68.日常(その3)
寮に帰り制服に着替える。
あの貴族、どこのドイツだ?
ゲームには出てこなかったはずだ。
貴族の物が欲しいなら始めから話を通せ。
学園の図書館に向かう。
未だ早いのか。
図書室には誰も居ない。
受付には司書がうたた寝をしている。
うん、無防備な女ってグッと来るよね!!
起こさないように錬金術入門の本を読む。
うーん、なんだろ、今まで俺がやって来たコト全否定なんだ、この本。
うん、コレは読み飛ばしても、いいかな。
ただし間違いを探すのも真実への道だ。
図書室の扉が開く。
アレックスを先頭にミソッカスとロビン、ロリロリが入ってくる。
さあ、講習会だ。
「オットー二日も学校サボって何してたんだ?」
「アレックス、商売だよ。例の母娘の店を手伝ってきた。たぶんもう大丈夫だ。」
「あの。オットー様。トリーニアにあまりヒドイコトは…。」
トリーニア?だれだ?ああ、娘の名だったな。
「さあ。みんな、準備しろ。」
ロビンがカバンからマグを取り出すがミソッカスは収納から取り出した。
劣化ポーションを取り出し用意する。
当然の様に司書ちゃんが銅のマグを机の上に置いて座っている。
「え?みなさんドコから出したんですか?」
エミリーが気が付いた様子だ。
「収納魔法だよ。オットーからスクロール貰ったんだ。」
フェルッポが答える。
そういえば買ったスクロールも解析しなくては。
「えー。どうやるんですか?」
「まず、異空間に固定座標を置いて収納場所を決めソレに名称タグを付けて管理する、取り出すときは名称タグと固定座標を使い取り出す。」
「わかりません。」
「まあ、コレはスクロールの方が速いな。しかし、図書室で火が出るものは…。」
「禁止です~。」
「まあ、後でだな。」
準備が出来たので劣化ポーションの入った水を廻してもらう。
まあ、準備運動だ。
皆。素早く、魔力消費も軽く出来る。
司書さんは唸っているが…。
「ハイでは、前回の二人組み組んで。」
半分が座って立った方が肩に手を掛ける。
「前回の魔力を通す訓練です。相手に合わせる訓練と停止逆回転訓練してください。終わったら交代。」
時間のバラつきが在ったが大体すぐ終わる。
俺は司書さんの肩の感触と立ち昇る香りを楽しんでいる。
「ではココからが今日の授業内容です。相手の回転を邪魔して下さい。コツは魔力を読んで少し合わせてずらす感覚です。」
「おい、止まらないぞ?」
「あああ、魔法が使えない。」
「なるほど!!コレか!!」
「解かる!!解かるぞ!!」
騒ぎ出すミソッカス共。
交代して皆が出切る様に成るのにはそんなに時間が掛らなかった。
「ハイでは。ロビン列座ったまま。アレックス列、カップを持って一人ずれる。」
「え?」
「ああ、魔力の構成には個人差が有るから全員総当りで練習します。戦場だと初見で相手の構成を見抜いて阻害するコトに成るのでその訓練です。」
「やった!!」
何故か喜ぶアレックス。
「ああ、エミリーとマルカは参加しなくて良いよ。」
「え~。」
何故かしぼむアレックス。
「うまく行かない場合は始めの訓練を思い出しましょう。相手に宣言して相手に合わせる訓練と停止逆回転訓練から始めれば早道です。」
「う~ん人が変わるとこんなに変わるのか?」
「あれ、何で出来ないの?」
「この感覚!!」
「ソコか!!」
「ごめん、始めからやらせてくれ。」
「出来たら交代。終わったらアレックス列、移動ね。」
「せんせ~飽きました~♪。」
司書さんがくたびれた様子だ。う~ん仕方ない魔法を覚えさせるか。
「ハイではこの手に注目して下さい。コレから魔法を使います。良く動きを見てください。」
司書さんの花柄マグカップに水を満たす。
「はい、見えましたね?」
「え、はい、」
「では、マグの中の液体を飲んでお腹の魔力を手のひらに移動させて空のマグに水を満たすコトを想像して下さい。」
ゴクゴク飲み干す司書さん喉が動くのが可愛い。ペロペロしたい。
「むむむむむ~。」
力む司書さん。
いかんな、構成は良いが。魔力の通りが悪い。
少し手伝う。
「できた!!」
「おお、おめでとうございます。魔法が使えましたね?」
ぺちぺち拍手で迎える。
「せんせ~コレで私も魔法使いですか?」
「司書さんは魔力が無いので魔法が使えません。」
「え~!ぶ~。」
「外部から魔力を供給すればできるコトが立証されました。」
「え?じゃあ!!」
「魔力外部供給装置は唯今開発中です、この装置が完成した暁には司書さんも他の魔法使いと引けを取らないでしょう。」
「やった~!!」
「ですので、完成した時にスグに使える様に司書さんには魔力の流れと構成を組む訓練をお願いします。」
「は~い、頑張っちゃいます~。」
「試作ができたら動作テストもお願いしますね?」
「はい!!解かりました!!」
よっしゃ!!被験者ゲット!!
もう、逃がさへんで~!!うへっへっへっ。
もちろん顔には出さずにニコニコしている。
ソレを見つめるマルカの目にはハイライトが無くなっていた。
時間が掛ったが総当りは終わったらしい。
一呼吸で合わせれる様には成った様子だ。
まだ、時間があるな。
「よし、では座っている人は相手の妨害を妨害しましょう。コツは相手が合わせて来るのでフェイントをする事です。ココラ辺は昔の手叩き遊びの要領と同じです。」
向かい合って拍手をする遊びだ。
マスターに合わせて手を叩くがフェイントに引っかからない様にする遊びだ。
もちろんボッチの俺はやったコトが無い。
偶に若いメイド同士がやっているのを見ただけだ。
「え?なにこれ?難しい。」
「ふっそんなのに吊られるか。」
「クッソ!!引っかかった。」
「え~。何で?」
時間が来るまでコレをやった。
まあ、対戦ゲームっぽくなったのでかなり白熱している。
「はい。次はこの訓練の続きです。素早くフェイント、素早く合わせて妨害。」




