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79.鍋とフライパン

部屋に戻ると。

体を拭いて朝食を取る。

今日は錬金術の授業を受けよう。

校門の前でベスタ&マルカと分かれる。

錬金術クラスは相変わらず荒んでいる。

部屋の片隅で顔色の悪い生徒がブツブツ言いながら本を読んでいる。

マイト先輩がやって来た。

「おはようございます。マイト先輩。」

「おはようございます。オットー様。」

隣りに座るマイト先輩。

「先日はありがとうございました。実は。例の魔法インクの件なのですが…。思いの他、消費が速くて追加注文したいのですが。金貨1枚でどれだけ作れますか?」

「オットー様、かなりの量だったはずですが。ソレだと自作した方が安いですよ?」

「自作はしたいのですが、今は技量と知識が揃いません。追々自作への道へと進みたいのです。まあ、自分の工房を整備しないといけないのでしょう。寮住まいなので難しいのです。」

「たしかに。作業場が無いと難しいですね、簡易工作セットは購買で売っているんですが…。実はあまり評判が良くないんです。精度が出ないって。」

「うーん、やはり。作業場か…。」

エンリケの店の作業場を借りるか…。

いや、ソレだと別の作業が始まってしまうから集中できないな…。未亡人を揉む作業が…。

思案に暮れているとフラン先生が教室に入ってきた。

もうすでに授業開始の鐘の後だ。

「みなさん、ひさしぶりですね。課題の提出は授業後に受け付けますが。授業中に作業をした人はペナルティをあげますのでじゃんじゃんやっちゃって下さい。」

フラン先生が教室を見渡す。目が合って先生の顔が赤くなる。

「で、でわ、今日は。エンチャントの応用です…。魔石に魔力を充填して自動動作を行なえる様にしましょう。先ずは魔石の特性から…。」

背中を向け黒板に書き出すフラン先生。

魔石だと!!

ゲームでは金に替える以外、使い道は無かったはずだ!!

この世界では使い道が有るのか!!

いや、使い道が有るから売れるのだろう。

魔石が付いた魔法剣と言うアイテムも有った。

自分で魔法剣が作れるのか。胸厚だな…。

胸薄のフラン先生の背中を見て考える。

炎の剣とかだと。熱で鋼が悪くなるからセラミックを作らなければ…。

いっそのこと。マンゴーシュに電撃を付けて刺したら放電して焼く剣でも作るか…。

しかし、相手が鎧だとアーク放電で剣が鎧と溶着しそうでイヤだな。

使用者も感電しそうだ。

中二病武器は意外と難しいな。

あのアニメの様な…。どのアニメだったか…。

まあ良いだろう。ゲームに出てくる魔法剣を捕獲して解析しないと…。

「と、言うわけで。今日は授業終了までに魔石を使って何か作って提出して下さい。ソレで単位とします。」

「よっし!!」

マイト先輩がカバンから道具を机の上に並べる。

あれ?俺。魔石持ってないぞ?熊も狼もドロップしなかったからな。

「生徒オットー君、期待してますよ~。前回の罰で提出できなかったらかなり重いペナルティあげちゃいます。フフフ」

意地悪に笑うフラン先生。

おい、酷いな!俺のせいじゃないだろう

「あ、すいません。先輩。道具を持ってきてなくて。貸して下さい。」

「ああ、良いですよ。オットー様。使ってください。」

「あの、魔石も分けて欲しいのですが…。」

「オットー様。申し訳ありません。予備は今はこんな物しかないのですが…。」

マイト先輩が取り出した魔石は小指の先ほどの大きさの石だ。

魔石は基本的に大きさに正比例で魔力の充填が変わる。

小さいと魔力を小まめに充填しなければ成らない。

もちろん価格は大きさの二乗に比例している。

石のクセにこんな大きさでも結構な金額だ。

マイト先輩は小さい物の数を増やして対応しているようだ。

コレは困った。一個だけでは使える物が…。

変換効率が良い熱しか使い道が無い。

「フフフ~♪ペナルティ~♪。フフフ」

何故か機嫌の良いフラン先生。

なにか俺やったか?裸しか見てないぞ?

