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番外編:組合

(´・ω・`)番外編。その2

今日は月一回の会合がある日だ、仕事を早仕舞いして会場に向かう。

先月は出なかったが問題は無い、毎回来ないヤツもいる。

しかし、今月は何故か組合のボウスが来て必ず来て欲しいと回覧が来た。

役員を決める時しか来ないヤツまで呼び出されたらしい。

全員出席って何か有ったか?

会場に来ると偶にしか来ないヤツと知らない奴まで居る。

新顔か?いや違うな。

「今日は大入りだがなんか有ったのか?」

「ああ、鍛冶屋組合のヤツ等まで来ている。今日の話は拗れるぞ。」

鍛冶屋組合か…。工賃の引き上げか?勘弁してほしいぜ。

「揃ったようだな始めよう。」

刀剣販売組合の組合長が開始を宣言した。

「今日集まってもらったのは定例日だが困ったコトが起きている。まあ、コレを見てくれ。」

1本のナイフだ。

順番に回ってくる。

「いい、ナイフだな。地金も良いの使っている。」

誰かが呟く。

皆、匂いを嗅いだり背を叩いたりして品質を確かめている。

俺の所に回ってきた、軽いナイフだが、どちらかと言うと包丁だな。

隣りのヤツに渡す。

「悪くないな…これなら仕入れても売れそうだ。」

だな、まあ、後は値段だな。

「コレがどうかしたのか?」

若いヤツが言う、確か露天屋のヤツだ。

「ああ、ソレが最近大量に出回っている。包丁だそうだ。」

「なんで、又、包丁なんて。」

「雑貨屋で売っていたそうだが飛ぶように売れてる。」

「まあ、まあの品質だ、売れるだろ。」

「鍛冶屋組合の方どうぞ。」

アゴヒゲの生やした年寄りが出てきた。年寄りなのに未だ身体は漲っている。

確か引退した鍛冶屋だ。

「この包丁は困った包丁だ、先ず、柄が鉄で出来ている。始めに拵え屋から苦情が来たんだ。”こんなナイフ作るなってな”次に来たのは砥ぎ屋だ。”砥石売るのは構わないが砥ぎ方教えるな”って言うこった。」

「で、鍛冶屋組合内でこのナイフ作ったヤツを探したが誰も作ってない。銘も無い。ただ、大量に出回っている。」

「外国で作ったヤツじゃないのか?」

「まあ、そうなる。それなら、地金のクセで国が解かるから、切ってみた。ヤスリが負けたんだ。」

「は?」

「ヤスリより硬い鉄だ。この世のモノとも思えない。焼いてみて解かったコトはコイツは芯まで鋼で出来てる。」

「鍛えて無いのか?」

「鍛えてある、柄の部分までだ、全部鍛えるコトなんて不可能だ。そして解かったのが、コイツは継ぎ目が無い。柄を後で付けたんじゃ無い。」

「削りだした?」

「そうとしか思えない、だが、数本集めたが全て同じ形だ。鋳物でもありえない。」

「売ってるヤツに聞くしかないな。」

「そうだ、で、刀剣販売組合の皆様にご質問だ、この包丁に見覚えはあるか?」

「ない、」「しらない」「見たこと無いな」「うちでも仕入れたいな。」

全員知らない様子だ。

当てが外れたのかタメ息を付く鍛冶屋組合の方。

「そうか…。こまったな。」

「その雑貨屋に聞いたらどうだ?」

「聞いた、はぐからされた。」

「雑貨屋だろ?刃物は売らないハズだ。」

「包丁大小と砥石と入れ物セットで売ってやがる。コレなら雑貨だ。」

そうだ、針とハサミは鍛冶屋の仕事だが、裁縫セットは雑貨の範疇だ。

昔、コレで戦争になった。

「で、誰かが刃物を納めていると踏んだ、”雑貨と生地の店ビゴーニュ”って、北門に向かう通りの店だ取引の在るヤツは居るか?」

聞いたコトが無い店だ。みな顔を見合わせている。首を傾げているヤツもいる。心当たりは無いようだ。

「商業ギルドに聞いてみたら?」

「聞いた、皆だんまりだ。」

苦々しく話す鍛冶屋。どうやら何かやりあった様子だ。

「珍しいな。おしゃべりの商業ギルドがダンマリなんて。何時も要らんコト垂れ流す連中なのに。」

「まったく、そうだ、店に押しかけようとしたら止められた。」

「はあ?」

「どうやら、この。”雑貨と生地の店ビゴーニュ”は裏に何か在る店らしい。」

「近所の話だと元は生地の販売で雑貨は行商で売ってる店だそうだ。」

「生地屋が包丁ねえ…。」

「店の旦那が行商先で盗賊に殺られて。母娘だけで店は傾いていたらしい。整理屋と揉めていたと聞いている。」

整理屋は総称だ。王都の店は需要が多い。

店が空き家に成る様に仕向けるヤツ等だ。

もちろんソンナ奴等はギルドの連中が他って置かない。

が、希に辞めた方が良い店が在るとギルドもバックアップする。

「衛士は?」

「ダンマリだ。隊長まで震えて逃げ出す始末だそうだ。」

「なんだ、そりゃ?」

「ああ?そうか?生地屋だ。」

露天屋が何か思い出した様子だ。

「何か知ってるのか?」

「いや、露天の隣りの野菜屋の女将が噂好きで。どっかの生地屋が貴族のあー…。”ナントカ”が入り浸ってるて話だ。店の前でガラの悪いのと大立ち回りしたって話だ。」

「嫌な噂だな。」

心底嫌そうな表情の鍛冶屋。

「ああ、その話は俺も聞いたな、生地屋だったのか?どっかの公爵と整理屋が揉めたと聞いた。”兵の腕の骨を折るのが趣味の公爵”らしい。」

嫌な趣味の貴族だな。

「そういうコトか…。面倒な奴等だな。」

そうか、商業ギルドの連中が整理屋を嗾けたのか?

で、貴族が出てきて震え上がっている。

「王都で外様の貴族が大きな顔が出来るとは思えないが…。その”雑貨と生地の店ビゴーニュ”には気を付けるんだな。」

刀剣販売組合長が忠告する。

「そうだな、糞、拵え屋と砥ぎ屋にも言っておかないと。とばっちりが来そうだ。」

苦悩の顔の鍛冶屋。

組合はソコラ辺の貴族に負ける様な奴等ではない。

しかし一番デカイ商業ギルドの連中が震え上がっている時点で俺達に出来るコトは無さそうだ。

貴族ねえ…。

貴族の先祖が盗賊の頭なんてのは結構ある、力だけ持ってるヤツが盗賊で。

土地と力を持っているから貴族なんだ。

あいつらは狼で俺達、平民は羊だ。

大人しい貴族が多いが偶に先祖返りしてトンでも無いのも出る。

嘗ての”殺戮公”と言う二つ名の貴族が有名だ。

話では人の首を切り落とすのが大好きで。

特に自分で切った敵兵と捕虜の首を並べて観賞するのが趣味だったそうだ。

昔話でしかない。

狼は羊になれない。

羊が犬になる時は有るが、狼にはなれない。

腕の骨を折るのが趣味か、変わった奴等も居るんだな。

まあ、趣味で剣打つ奴も居るんだから仕方ないよ。

何故か、あのデブの学生を思い出した。

アイツがまさか?包丁なんて打たないだろう。

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