るはずだ、不良品と交換で渡せ。絶対に単品で売るな!!コレは商人のプライドだ!!」

「え?あ、はい。」

「フフフ、オットー様は厳しい御方ですね。」

「イレーネ。正直、こんなに困った娘は居ないぞ。」

「そうですね、少し甘やかしすぎたかもしれません。」

「やれやれ、エンリケに顔向けできないな。」

「えーあの、オットー様は父となにか在ったのですか?」

しまった!!また墓穴を掘った。どうしよう!!どう誤魔化す?

「娘。商人はとかく利益を求めるものだがソレは全て人の情の上に成り立っている。損得だけでは図れないモノだ。ソレは理解しなくても良いが不条理なモノとして納得しろ。人の心はモノサシでは計れない。」

良く解からんコトを言って誤魔化す。

何故か感銘を受ける母娘。

やった、誤魔化し成功!!

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