鉄のインゴットを出す。12Kgのネズミ鋳鉄に近いヤツだ。

魔法で先ず三つ分に分ける。

一つを鍋に加工する、参考は深スキレット型ダッジ・オーブンだ、フタはもう一つの塊で浅スキレット型にした。

最後の一塊は鍋敷きに足が3本生えた形に加工。

理科実験に使う三脚の様だ。3本足でもまさに五徳の如くだ。

裏側の中央に魔石を埋め込む穴を付ける。

しかし、熱量を変換するには魔力が足りない。

解析が進んでいる悪魔の紋章を利用する。

エロイ悪魔の胸に書いてある紋章だ。

胸の丹田に効率良く魔力を集める為のモノだ。

もちろんそのままは使わない。

人間が使う魔法に翻訳してある。

先輩から借りた鏨と金槌で裏に掘り込む。

魔石の魔力をスターターにして魔力を変換する回路だ。

周囲の魔力を集めて増幅する形だ。

うん、増幅率安定にはフィードバック回路を付けよう。

ショートすると怖いからな。

発振ハウリングしないように定数を考える。

増幅と発振は切っても切れない。それはこの世界でも同様のようだ。

増幅した魔力は表の回路で熱に変換する。

温度制御はどうしよう?

強-中-弱の三段階、最大300℃で発熱停止でよいか?

天ぷらならアレだがパン焼きならイマイチだな。

転倒停止&空焚き防止回路を入れる。

魔石の魔力が無くなれば自動的に魔力収集を停止するコトに成る。

フェールセーフ回路の組み合わせを考える。

鍋の取っ手の位置で火力表示だ。

鍋を回せば火力が換わる。

うん、取りあえず悪くない。

鍋に水を張って沸騰させる。

動作も自動制御も問題ない。

水を魔法で霧散させて鍋を冷やす。

「せんせ~完成しました~。」

「え?もう?何ができたの?」

「鍋?。」

「え?フライパンでなくて?」

「ソレはフタですがフライパンの代わりにもなります。」

「あら?そうなの?」

フラン先生のフライパンの持ち方が怪しい。

料理しないのか…?

いや、貴族は料理しないだろう。

あの世界では貴族は料理ができるらしい、独身貴族という人種だそうだ。

どんな連中だったっけ?

「どうやって使うの?」

「この”五徳”の上に鍋を置いて食材を入れ煮込みます。まあ、今日は水だけにしましょう。」

魔法で鍋に水を張る。

「”五徳”の裏の魔石に魔力を充填します。鍋を載せると鍋が加熱されて調理ができます。」

「なんだ、ただの魔法釜戸?」

「はい、そうです。鍋の取っ手の向きを変えると火力調節ができます。」

「え?調節?どうやって?」

「安全に配慮して傾けたり転倒したりすると加熱を停止します。」

「え?え?」

「空焚き防止機能付きで。鍋をダメにしません。」

「え?すごい。どうやって?」

「ああ、温度制御です。”サーモブレイカー”付きです。」

「おんど…。魔力はどうやって供給してるの?大きい魔石が要るでしょう?」

「ああ、”五徳”の裏に魔力供給回路を作りました。魔石はこの回路の駆動の為しか使われていません。魔石の魔力が無くなれば供給が停止して加熱を止めます。今ならそうですね…強で鍋が沸騰して芋が茹でる程度、弱で豆が煮える程度の時間ですね。」

「魔力?供給?」

「はい、魔法:熱変換では十分な魔力を確保するのは難しいので。周囲の空間の魔力を使用できる形に変換する構成です。魔力の濃さで動作時間が左右されますが出力は増幅回路と帰還フィードバック回路で出力は安定しています。」

「え?つまり?」

「奥様、釜戸の火起こしが要りません。片手でらくらく料理上手、手間なし。汚れなしで楽しいお食事。もう、灰で汚れるコトは有りません。」

収納から皮手袋を取り出し装備する。

鍋が沸騰したのでフタを鍋敷きにして机に置く。

「ほら。鍋を外せばこの通り。全然熱くない、これならお子さんがつい、うっかり触れても大丈夫!!火の後始末も要りません。怪我無い家庭で楽しい我家。戸締り用心、火の用心!!うっかりものの奥様にぜひ買って頂きたいこの商品!!」

「ええっ!欲しいです!!」

「今なら!!何と!!」

「いくらなんですか!?」

フラン先生が財布の巾着を握り締めて真剣な眼差しでコチラを見ている。

「いや、ごめん、考えて無いわ。」

「えー。」

「ああ、フラン先生。これ、提出します。では今日は失礼します。」

マイト先輩が手を上げた。

「あ、フラン先生、出来ました。提出します。」

「え!!ソコに置いといて!」

五徳を手に取り真剣な表情のフラン先生。

魔法回路が気になるらしい。

解読しているようだ。

「ああ、マイト先輩。食事はどうされますか?」

「うん、今日は食堂へ行くつもりだよ。」

「良かった。錬金術で揃える道具の相談がしたかったんです。お昼ご一緒でよろしいですか?おそらく。何時もの面子ですが。」

「うん、一緒に行こう。インクの納期も相談したいからね。」

「では、フラン先生、又、次の授業で。」

「うーん、ココが、こうしてこうなって…。あーなんでこんな書き方してるの?(ブツブツ)」

そのまま錬金術クラスを後にした。

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